軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【19】村ごと引っ越しました。

……そっか。

墓って先祖とかじゃなくて自分の子供の墓だったのか。

そりゃ離れたくないわけだ。

俺は黙り込んでしまう。

「命の方が大事だからって皆この村を出ていってしまったわ。でも、村長のザイルさんだって本当はここを離れたくなかったはずなのよ。村人たちの命を優先したけどね。──あの家には亡くなった奥様との思い出が詰まっていた筈だから。確かに、素晴らしい施設かもしれないけれど、そんなに簡単に済む話じゃないのよ。農家をやっていたミラノさんだって、これからどうしようって悩んでいたし……」

俺はチラッと窓から外を眺める。

外には青々としたジャガイモの花が咲いているのが見えた。

そうだよなあ。さすがに地元がなくなっちゃうのは寂しいよな。

……どうすっかな。

俺が頭を悩ませていると、目の前にタブレット画面が現れた。

『家屋、および畑や墓をアイテムボックスに入れて移動させますか?』

そのメッセージに俺は思わず目を見開く。

「──っな!!」

「──なんですか? その画面は……? 何があったんですか?」

三人が訝しげな顔で俺を見てくる。

「…あの。──僕、もしかしたら解決できるかもしれません。もし、もしですよ? 仮に家やお墓などを移動させられたら引っ越しますか?」

◇◇

「──おおっ! カミルっ! ハンナっ! サム!!

心配しておったんじゃ!」

俺が三人を連れて帰ると文官達驚いた顔をし、村長のザイルさんが涙ぐんだ。

丁度、説明会をしようと皆さんが集まっていたところらしい。

「ど、どうして?! あんなに村を離れるのを嫌がっていたのに……!!」

他の村人の達が驚いた顔をした。

「──皆さん。実は僕のスキルで家屋を動かせる事がわかりまして。今日はマンションに泊まって頂くとして、明日から元の家に住みたい方はいますか?」

文官達がそれを聞いて動揺している。

「っな!!」

すると、半信半疑という顔で、半分くらいの住人達が手を上げた。

その殆どが大人数のファミリーだった。

あ、丁度一棟空くかも。ま、いっか。

どうせ家賃払うの俺だったし。空いたマンションは文官達に住んでもらうか。

「了解でーす。あ、説明会続けちゃって下さい」

俺はキョロキョロすると、ショッピングモールの近くまで歩いて行く。

老人も多いし、買い物しやすい方がいいよな。

とはいえ、日当たりが悪いのもよくないし。

すると、タブレット画面にメッセージが出てきた、

『地形を最適化しますか? オートモードを実行して必要なものを作ります。スキルポイントを20消費します』

俺は恐る恐るYESを選択すると、地面が光り輝いた。

ゴオオオオオオオオオ!!!

その瞬間、なんと土が盛り上がって同心円状に3段になった。

さらに、オートモードで勝手に一番上の土地から地上にかけて、勝手に階段が作られ、一番上の土地に四角いコンクリートのおしゃれな建物が出来ている。

「あれはなんじゃ?!」

俺は慌ててペロと一緒に階段を駆け上る。

結構な高さだったので、運動不足の俺にはなかなかきつかった。

ようやく最上段の土地に上がって、建物の中に入ると、そこにはエレベーターがあった。

おそるおそる二階を押す。

そして、照明のついた通路に着いたので歩いていく。

ガラス張りのドアを開けると、二段目の土地についた。

俺たちはさらにエレベーターに戻って1階を押す。そして先程と同じように通路を出ると地上に着いた。

最後にまたエレベーターに戻りB1と押す。

「……なんだここ?」

B1──地下はだだっ広い大きな空間になっていた。

壁にはテナント募集中と張り紙がある。真ん中にエスカレーターがあったので登ってみると──。

「っ、ペロモールだ!!」

なんとエレベーターはペロモールに直通していた。

「──これはとても便利じゃのう」

ペロが感動して尻尾をブンブン振っている。

「確かにこれなら一軒家を建てても、日当たりが悪くならないし、すごく暮らしやすいな」

俺達はもう一度一番上の土地に戻ると墓や家を次々に出していく。

なんか、街づくりゲームみたいで楽しいなっ!!

