軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

710 東への旅支度

領地のお披露目も終わり……みんなとの新しい生活も無事に始まった。

となると、続いては新婚旅行という話になってくる。ドラフデニア王国に観光に行くことは決定しているが、留守の間のフォレスタニアの体制を色々と考えなければならない。

城と街の防衛戦力はゴーレム達がいるからとりあえず戦力としての人手は足りている。

旅先で何かあっても対応できるよう、シーカーやハイダー達を地上の屋敷や、フォレスタニアの居城に置いたり、屋敷と居城、シリウス号の間で双方向の通信ができるように整えてやれば留守の間の防犯体制も出来上がりだ。

「では、旦那様がお留守の間のことに関してはお任せください」

と、セシリア。フォレスタニアの居城――迎賓館近くの中庭で、のんびりと留守中の事を打ち合わせ中である。

「ん。何か急な用事なようなら、新婚旅行中だからとか遠慮せず取り次いでもらって構わないよ」

「畏まりました」

通信機を持っている面々に関しては文字でやり取りもできるし、どうしても俺に急用となれば、シーカーやハイダーの映像を通して顔を合わせて、留守中のやり取りも可能というわけだ。

となると、その用件の緊急度の見極めと屋敷や迎賓館等の掃除や庭園の管理等々が使用人達の仕事、ということになる。

「んー。仕事が増えちゃって申し訳ないけど」

「勤務表を見る限りでは……交代して休日を作る余裕もあります。どうか、私どものことはそこまでお気遣いなく」

「そう? 困ったことがあったら遠慮なく言ってくれて構わないんだけどね」

迷宮村の住人達は……タームウィルズの家と同様、フォレスタニアの城でも使用人の仕事を快く引き受けてくれた。

元々村1つ分の住人達であるため、屋敷1つの使用人としては些か数が多かった。当番を交代しつつタームウィルズの屋敷の使用人になったり、迷宮村に戻ったりしていたわけだが……そこに居城勤務のシフトが1つ増える形になる。

とりあえず実働メンバーの勤務表を組んでみたところ、人員の余裕もあってそこまで忙しくはならない、という印象だ。

元々迷宮村外部に出るための訓練を兼ねていたところがあるので、仕事も緩い感じだったしな。とは言えそのまま雇うような形で新しい体制になった。だからその辺で何か問題や不満があるなら、こちらとしてもしっかり把握しておきたい。

「新しい体制で気付いたことがあれば報告します。しかし旦那様は指針や指示が明確ですし、感情的な処置や処罰等がありません。これは使用人達にしてみると安心して働ける環境と私達は理解しておりますよ」

そう言ってセシリアは笑みを浮かべる。んー。そういうものだろうか。まあ、不満が無いならそれで良い、という事にしておこう。

「後は……防衛戦力にもう少し余裕を持たせたいところかな」

ゴーレムとガーゴイルだけだと不安がある。使用人のみんなも戦えるとは言ってもな。

「ラヴィーネによると、ベリウスが留守の間の防衛を買って出たいと考えてるようです」

と、アシュレイが言った。

「んー。ラヴィーネ経由でね」

視線を向けると中庭に鎮座するラヴィーネとベリウスが並んでこちらを見ながら、ゆっくりと尻尾を振っていた。

狼と犬という種族の若干の違いはあるもの、そこそこの意思疎通が可能なようで。ラヴィーネからアシュレイを中継して、アルファやベリウスの気持ちを、ニュアンス程度で聞くことも可能だ。

