作品タイトル不明
0210 <<幕間>>
「う~ん、やっぱりアベルさんって、カッコいいよね~」
離れた場所から、唯一のA級冒険者を眺める女性剣士が一人。
「イモージェン、あなたは子爵家を継ぐんだから……いくらA級冒険者であっても、貴族じゃないと結婚できないでしょう?」
そんな親友に、現実的な提言をする女性魔法使い。
「ミュー、別に結婚がどうとかじゃないわよ。ちょっとした憧れよ、あ・こ・が・れ」
そう言いながら、イモージェンの頬は少し赤くなっている。
「お? 男たちの物色かい?」
「ちょっ、アビゲイル、声が大きい!」
二人が、それなりに小さな声でやり取りしているところにやって来たのは、同じC級パーティー『ワルキューレ』の斥候アビゲイルであった。
その後ろから、槍士カミラと神官スカーレットも来ている。
焦ったイモージェンの声も、けっこうな大きさになっており、カミラとスカーレットも、三人の輪に加わった。
「いったい何を……男性冒険者か。アビゲイルだけでなく、イモージェンもか……あまり軽すぎるのはどうかと……」
「いや、カミラ、私はただの憧れ……」
身長一八〇センチのモデル体型長身美人の槍士カミラが、小さく首を振りながら苦言を呈し、イモージェンがあらぬ嫌疑に対して反論する。
「男性の外見であーだこーだいうのも、まあ分からないではないが……やはり、男は生活力だと思うぞ。安定した収入の方が……」
「そりゃあ、カミラは男爵家の三女さんだからな」
「うちは裕福ではないからな。実家からの支援は全く期待できないという事情だ」
平民出身である斥候アビゲイルの言葉に、真面目に答える男爵家三女槍士カミラ。
あまり話がかみ合っていない気もするが、よくあることである。
「いや、生活力とか……私はただの憧れの話を……」
そんな、イモージェンの呟きは、誰にも届かない。
「そうなると、カミラはやっぱり、王国騎士様とかを狙っているのか」
「いや、狙うとか……そういう目で男性を見たことはない」
斥候アビゲイルの言葉に、気色ばって反論する槍士カミラ。
「でも、騎士様だったら、ザック・クーラーさんより……」
「……ま、まあ、スコッティー・コブック殿かな」
アビゲイルが誘導し、カミラが俯きながら答える。
その答えを聞いて、アビゲイルは何度も頷いた。
ザックよりもスコッティーの方が、スマートでかっこいいのは確かである。
憐れザック……。
そんな会話を聞きながら、いつも通りニコニコと微笑んでいる神官スカーレット。
彼女の周りは、どんな時でも、ほんわかとした空気が流れている。
「で、スカーレットはどんなタイプがいいの?」
そんなスカーレットの方を向いて、アビゲイルは問う。
少しだけ首を傾げて考えた後、スカーレットは答えた。
「私は、魔法使いのリョウさんね」
「そっちか~」
四人全員が異口同音に答えた。
なぜか、リョウは、使節団における『かわいい系』男子の筆頭なのであった。