軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.EXステージ3 その2

村はひどい有様だった。

あちこちの建物が崩壊し、悲鳴が飛び交っている。

メイちゃんの家は、村の外れにあるからすぐにたどり着いた。

皆、混乱でそれどころではなかったのか、俺の姿を見ても気に留める様子もなかった。

「雷蔵! 無事か!」

「ウガォゥ!」

雷蔵は元気よく返事をする。

傍にはメイちゃんとミィちゃんも居た。

全員無事だったことにひとまず安堵したけど……。

「……誰?」

メイちゃんとミィちゃんの隣には知らない男女が居た。

一人は犬のような耳に狼のような尻尾が生えた若い筋肉質な男性。もう一人は狐のような耳と尻尾が生えた薄着の妙齢の女性だ。

「アンタがメイの言ってた変態お兄さんかい? アタイは 狐人(ルナール) のコンコォーン・コロロだ。事情はこの子たちから聞いてる。メイの怪我と呪い、治してくれてありがとよ」

「ん…… 犬人(ウェアル) のワンワン・ワンダ。ありがとう、変態お兄さん」

「リュウだ。二人は彼女たちの知り合いか? あと変態お兄さんじゃなくリュウと呼んで欲しい」

この二人も亜人のようだ。

メイちゃんの知り合いっぽいけど、どんな説明したんだよ。

俺は変態じゃないぞ。

そりゃあ、怪しいマスクに派手なパンツとマントを装備して、乳首に星シールは付けてるけど、決して変態じゃない。誓って本当だ。

「お二人ともこの村に住む亜人ですぅ~。二人とも、親のいない私たちの面倒をよく見てくれたいい人達なんですよぉ~」

「亜人って一括りにされるのは癪だけどね。嫌われ者同士、助け合って生きてきたのさ」

「ん……メイが森に行かされてた時、僕たち居なかった。凄く後悔した」

なるほど、村人たちからの扱いが酷かったからこそ、亜人同士の結束は強かったのか。

『特定NPCを二名発見しました』

『コンコォーン・コロロ、ワンワン・ワンダ』

『特定NPC 2/8』

頭の中に響くアナウンス。

どうやらこの二人は条件にあった特定NPCだったらしい。

アナウンスから推測するに、メイちゃんたち以外に対象となるNPCは8人居るのか。

メイちゃん、ミィちゃん、そしてこの二人。

共通するのはひょっとして――

「……なあ、ちょっと教えて欲しいんだが、この村に亜人は何人いるんだ?」

「ここに居る4人を除けば、あと6人だね」

じゃあメイちゃん、ミィちゃん以外に8人。

……確定だな。特定NPCとはこの村に住む亜人で間違いないだろう。

この村に住む亜人を守りつつ、一時間生存しろってことか。

(……亜人だけを守れってのがちょっと気になるな……)

まるで他の村人は死んでも構わないというような意図を感じる。

考えすぎか? いや、ともかく今は他の亜人も見つけて保護しないと。

敗北条件は特定NPCの死亡だから、もし彼らに何かあればアナウンスがあるはず。

間違いなく生きているはずだ。

(というか、保護対象多くない?)

メイちゃん、ミィちゃん含め合計10名だぞ?

残りの亜人を探し、更に彼らを守り、人数が増えれば増えるほどあの巨大猿の攻撃を防ぐのも大変になり、その状態で一時間生存する。

(やることが……やることが多い……!)

流石、EXシナリオだ。

今回もまた別ベクトルで難易度が酷い。

ひょっとして『異世界ポイント』ってゲームバランス、クソゲーなのでは?

いや、やるけどさ。俺、クソゲーやバカゲー好きだし。

「んで、これはいったいどういう状況なんだい? いきなり森の方から変な巨人が現れたと思ったら、ヤバい雨降らしてくるし、あっちこっちで胸に星シールつけた奴らが叫びまわってるし……訳が分かんないんだよ」

