軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

0329 ダンジョン攻略……!

聖都マーローマー西ダンジョン。十一層。

「確かに……誰もいませんね」

「ああ……十層までと違い過ぎて、逆に不気味だな」

アモンが言い、ニルスが頷いて答えた。

西ダンジョンの十層までは、洞窟というか、岩のトンネルというか……。

そんな、岩盤むき出しの階層なのであるが、十一層は、大理石が床、天井、壁全てに埋め込まれた、『廊下』のようなダンジョンなのだ。

「確かに、これなら鉱石の採掘はできませんね」

ジークが呟くように言った。

それを聞いて頷くエト。

『ダンジョン地図』によると、西ダンジョンは、十層ごとに、がらりと様相が変わるらしい。

かなり下層ではあるが、青空の広がるダンジョンもあるとか。

「すごいですね!」

昨日の、意気消沈して、とぼとぼと歩いていた様子とは打って変わって、涼は喜色満面、嬉しそうだ。

「これですよ、これ! こういうのを求めていたんですよ!」

とか言っているが、それには誰も答えない。

全員、苦笑しながら見ているだけだ……。

「前方、レッサーウルフ四匹、来ます」

<パッシブソナー>にかかった魔物の接近を涼が告げる。

一行はすでに、ダンジョン探索隊形を組んでいる。

一列目、ニルスを中央に、右にハロルド、左にゴワン。

二列目、エトとジーク。

三列目、アモンと涼。

先頭は、攻撃力があるのはもちろん、敵の初撃に対応できる前衛剣士が望ましい。

あるいは、盾使いか。

そのために、剣士のニルスとハロルド、そして双剣士のゴワンだ。

防御力と耐久力が決して高いとは言えない神官のエトが中央なのは当然として、ジークも中央。

この位置であれば、誰が怪我をしても対処しやすい、というのがその理由だ。

そして最後尾に、剣士としての才能を開花させつつあるアモンが置かれているのは、後方からの攻撃は、初撃への対応が非常に難しいうえに、その対応こそが最も重要だからだ。

空が開けた平原などならともかく、天井のあるダンジョンにおいては、突然直上からの攻撃もあることを考えると、最後尾は最も難しいといえる。

自分だけではなく、二列目の神官たちの頭上もカバーする必要が出てくるからだ……。

涼は、何でも屋なので、一番厄介な最後尾……。

最後尾からでも、かなり前方からやってくる敵を見つけることができるので、その点は全く問題ない。

そして、四匹のレッサーウルフと接敵。

ニルス、ハロルド、ゴワンがそれぞれ、一撃で倒す。

三人の横をすり抜けた一匹は……。

「<アイシクルランス>」

氷の槍を口の中に撃ち込まれて絶命した。

「『レッサー』だからな、魔石を取っても仕方ない。死骸はスライムが処分してくれるらしいから、このまま進むぞ」

ニルスが言うと、皆頷いた。

『レッサー』から取れる魔石は非常に小さく、ほとんど価値がない。

採取する時間の方が惜しい。

そして何よりも、真・便利屋スライム。

「一本道ですけど……十層までよりも、かなり広いですね」

十一層に潜って三時間ほど歩き続けた一行。

アモンが誰とはなしに言う。

「基本的に、潜れば潜るほど広くなっていくらしいよ……」

エトが、『ダンジョン地図』に書いてあった情報で答えた。

さらに三時間後。

「なあ……さすがに、おかしくないか?」

ニルスが誰とはなしに問う。

「この十一層に潜って七時間……休憩を除いて六時間、歩いてるよね」

「一本道なので、迷ったわけではないはずですが」

エトが答え、アモンが補足する。

未だに、十一層が続いている。

大理石の廊下が、ずっと一本道であったため、正規のルートから逸れたというのは、考えにくい。

もちろん、『ダンジョン地図』にも、そんなことは書いていない……。

というか、十一層の『ダンジョン地図』には、地図は書いていない。

ただ一言。

「廊下を歩いていけばいい」とだけ。

他は、出現する魔物の情報くらいだ。

罠の情報も書いていない。書いていないということは、分かっていないか、存在しないかだ。

決して、探索した者が少ない階層というわけではない以上、分かっていないというのは考えにくい。