もっとも、ベリウスもアルファも、表情や尻尾の動きで返答できるので必ずしも通訳が必要というわけではないが。

「ベリウスは元々、どこかを守るというのが好きなようね」

「何となく、旅先での姫様や奥様方の安全は頼んだ、と言われている気がします」

クラウディアが言うと、ベリウスから視線を向けられたヘルヴォルテもそう言った。

ああ。ケルベロスだからな。留守番をしている、というのは性に合っているのかも知れない。

「それじゃあ……外部からの侵入者に警戒をしていてもらえるかな。後、使用人のみんなもしっかり守ってやって欲しい」

そう言うと、ベリウスは俺を見たままにやりと笑って首を縦に振った。

ゴーレムとガーゴイル、改造ティアーズ。それにベリウスか。まあ……結構な戦力だと思う。城の構造を合わせて考えれば、防衛力はかなりのものだ。緊急時には通信機やシーカー達によって旅行先だろうがすぐに察知できるし、転移魔法で帰ってくることもできるから、留守中の居城の戦力については一先ず問題あるまい。

「では、地上の屋敷は我が守るとしよう」

「僕達も、今回は残らせて貰います」

と、マクスウェルとシオン達が言った。

「留守番で構わないの?」

尋ねると、4人は頷く。

「僕達としては……フォルセト様がハルバロニスから戻ってくるまで、タームウィルズで大人しくしていた方が安心してもらえるかなと。その……新婚旅行ですし」

「うむ。新婚旅行は水入らずと聞いている。境界公として護衛がいないのは問題なのだろうが、ヘルヴォルテ殿と使い魔達、それにリンドブルムがいればその名目も保てよう」

なるほど……。みんな考えあっての事か。

マクスウェルもシオン達も、信頼の置ける面々だし、とりあえず留守中の事は心配いらない、と言ってくれているわけだ。

ヴィンクルは、なるべく一緒に過ごして信頼関係を構築していくという理由もあるので、旅行に同行する形になる。ラスノーテは俺達が旅先から戻るまで、ペルナスとインヴェルと一緒に親子の時間を過ごす。シャルロッテも……七家の長老が暫くタームウィルズに滞在しているので、今は親子水入らずである。

ティエーラに関しては……まあ、ルーンガルドならどこでも顕現できるからな。高位精霊もティエーラのいるところなら同様に顕現可能だったりするし。

「分かった。それじゃあ、ありがたく新婚旅行に向かわせてもらうよ」

「うん! 気をつけてね!」

「……お土産話にも、期待してるわ……」

と、マルセスカとシグリッタも笑みを浮かべるのであった。

まあ、まずはドラフデニアに向かう前に母さんのところに立ち寄るわけだが。その際、父さんとダリルも一緒にシリウス号で領地まで送っていく予定だ。

では、話も纏まったところで、早速旅行の準備を進めることにしよう。

シリウス号を動かす最低限の人員は、アルファと操船する人員1名で足りるようにできている。

討魔騎士団も解散しているので砲手もいないし、積み込む食料や水は俺達やリンドブルム、使い魔達の分だけで良いというわけだ。

そんなわけで東への出発当日。

搬入した物資を確認していると、造船所に父さんとダリルがやってきた。墓守の2人……ハロルドとシンシア、それにシルン伯爵領からやって来ているケンネルとミシェルにオルトナも一緒だ。マルコムは……まだ中央で報告等々の仕事があるとのことで、今回は同行しないが。

「おはようございます、境界公」

父さん達が挨拶をしてくる。

「おはようございます。もう準備は整っておりますので、最終確認が済み次第、出発ができますよ。どうぞ艦橋に上がって待っていてください」

と言って、父さん達を艦橋に通す。

「ん。確認してきた」

「積み込まれた物資は……しっかり揃っていましたよ」

「いつでも出発できそうね」

そこにシーラとグレイス、それからローズマリーが戻ってくる。

「ありがとう。それじゃあ、そろそろ出発かな」

「ドラフデニア……楽しみね」

ステファニアは中々上機嫌な様子である。後ろから肩を抱きながらマルレーンに向かって言うと、マルレーンもにこにこしながら頷いていた。イルムヒルトも、早速リュートの準備を始めている。

では……まず母さんのところへと挨拶に向かうとしよう。春の日差しを受けながら、シリウス号はゆっくりと浮上するのであった。