作品タイトル不明
【25】また、人が増えそうです。
「あ、やべ。もうこんな時間じゃん。──すんません、フィオナさん。タロウに夕飯やってきます。フィオナさん、良かったらスパでも行ってきたらどうですか? 俺の部屋が607でフィオナさんが611でしたっけ」
「あ、そうですわね、わかりましたわ」
俺は、一旦マンション前のタロウの所に戻ることにした。
一階の食料品売り場でタロウの好きそうな肉を沢山買っていく。
うーん……。
タロウは可愛いし、懐いてくれてて嬉しいけど、人が増えたらドラゴンが住むようなところを用意したり、世話する人も雇わないとまずいかもな。
流石にずっと俺だけで面倒見るのは限界があるし。
そんな事を思いながらマンションに戻ると、グレイスさんが慌てて出てきた。
「カワグチ様っ!! 先程地響きがしたと思ったらあの大きな建物ができてたんですけど!! あれは一体なんですか?!」
血相を変えてクワッと迫ってきた。
「あー、すんません。グレインさんと連絡取ったんですけどペロモールが本格オープンする前に、一回接客経験してもらった方がいいって伝えたんですけど。もしかしたら一週間後300人くらいお客さんを連れてきてくれるかもしれないって言うので。一応その人達が泊まれるようにホテルを作っといたんです」
彼は少し固まった後ふぅーっと息を吐いた。
「……確かにそれは作った方がよさそうですね。まぁでも、あまり人目のあるとかころではやらないように気をつけて下さいよ?」
「あー……はい」
俺が返事をすると、丁度魔道具に連絡がきた。
『やあ、カワグチ殿。元気かい?』
「あ、セイン様」
俺は目を丸くした。
すると、グレイス様が後ろでワナワナと震えている。
「せ、セイン様から直接連絡がきたんですか?」
『あ、グレイス・ベネットもいるの? 丁度よかった。グレインじゃなくてもう僕が直接話しちゃった方がいいと思ってさ。まず、プレオープンの件。とりあえず連れて行けるよ。でも、文官や騎士の行く日が一週間後だから10日後ってことでよろしく。で、14日後が本オープンだ』
俺とグレイスさんは頷き合う。
「わかりました」
ていうか、グレイスさんの苗字今はじめて知ったわ。ベネットって言うんだな。
ペロは暇なのかそこら辺にある草を引きちぎって遊んでいる。
『でさ、違う村人達がくるのが三日後にするよ。村や家ごと引っ越せるって言ったらすぐ了承もらえたんだ。あと、住民が増えるから役場をきちんと構えた方がいいと思うんだ』
「はい。何人来るんですか?」
まあ、次からはマンション用意しなくていいし村人に関しては準備不要でいいな。
迎えに行く時だけ同行させてもらって家とか墓とか回収すればいいか。
あとで役場だけ建てとくか。
俺は心の中でやることだけメモする。
『300人くらいかな』
「了解です。じゃあ、とりあえずその村人達にプレオープンまでにお客さんやって貰えばいいですね。いきなり貴族がお客さんなのも荷が重いと思いますし。プレオープンの時来て頂く貴族はとりあえず300人くらいって伝えてたんですがそれでいいですか? 不手際があったら事情をちゃんと理解してくれるような方だといいんですが」
正直従業員と何かトラブルがあったらまずいからな。
『大丈夫だよー。そこら辺は考えてるから』
「わかりました。あ、そういえばプレオープンで貴族が泊まれる宿、作っときましたよ」
セインさんが息を呑む。
『……君、宿も作れるんだ。本当にすごいね』
「はい、さっきパンフレットセイン様に送っときました。じゃあやる事の確認です。役場を建てておく。文官と騎士の住む場所を作る。村人達を受け入れる。それでいいですか?」
後ろではグレイスさんが一生懸命メモっている。
『うん、それでおっけー。グレイスもそれでいいよね?』
グレイスさんはハッとした顔をした。
「はい、勿論です」
「あ、それと村人迎えに行くタイミングで僕に知らせて下さい。タロウと家とか設備回収しにいきます」
セインさんは快諾してくれた。
『わかったよー。そしたら三日後、よろしく頼むね。早朝になると思う』
「わかりました」
俺は魔道具を切ると慌ててタロウに中をやりにいく準備をする。
「終わったかの?」
ペロが顔を草だらけにして立ち上がった。
あ! ドラゴンの世話のこと忘れた!
