軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

174 娯楽室

内装や装飾を終えてしまえば後は家具類を手配するだけだ。

その間、俺としては俺にしかできないことを進めないといけない。要するに娯楽室と和室を手掛けていく感じである。

まずはダーツ。これはコルクボードに着色し、数字を書き入れて娯楽室の隅にダーツボードとして配置。仕切りを作り、ダーツが投擲される空間に横から入れないように工夫する。

色を変えた床を投擲距離の目印代わりに配置。

こちらからは501だけ遊び方の一例として紙に書いて壁に貼り出しておく。501点の持ち点から、命中させたマスの数字分減らしていき、ゼロを目指すというゲームだ。

まあ、ダーツのゲームの種類はカード同様かなり豊富だという話を聞いたことがあるので遊びたいように遊んでくれれば、みんななりの楽しみ方をしてくれるんじゃないだろうか。

「この矢を手で投げるの?」

矢を使う遊びということで専門としては気になるところなのか、イルムヒルトが興味深そうに張り紙を見ている。

一緒にいたマルレーンやシーラも興味津々といった様子である。マルレーンの肩に乗っていたセラフィナもだ。

「あっ、これ私用?」

セラフィナが嬉しそうな声を上げる。

「うん。大きな矢だと投げにくそうだし」

縮小サイズのダーツ一式も用意したので、セラフィナも普通に投げて遊べるようになっている。スコアを競う遊びなので、まあ問題はないだろう。

「こうやって……投げて的に当てて遊ぶんだ。試しに遊んでみる?」

「いいの?」

4人は嬉しそうな表情を見せた。ダートも届いているのでもう遊べる。

「良いよ。俺はまだやることあるから作業してるけど。感想を聞かせてくれると助かるし」

勧めてみると、みんながダーツで遊び始めた。やや投げ方がぎこちなかったが、投げているうちに俺のフォームを参考にしたらしく、段々と様になっていく。的に当たる度に椅子に座ったマルレーンが拍手したりと楽しそうである。そして、ダート投げが上手いのはやはりシーラだ。イルムヒルトも遠距離の物に狙いをつけるのは慣れているからか、中々の腕前である。

「んー、的に当てるのは難しくないけど。紙に書いてある遊び方は結構頭を使う」

「でも面白いわね」

シーラとイルムヒルトの言葉に、マルレーンがこくこくと頷いている。気に入ってもらえて何よりだ。

それを横目にビリヤード作成の方を進める。木魔法と土魔法を使ってビリヤード台やキューを形成。ビリヤード台はラシャを張って完成である。ビリヤードの肝はラシャの張り具合なのだそうで……時々遊んだりして様子を見ていこう。

キューの先端はオークの皮を使う。先角は魔物の牙を加工したが、皮と先角については今後も研究と改良が必要な部分かも知れない。握りの部分にもコルクを張り、滑り止め用の白墨を用意すればとりあえずキューの準備も完了だ。

ビリヤードボールは迷宮から回収されてきた魔物の牙を買い付け、加工することで作った。ダーツ同様ビリヤードのルールを書いた紙を貼り出す。

「アルフレッド様がお見えになりました」

ティーセットを持ってグレイスとアシュレイ、セシリアとミハエラ、それにアルフレッド、ビオラ、タルコットの工房組が娯楽室に入ってきた。焼き菓子の香ばしい匂いが娯楽室に漂う。

グレイスは姉弟子として、セシリアに諸々の道具の場所を教えたりしていたようである。どうやらみんなで焼き菓子を作っていたらしい。

「頼まれていたものが諸々出来上がったんだ」

アルフレッド達は人化の術の指輪と、炎熱城砦用の外套を届けにきたようだ。

「ありがとう。でも随分早いな」

「ついつい張り切ったところはあるね」

アルフレッドが苦笑いを浮かべる。また徹夜とかしたんじゃないだろうか。

「いや、2人ともお疲れ様」

「ん。ありがとう。また何か面白そうなことしてるね」

工房組が興味深そうにダーツやビリヤードの貼り紙を見ている。

「あっちは矢を投げて、正確に的に当てる遊び。こっちはこうやって玉を突いて弾いて遊ぶんだ。詳しいことは紙に書いてあるから、試してみて感想を聞かせてくれると嬉しいんだけど」