俺はだんだんワクワクしてきてしまった。

そして、エレベーターはどうやら「公共物生成」のスキルで作られたようだったので自分でも触ってみる。

すると、これはどうやら公園や広場や柵など、好きな公共物を外に作る能力のようだ。

公園を作って村にあったシンボルツリー的な大きな木を植えたり、街路樹や街灯を置いたり、石畳の噴水広場や生垣、ベンチまで作ってしまった。

「おおっ! めっちゃお洒落になった! そうだっ!この住宅地の名前はラミアタウンにしようっ!! 故郷が残ってるみたいできっと嬉しくなるだろうし!!」

俺は達成感でいっぱいになった。

うーん、どうせならボロボロの家とかもなおしてあげられないかな?

すると、考えを読んだかのように、またタブレットにメッセージ出てきた。

『本日のスキルポイントを全て消費して、家屋を異世界風に改造しますか?』

と表示されたのでYESを選択する。

すると──。

パアアアッ!!!

空まで白い光が突き抜けた。

「うわっ!?」

「どうしたんじゃっ?!」

やがてその光はキラキラと同心円状の土地に美しく降り注いだ。

古びた家々がキラキラと輝き家が新築になり、外壁が強固なものに変化していく。

「おお!! 流れ星みたいだ」

「……綺麗じゃのう」

その美しい光景を俺はペロと暫く呆然と見ていた。

そうだ! 中がどうなってるか確認しないと!

「ペロッ! 中を見てみようっ!」

「そうじゃな」

恐る恐る先ほどお邪魔したカミルさん達の家を覗いてみる。

すると、家具もグレードアップして、水道も日本のものが付いていた。

そして、先ほど家に入った時にはなかった家電も置いてあった。

「……おー、めっちゃいいじゃんっ!!」

ていうか、これはめっちゃ楽しいわ。

リアル街づくりゲームじゃん!! 働くのは嫌だけど、これならやりたい。

明日から暫くマンションの周りに色々作って遊ぼうっと。もっと早く使えばよかった。

俺が興奮しているとペロもふんふん鼻息を荒くしながら叫んだ。

「本当にここは随分良い場所になったのう!!明日はあの噴水広場のベンチでアイスクリームを食べたいのう」

俺とペロがテンション高めにそんな話をしながらマンション前に戻ると──。

ざざっと恐れをなしたかのように人垣が割れた。

「か、神の力を見てしまった……!」

「おおお、神よ!!!」

「奇跡だ」

俺達は畏怖を抱いたような表情の村人達に拝まれてしまった。

え、え、遊んでただけなんですけど。

「あ、グレイスさーん! 今戻りました! 村人達の家、設置してきましたよー。説明会はもう終わりましたか?」

俺が手を振りながら報告すると、グレイスさんがわなわな震えていた。

「か、カワグチさん……」

「……はい?」

俺が首を傾げると肩をガシッと掴まれた。

「な、なんなんですかー!! 今の能力は!! ここから見えてましたよっ!」

「え? 家を設置してきただけっすけど。」

俺が目を丸くすると彼がブンブン首を振る。

「じゃあ、あの!! 空までゴオオオッて光の柱ができたり土地が盛り上がったりしたのは何だったんですか?!」

「あー、あれ。いや、日当たりとか考えると絶対あの方が皆快適に住めるだろうなって思いまして」

すると彼が凄い剣幕で迫ってくる。

「いやいやいや! 私は貴方にあんな力があるなんて、全く聞いてませんよ?!」

俺は暫く考え込んだ後、笑顔を作る。

「いやー、俺もさっきまで実はこんな事が出来るって知らなかったんですけどね?──なんか、やってみたら、出来ちゃいました」

その言葉にグレイスさんがふらり、と倒れてしまった。

「ぐ、グレイスさん?! グレイスさんっ!? しっかりして下さいー!!!」

俺の叫びが、新しくなった町のだだっ広い空にこだましていった。

その様子を村人達がザワザワしながら見守っていた。