軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【82】セイン様がめちゃくちゃ楽しそうです

「カワグチ殿。いよいよだな」

俺は今日、セインさんとペロと一緒にセイワ共和国に来ている。

後ろにはグレインさんをはじめ、ネックレスを身につけた騎士団のメンバーも護衛として立っていた。

無事、鉄道の各駅周辺にコンビニと事務所を建て終わった頃のことだった。

セインさんから″セイワ共和国の王族と会談することになったから同行してほしい″と連絡があったのだ。

「そうですね……なんかこの国の雰囲気、僕が住んでいた異世界のアジアっていう地域にすごい似てます。それにしても、本当に大丈夫なんでしょうか?」

ラングスチアも少しオリエンタルな雰囲気だったがこの王城はもろ中国っぽい。

ナーミャは食文化こそスパイスが効いたものが多かったが、完全に街並みはヨーロッパだったのだが。

「ああ、大丈夫。実は僕の部下の優秀な魔導士がね? こっそりセイワ共和国の王族の洗脳を解いてくれたみたいで」

その言葉に俺は驚いて目を見開いた。

「えっ! すごいじゃないですか!! その人一体どうやったんですか?」

すると、セインさんは少し黙り込んだ後、笑顔で答えた。

「……それは本人の名誉のために内緒にしておくよ」

一体その魔導士の人は任務を遂行するためにどんな無茶をしたのだろうか。

少し聞くのが怖くなってしまう。

「そうですか。じゃあ僕達は今日はどんなことをするんですか?」

セインさんはニヤリと笑った。

「僕達もセイワ共和国の王族も。カミシロには長い間辛酸を舐めさせられたからね。まあ、ヴァラに嫁いだ王妃はただ欲深かっただけみたいだけど。……今日はカミシロを確実に捕らえるために敢えてセイワ共和国の王族達に洗脳にまだかかっているフリをしてもらっている。楽しいショーを開催するよ」

その顔に俺の背筋にぞくりと寒気が走った。

あ〜……。これは、怒ってる時の顔だ。

「一体何をする気なんじゃ?」

俺の隣でボソリとペロがつぶやいた。だが俺はカミシロさんが今日で終わるだろうな……と何となく感じ取ってしまった。

「セイン様、そんな作戦を一緒に決行できるなんて。セイワ共和国の人達といつの間に仲良くなったんですか?」

俺に尋ねられて、セインさんは何故か少し悪い顔になった後、ニコニコと笑った。

「うん、洗脳が解けてから、セイワ共和国の王太子と色々話したんだ。それに僕、今日は彼が大喜びする 貢物(みつぎもの) を用意したからね。この会談が終わったら僕達は友好国になれると確信しているよ」

貢物? 何をあげるんだろう?

俺はそれが何なのかすごく気になった。だが何となくつっこむことが出来なかった。

◇◇

「これはこれは! セイン様! ようこそおいでになられました。まさか我が国にカワグチさんを連れてきてくれるとは! ようやく引き渡してくれる気になったのですね?」

会談予定の広間についた。

最初から煽る気満々でカミシロさんは俺達を出迎えた。

ちなみに、その後ろには、セイワ共和国の王太子と国王陛下がボ〜ッとした顔の演技をしながら静かに佇んでいる。

あれ、演技なんだよな……?

結構その顔がツボに入って、俺は笑いそうになる。

「うん。まあ、話し合い次第だけどね。でもカワグチ殿がいると、君もこちらの条件をきちんと聞く気が湧くだろう?」

その言葉にカミシロさんは笑顔で頷いた。

「それはもちろん! それで? カワグチさんと引き換えに何を望んでいるんですか」

ニヤリと笑うカミシロさんにセインさんが答える。

「うーん、そうだねぇ。……それはそうと、ナーミャと我が国合同の鉄道事業の測量隊が消えたんだけど、カミシロさんが 唆(そそのか) してたよね?」

カミシロさんの動きが一瞬止まる。

「……仰っている意味がわかりませんな。それに今回の会談とそれに何の関係が?」

するとセインさんが口の端を上げた。

「関係大ありだよ。君、ナーミャのホテルの防犯カメラに測量隊の一人と接触するのが映ってたよ? 我が国とナーミャが力を入れている鉄道事業を邪魔しようとしていただろ。ねえ、そんな相手に本当にカワグチ殿を引き渡すとでも思ってる? 話を聞いてもらうために連れてきただけで本当は引き渡す気なんてそもそも無いね」

その言葉にカミシロさんがわなわなと震え出した。

「な、何だと……さっきから好き勝手なことをを言いやがって!! おい! お前ら、何をしている! ラングスチアの者達を捕まえろ!」

シーンとその場が鎮まり返る。

ペロだけが少し痒かったのかお腹をぽりぽり掻いている。

「何をしている! 早くしろ!!!」

すると後ろのセイワ共和国の兵士達が一斉に動き出し、カミシロさんは満足げに笑った。

「はっはっは! これでついにラングスチアおしまいだ……?!」

ガシッ!!!