「ん……あの星、かっこいい。リュウさんも同じの付けてる。かっこいい」

……犬の人、そのセンスはどうかと思うぞ。

そんなキラキラした目で見ないでくれ。

こんなシールが欲しいなら、後でいくらでもあげるから。

「たぶんだけど、あの巨大猿はメイちゃんに呪いを掛けた呪術猿が変化した姿だと思う。速度は遅いけど、この村を目指している。早く逃げた方がいい」

俺の説明にメイちゃんはビクッと怯える。

「じゃ、じゃあ、あれってワタシの呪いが解けたから……怒って、この村を襲いにきたってことですかぁ……?」

メイちゃんはガタガタと震える。

呪術猿の呪いは彼女の心に未だ深い傷を残しているようだ。

俺は出来るだけ優しく、メイちゃんの頭を撫でる。

「大丈夫だよ、メイちゃん。そんなわけないだろ。君は悪くない。それは俺が保証する」

「お兄さぁん……」

メイちゃんがぎゅっと足にしがみついてくる。

ついでにミィちゃんがメイちゃんの背中に抱き着いてコアラみたいになった。

「コロロさん、ワンダさん、他の亜人がどこにいるか分かりますか?」

「ん……ガォンはすぐ近くに居るよ。ズニィーシャたちは村の反対側に居ると思う。……ニャンマルは……ごめん、分からない」

ワンダさんは鼻をすんすんと鳴らしながら答える。

「ワンダは犬の亜人だからね。鼻が利くのさ」

「それは素晴らしい」

聞けば、ガォンは犬の亜人、ズニィーシャは牛の亜人で四人家族、ニャンマルが猫の亜人だそうだ。

彼らが残りの特定NPCだろうな。

……市場で見かけた蜥蜴みたいな人達はカウントされていないのか。

この村の住民じゃないからか、もしくはとっくに村を離れていたか。

まあ、対象でないのならば、今は考えるべきじゃないな。

「もしかしてアンタ、他の亜人たちも助けるつもりかい?」

「ああ、一人も死なせるつもりはない」

俺がはっきりとそう宣言すると、コロロさんとワンダさんの表情が変わった。

「……メイから聞いてたけど、本当に私たちの味方なんだね。ごめんね、正直に言えば、アンタがあの化け物を連れてきたんじゃないかって少し疑ってたんだ」

「ん……僕たちも手伝う」

「すまん……助かる」

彼らが手伝ってくれるなら、残りの亜人たちを格段に見つけやすくなるだろう。

俺はカードから魔術猿を二匹、音猿を一匹、戦士猿を二匹召喚する。

雷蔵以外はみんな、突然現れた猿たちに驚いていたが、事情を説明するとなんとか納得してくれた。

「雷蔵、お前はこのままメイちゃんたちを連れて逃げてくれ。猿たちも援護に付ける。頼んだぞ?」

「ウガォゥ!」

雷蔵は了解だと、頷く。

集合場所を決めると、さっそく雷蔵たちをそちらへ向かわせる。

更に追加で別の猿たちも召喚。

「お前たちは先行して亜人たちを探してくれ。リーダーは魔術猿だ。音猿たちはバフで支援を。もし村人と戦闘になりそうになったら迷わず逃げろ。亜人を見つけたら コイツ(・・・) で合図するんだ。いいな」

「「「ウキキッ!」」」

猿たちは了解だ、と頷き走り出す。

事前に大量の猿たちを仲間に出来たのは本当に幸運だったな。

こういう時は数の重要さがよくわかる。

「よし、雲母、バフの継続は頼むぞ」

「きゅー」

雲母に加速のバフを掛けてもらう。

残りは移動中に重ね掛けしてもらおう。

「それじゃあ、俺たちも動きましょう」

「分かった」

「任せなよ」

俺もコロロさん、ワンダさんと共に残りの亜人たちの元へ向かう。

急がないと。次の攻撃が来るまでに彼らを見つけて保護しなければ。

俺たちはまず最初に、すぐ近くにいるという犬人の元へ急いだ。

「……ん? あれは……」

村の中を走っていると、視界の先に村長と門番が居た。

だがどこか様子がおかしい。

「う、うわぁあああああ!? おいお前、何をしている! やめろ!?」

「アァァ……アアアアアアアアアア!」

門番が村長を襲っていた。

まさか仲間割れか? こんな時に?

「おい、どうした! こんな時になにをやってるんだ!」

「あっ……」

村長は俺たちに気付くと、助けを求めてくる。

「お、おいアンタ、助けてくれ! コイツ、あの黒い泥を浴びたら急に暴れだして……」

「アガガアアアア……アアアアアアア!」

なんだと……?

見れば、門番の顔や体にはあの黒い泥がたっぷりと付着していた。

皮膚や頭が爛れ、まるでゾンビのように正気を失った表情で、村長に襲い掛かっている。

「いやぁああああああああああ」

「だ、誰かあああああ助けてくれえええええええ!」

「や、止めろ! 俺が誰か分からないのか!? ぎゃぁああああああああ」

周囲を見回せば、他にも泥を浴びた村人たちがゾンビとなって、人々に襲い掛かっていた。

どうやら、あの泥を浴びた奴はダメージを受けるだけじゃなく、ゾンビのように正気すらも失ってしまうようだ。

「くっそ、厄介な 呪い(デバフ) 仕込みやがって!」

あの呪術猿らしい嫌らしさだ。

どうやらアイツはとことん俺たちを苦しめたいらしい。

被害が拡大する前に早く亜人たちを保護しなければ……。