「いやあ、役得だなぁ」

「ラシャは均一に張ったつもりなんだけど、変な凹凸があるようなら教えてくれると助かる」

「分かった。打ち方は――こう、かな?」

「そうそう」

しばらくするとビリヤード特有の小気味の良い音が娯楽室に響き始めた。

「楽しいですね、これ。音が何というか良い感じです」

「枠に当てて跳ね返して番号順にぶつけるのか。中々奥が深いな」

ビオラとタルコットも中々楽しんでいるようである。

「気に入ってくれたのなら、遊びに来てくれる分には一向に構わないよ。魔物村のみんなとも交流にもなるだろうし」

「いいね。んー。娯楽室のカウンターに炭酸飲料の魔道具と、かき氷機置こうか」

「ですね。また作ってきましょう」

ふむ。アルフレッドとビオラはまた作成話で盛り上がっているようだ。

後は……和室用の畳だな。これは紙を作るための魔法や木魔法にアレンジを加えてイグサに似た構造物を形成。ゴーレムを操って編み込ませていく。

「そちらは何の遊びですか?」

アシュレイが尋ねてくる。

「いや、これはただの床板みたいなもの。新しく作った部屋に敷こうかと思ってる」

「そうなのですか。良い匂いがしますね」

アシュレイは目を閉じて、畳の匂いを吸い込む。

「草の匂いですね」

「うん。あ、そういえばイビルウィードはどうなったっけ」

草の話が出たので気になって聞いてみた。

イビルウィードは雑草の魔物である。鉢植えにしてアシュレイが世話をしていたはずだが、そこそこ育ってきているのではないだろうか。

「ああ、あの子達ですか? 掛け合わせたりしなくても懐いてくれました。水魔法で水を与えたり栄養を与えたりしていたのですが……。懐いてくれると案外可愛いですよ」

「へえ。水魔法か。クラウディアの話にも魔物が小さい頃に性質が固定されるっていう話があったからな」

図らずもあの話が実証された形になったわけだ。

植木鉢を持ってきてもらうと、確かにアシュレイの手の中で大人しくしている。

俺も軽く頭を撫でてみたが、俺にも噛み付いたりしてくる様子は無かった。こうして見ると中々可愛いかも知れない。

「テオドール。終わったわ」

戸口にクラウディアも顔を覗かせた。何だかみんな娯楽室に集合してきた感じだな。

クラウディアは地下室に移動用の石碑を設置してくるという作業を行っていた。これで一度村人をクラウディアが地下室に転送すれば、村と地下室の間で行き来ができるようになるそうだ。

「お疲れ様。そっか。家具が入ればいよいよ招待できるかな」

「そうね。最初に希望している子達が来ることになるわ」

「ん。じゃあ、少し休憩しようか」

みんながゲームに興じているのを横目に焼き菓子とお茶で休憩する。

「いやあ。面白いな。カードと言い、良くできてるよね」

ビリヤードを1ゲーム終えたアルフレッドが感想を口にする。アルフレッドはビリヤードがかなり気に入ったらしい。ダーツにしろビリヤードにしろ、割合長年かけて発達したゲームだからな。

「こういうのって販売はしないんですか? ここだけのものにしておくのは、勿体ない気もします」

ビオラが小首を傾げる。

「売れるかも知れないけど……雑事が増えるのがね。手が回らなくなる」

「そういうことなら、信用できる伝手はあるけど」

アルフレッドが言う。

「というと?」

「いや、テオ君に会う前に色々、工房で作った物を扱ってもらえる相手を探そうと思って色々信用できそうな商人と繋がりを作ってたんだ。ただ、テオ君の作るものが空中戦装備だったり通信機だったりで、そういう人達に任せるには向かない物ばっかりだったからね」

「ああ……」

確かにな。空中戦装備も通信機も割と機密扱いというか何と言うかな感じで、流通に乗せてお終いとはいかない代物ばかりだ。

しかしまあ、最近は遊びに関係する品が多かったし、そういう物なら商人に扱ってもらって問題ないのかな?

給金を支払ったりする関係上、収入は多いに越したことはないしな。

「なら、渡りを付けてもらうっていうことはできる?」

「それじゃあ、テオ君と話をするための機会を設けてみるよ。任せるかどうかはテオ君が会って決めるということで」

「分かった。日程が決まったら教えてくれれば」

ふむ。やることがここにきて盛り沢山だな。