「すみません、グレイスさん、あとはお願いします。
あと、今言い忘れちゃったんですけどドラゴンの世話できる人も派遣して欲しいって王宮に伝えといてください」
「わかりました」
俺はタロウに餌をやると、ペロと一緒にホテルに戻った。
◇◇
ふー、なんか疲れたな。
とりあえず明日役場をとマンションたてっか。
部屋に着いて、ゆっくりとお茶を飲んでいると、ドアがノックされた。
すると、すっぴんのフィオナさんが唐揚げちゃんTシャツで立っていた。
「スパ、めちゃくちゃよかったですわぁあ!!」
「おー。良かったっすね。じゃあ夕飯食べにいきますか。何がいいですか?」
俺の言葉にキラキラした顔でフィオナさんが頷く。
「パスタですわ!!」
俺達は二階のテナントに入っているチェーンのイタリアンに入った。
「何食べます?」
「そうですわね。この生ハムとこの卵ののったクリームパスタと、ワインとガトーショコラとコーンスープとエビののったサラダと、このグリルしたチキンにしますわ!」
俺は結局ペペロンチーノとワインとキャロットラペ、ペロはハンバーグのセットを注文した。
「カワグチ様がきてくれるなんて嬉しいです。ワインちょっと沢山注いじゃいます」
店員さんにそう言われて顔を上げると、よく見るとハンナさんだった。
「ハンナさん! どうですか? ここ住み心地は」
「ええ。凄くいいわ! あの子のお墓にも行きやすくなりましたし、職場も凄くいい環境ですし。レシピがすごい細かく載ってて”まにゅある”っていう本の指示通りに試行錯誤してるんですけど。自分達が作ったものではあるんですが、異世界の料理は素晴らしいわね。──まあ、今は暇すぎますけど」
ハンナさんが苦笑した。
「そうですか。ちゃんと異世界で食べた味になってます! 三日後にまた違う村の人達が避難してくるみたいなんで、お客さんが増えると思いますよ。また文官さん達から告知があると思いますけど」
「まあ、そうなの。楽しみだわ。楽しんで行って下さいね」
ハンナさんはペコリと会釈してから料理を取りに戻った。
うーん……。
客がいなくてスカスカだから回ってるけど。大丈夫かな?
新しい村人達は三日後に引っ越してくるから、ここに来るとしたら四日後か。
一応様子見にこよう。
目の前ではフィオナさんが掃除機のようにどんどん食べ物を吸い込んでいく。
「隣国の女性って結構食べますよね。ハーマンさんも凄く食べてましたし」
フィオナさんがうんうん頷く。
「いっぱい食べて、いっぱい動くのですわ!」
「……そうですか」
俺は久しぶりのチェーン店の味に舌鼓を打った。
夕飯の後はフィオナさんと解散して俺とペロでスパに行った。なかなか広い大浴場で湯船が三つと、露天風呂、それにジャグジーがある。
「おー、めっちゃいいじゃん」
もう少しお金が入ってきたらこの風呂に頻繁に入りに来たいなぁ。
そんな事を思いながらペロをわしゃわしゃと洗う。
「ふぅー。極楽極楽じゃ」
毛がぺたんとしているペロがツボにハマって思わず吹き出しそうになる。
俺はペロと一緒に全部の湯船を満喫すると、自分の髪とペロの毛を乾かす。
脱衣所を出ると、目の前の休憩スペースには無料で食べれるアイスと飲み物が冷やしてあったので頂く。
うん、うまい。
マッサージ機が5台あったのでペロと一緒に使った。
「おおお、これは、気持ち良いのお」
「最高だな」
そんな事を言いながら部屋に戻り、ぐっすりと眠った。