だが兵士達は俺達のところに来ると見せかけて、カミシロさんを拘束した。

「はっ?! お前ら、なぜこいつらではなく私を捕まえる!!」

その間にも彼らはカミシロさんを身動き出来ないように縄で縛り付けていく。

すると、俺の後ろとカミシロさんの後ろから高笑いが聞こえた。

「っく! ははは! 残念だったなカミシロよ!」

そう言ったのはセイワ共和国の国王陛下だ。

「貴様には長年に渡って酷い目に遭わされた。よくもこの国を乗っ取り、好き勝手なことをやってくれたな!!」

王太子殿下もカミシロさんを睨みつける。

「ヒッ! そ!そんな! 何故洗脳が解けている!?」

彼は目を血走らせながら暴れている。だが兵士達に抑えつけられてびくともしない。

すると、セインさんがとても嬉しそうな顔で目の前に出ていく。

「僕がカワグチ殿を手放すわけないだろ。勝手にこっちの方でセイワ共和国の洗脳を解かせてもらったよ。ば〜か! あ、どうぞ牢屋に連れてっていいよ〜」

セインさんは満足したのかにっこりと笑った。

「ちゃんと歩け!」

「覚悟しとけよ!」

怒鳴られながらカミシロさんは牢屋に連れて行かれてしまった。

「……セイン王太子。本当にありがとうございました」

カミシロさんがいなくなった広間でセイワ共和国の王族達が何と深々とセインさんに頭を下げた。

「ううん。全然大丈夫だよ。それよりセイワ共和国の王太子殿下に友好の証にプレゼントを用意したんだ。お〜い! 連れてきて!」

そう言ってセインさんがにこやかに呼びかけた時だった。

扉の向こうから水色のマーメイドドレスを着こなした、可愛らしい感じの金髪の女性が現れた。

「セ、セイン様〜? わ、私のお見合いって本当にここでいいんですか……?」

おずおずと女性が広間に入ってくる。

「マリア殿!」

するとセイワ共和国の王太子が喜色満面の顔で立ち上がった。

「あ、いいのいいの。ヴェルナー、ちょっとこっちにきて」

セイン様にそう言われて彼女はキョトンとした顔でこちらに向かってきた。

「何ですか……?」

「それじゃ、紹介するよ! セイワ共和国の王太子殿下だ! 君、イケメン貴族を紹介して欲しいって言ってたよね? だったら彼でいいじゃないか。彼は君に気を持っているようだし」

その言葉にヴェルナーさんと呼ばれた女性はピシッと固まった。

「……えっ、えっ」

するとセイワ共和国の王太子殿下は彼女の前で膝をついた。

「初めて会ったときに君に一目惚れした。この国を救ってくれてありがとう。これからは君を王太子妃として精一杯愛すよ」

後ろでセイワ共和国の国王陛下も満足そうに頷いている。

「おお、国を救ってくれた其方が王太子妃になってくれればと、実はずっと祈っておった!!」

「え……!!」

これ、ヴェルナーさん本人は置き去りになっているけれど大丈夫なんだろうか?

「ということで頼んだよ、ヴェルナー。君がラングスチアとセイワ共和国の友好の架け橋だ」

セインさんの言葉にヴェルナーさんは絶叫した。

「はああああああああ?! セイン様の鬼っ!」

すると、セイワ共和国の王太子がイケメンな顔をアンニュイに歪ませて、ヴェルナーさんを引き寄せた。

「君は僕じゃ嫌かい?」

そう言われたあと、ヴェルナーさんは少し黙り込んだ後、顔を赤くしてボソリと呟いた。

「……そんなこと言ってませんけど。その、イケメンですし」

あ、そこは大丈夫なんだ。

その光景を見て、周りの人達はニヤニヤしている。

こうしてようやくセイワ共和国の問題が片付いたのだった。