つまり、十一層には罠は、無い。

罠は無く、一本道。

それなのに、終点にたどり着かない。

「リョウさん、どう思います?」

最後尾、三列目を歩くアモンが、隣を歩く涼に問いかける。

「ん~、たまに、魔法で周囲を探ってるんだけど、前後一キロ以内には、ゴールは無いんだよね。それに、ここ二時間、敵にも会わなくなったでしょ?」

「ああ、そういえば、会ってませんね」

「我々は、時空の狭間に飛ばされてしまったのかもしれません!」

なぜか、言葉に少しだけだが嬉しさが混じっていることに、アモンは気づいていた。

『時空の狭間』とかの、言葉の意味はよく分からないが。

「リョウさんはつまり、ここはもう、十一層じゃないと言ってるんですか?」

二列目のジークが、チラリと後ろを歩く涼を見てから、問うた。

「可能性はあるよね。だけど……強制転移とかさせられた場合って、なんか感じるんでしょ?」

「はい。一瞬の浮遊感を感じました」

涼の問いに、アモンが答えた。

滅びた国『ボードレン』で、恐らく強制転移を経験した……それを思い出しながら答える。

「でも、この十一層に入ってから、一度もそんなの感じてないですよね……」

その瞬間だった。

涼の<パッシブソナー>では、間違いなく、その直前まで、何も、そして誰もいなかったはずなのだ。

だが、一行の目の前に、老人が現れた。

白髪、幅広の赤い帽子、赤いローブ、杖をつき、少し俯いている。

涼は 躊躇(ちゅうちょ) した。

赤い老人とニルスらとの間に、<アイスウォール>を張るべきかどうかを。

だが、 躊躇(ためら) ったのは一瞬。

一瞬後には判断してしまっていた。

この相手には、そんなことをしても無駄だと。

そうであるならば、敵対的行動はぎりぎりまで取らない方がいいと。

「……何者だ?」

剣に手をかけながらも、剣を抜かずにニルスは問う。

横のハロルドとゴワンも、ニルスが剣を抜いていないのを見て、抜くのは止めていた。

「それは、わしのセリフじゃ。おぬしらこそ、何者じゃ」

言葉は静か。

だが、帽子の下から覗く 双眸(そうぼう) は……鋭く、金色に光っている。

(金色の目……? どこかで見た覚えがあるけど……どこだっけ……)

涼は、赤い老人の、金色の目が気になっていた。

問われて、しばらく、誰も答えない。

ニルスが、答えるべきかどうかを判断している。

そして、答えるべきと断を下した。

剣から手を放す。

敵か味方かは不明だが、少なくとも会話できる相手なのは事実だ。

「失礼した。我々は、中央諸国ナイトレイ王国の使節団だ。このダンジョンに潜ったのは、マーリンという方に会い、魔王の居場所を聞くためだ」

ニルスは正直に話した。

これには、涼も驚いたが、すぐに納得した。

この場合、話すのなら、事実を正直に話す方がいい。

嘘をつく意味が、全くないからだ。

「ほぉ~。それは興味深いのぉ」

赤い老人はそれだけ言うと、黙った。

ニルスは、老人が言葉を続けないと判断すると、あえて問いかけた。

「失礼だが、あなたはどなたか?」

赤い老人が、ニヤリと笑った気がした。

「わしか? わしは、このダンジョンの……管理人、になるかの。ちと、興味深い者たちが来たと聞いて、挨拶に出てきたのじゃ。確かに……驚くほど興味深いわい」

そう言うと、その金色の双眸を、ハロルドに向けた。

「『破裂』に呪われておるのじゃな……面倒なものに目をつけられたの」

言われたハロルドは驚く。

少なくとも外見上、『破裂の霊呪』にかかっているのは、誰にも分からない。

時々、ハロルド自身すら、そのことを忘れるほどなのだ。

だが、目の前の老人は当然のように指摘した。

「そして、光の女神の神官が二人……。確かに、中央諸国の者たちらしいが……」

エトとジークを一瞥して、言葉を発する……だが、すぐに押し黙った。

その金色の目は、はっきりと涼に向けられた。

そして、言った。

「問題は、お主じゃ」

間違いようがないほど、涼を見ている。

涼もそれは自覚しているし、他の者たちも理解していた。

だから、涼は自ら名乗った。

「ロンド公爵リョウ・ミハラと申します。魔人殿」