軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

0295 王城の中へ

「あそこだ! あの左の、魔法使いが固まっている辺り。あそこを突破する」

ニルスの指示に頷く『十号室』の二人と、『十一号室』の三人。

神官エトは走りながら左腕をまっすぐ伸ばす。

そして発射。

左腕につけられた連射式弩から、立て続けに三本の矢が飛び、ニルスが指示した辺りに向かって飛ぶ。

「うぐっ」

「痛っ」

「な……」

着弾に一歩遅れて、アモンが飛び込み、続けてニルス。

ほんのわずかに遅れて、十一号室のジーク、ハロルド、ゴワンの順に突っ込む。

騎馬の民たちの防御陣の中でも、魔法使いや神官が多い地点だったのだろう。

ニルスら六人に、全く抵抗できなかった。

突っ込んだ六人は、騎馬の民たちを叩き伏せると、そのままさらに走り出した。

他の地点では、騎馬の民たちがかなり頑強に抵抗しているためだろうか、なかなか突破できず、王城の中に入れていない。

そのため、広場から王城に向かった王国護衛冒険者、帝国護衛部隊の中では、彼ら六人が先頭となった。

もちろん、連合護衛部隊は、誰一人王城にすら向かっていない……。

「どっちだ?」

「まっすぐ」

ニルスの問いに、エトが答える。

彼らが目指すのは、謁見の間。

主に、首席交渉官イグニスの安全確保。

おそらく、使節団団長たるヒュー・マクグラスは大丈夫であろうから。

『シュルツ』王城は、決して大きくない。

とはいえ、それは、中央諸国の王城に比べれば、というだけで、例えばルン辺境伯の領主館に比べれば大きい。

走り続ける六人は、その途中、何回かの敵らしき者たちを叩きのめしながら、走る速度を落とさずに……。

「その先が、謁見の間に続く廊下です」

エトが声を出す。

そして、六人が廊下に入るのとすれ違いで、廊下から出てきた一団があった。

先頭は、片目の潰れた男、次に、十五歳程度の女性を抱えた赤橙色の髪の青年。

ニルスは、その二人が尋常ではない力を持つ者たちであることを感じ取ったが、あえてスルーした。

二人が敵であれ味方であれ、現在の最優先事項は、首席交渉官イグニスの確保だ。

そのため、後に続く五人も、彼らには手を出さずに走り続ける。

廊下を走り終えようとしたところで、謁見の間の扉が開き、数人の人が飛び出してきたのが見えた。

「ギルドマスター! イグニスさん!」

ニルスのよく通る声に、ヒュー・マクグラスとイグニスは顔を上げ、手も上げた。

無事だ、ということであろう。

さらに、彼らの後ろからも人が現れた。

先帝ルパート、ハンス・キルヒホフ伯爵、先王ロベルト・ピルロ、その護衛隊長グロウン。

使節団のトップ六人は、炎上する謁見の間から、なんとか脱出することに成功したのであった。

「『十号室』と『十一号室』か。すまんな。お前らだけってことは、王城の外でも戦闘が?」

「はい。騎馬の民に襲撃され、使節団は、広場にて防御戦を展開中です」

ヒュー・マクグラスの問いに、ニルスが代表して答えた。

「王城入口も彼らに封鎖されているため、王国の護衛冒険者と帝国の護衛隊が戦闘中です」

ニルスのその追加報告に、ヒューと先帝ルパートが頷いた。

「連合の護衛部隊はわしらを放置か……。のう、グロウン、護衛隊長としてどう思う?」

「彼らは我々を……信頼しているのでしょう……。そう考えないと、涙が出そうです」

先王ロベルト・ピルロが問い、護衛隊長グロウンは小さく首を振りながら答えた。

それぞれの国で、それぞれに事情があるのだろう。

「騎馬の民は、『シュルツ』の民衆には手を出さず、いくつかの政府施設を襲撃したようです。さらに、広場にいた我々使節団にも攻撃を加えました。おそらく、現在では防御戦から、膠着状態へと移行しているかと思いますが」

ニルスが、三人の団長に向けて報告する。

「まずは、広場の本隊と合流しましょう」

ヒューがルパートとロベルト・ピルロに向かって言うと、二人は頷いた。

この場合、それ以外の方策はないのだから。

炎上する王城から撤退する使節団十二人より、一足先に王城入口に到達した者たちがいた。

片目の潰れた男ジュッダと、動かない妹ソイを抱えた赤橙色の髪の青年アーン王だ。

「陛下! ジュッダ族長!」

「ご無事で!」

「ソイ様は……」

三人を確認して喜ぶ騎馬の民。

だが、アーン王が抱えるソイを見て、絶句する。

「即死は免れた。だが、まだ危ない。ボルスたちは?」

アーン王は、腹心の部下たちの所在を問う。

「ボルス殿は、広場にて中央諸国の使節団と対峙しておられます」

「よし、ならば予定通り撤収だ。シュルツの現王を含め、有力な王族は葬った。中央諸国の連中がいなくなってから、堂々入城してやる」

アーン王のその言葉を伝えるために、伝令が広場へと走った。

そして、アーン王たちも、急いで王城を出た。

だが一度だけ、アーン王は王城の奥を睨みつけ、そして呟いた。

「先帝ルパート……ソイを傷つけたこと、決して許さぬ。必ず、その代価、支払ってもらうぞ」

騎馬の民は撤収し、王城は焼け落ちた。

国王をはじめ、側近の多くが死亡したため、中央諸国使節団は交渉を断念し、『シュルツ』を出国することになった。

騎馬の民を率いたアーン王が、宣言通り『シュルツ』に入城したのは、使節団が出発して一週間後であった。

そして、アーン王が新たな『シュルツ』の王として即位を宣言し、回廊諸国は新たな局面へと転換を遂げていくのであるが……それはまた、後のお話。