軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30.少し休んでそうめんを食べる

「へぇー、結構な数のスレが立ってるな」

初心者向けのスレから上級者向け。

それに鍵付きで、認証されないと入れないやつまである。

「……この掲示板を管理してるプレイヤー、中々にがめついな……」

最初に覗いたスレ以外はほぼ全てポイントを要求してる。

特に上級者向けなんかは現行スレが5ポイント、過去スレ検索も1~5ポイントは要求してくる。

「……いや、しっかりしているとみるべきか」

ポイントは『異世界ポイント』における生命線だ。

無職が戦闘力皆無な職業なら、メインストーリーを進めてポイントを得るのはほぼ不可能だろう。

自分にしかできない強みを生かすのは間違ってはいない。

ゲームでも現実でもそれは同じだ。

「ちらっと初心者向けっぽいスレを覗いてみたが、やっぱEXステージって難易度ヤバいんだな……」

加えて挑戦一回だけっていう厳しさ。

そりゃ失敗したプレイヤーも多いだろう。

とはいえ、スタート地点もグランバルの森以外にもあることが分かったし、やっぱり情報は大切だな。

「俺のほかにもEXステージをクリアした奴がいるんだな。そりゃそうか」

俺は自分が特別な人間だなんて思っていない。

俺に出来るんなら、他の奴にだって出来るだろう。

そもそも俺一人なら絶対クリア出来なかった。

あれは雷蔵が居たからクリア出来たのだ。

クリア出来る奴は化け物だ、なんて書かれていたがそんなことはない。

「しかし『トラ』ねぇ……まさかな」

俺は一瞬、アルダンのトラさんを思い浮かべたがすぐに首を振った。

いくらなんでも偶然だろう。

ありふれたプレイヤー名だし。

「むしろソシャゲのアカウント名って馬鹿みたいな名前つける人多いよな」

『今日で打ち切り』さんとか、『ノンノンデニッシュ』さんとか、『孫スムージ』さんとか、『絶頂会長』さんとか。

何故そんな名前にしたんだって人がソシャゲにはあふれてる。

しかもそういう個性的な名前の人に限って対戦強いし……。

最後の絶頂会長さんはアルダン頂点トーナメントの常連だ。優勝も何度かしてる。

トラさん以外で割と親しいプレイヤーの一人だ。

「見た感じ、結構な数のプレイヤーがいるのか?」

数百人……いや、下手したら千人はいるかもしれない。

こんなトンデモアプリをそんなにばら撒くなんて、作ったやつは何を考えてるんだろう?

まあ、それは考えても仕方ないか。

少なくともこのアプリが世間にバレることはない。

いかなる手段を使ってこのアプリの存在を伝えようとしても、それが認識されないからだ。

伝え方が悪質になると最悪、アプリが消去されるんだったか。

改めてとんでもない仕様だと思う。

どっかの暇な神様が作ったって言われても納得してしまう。

「とりあえず掲示板の確認は済んだし、雷蔵のカードも確認しておこう」

EXステージがクリアされた段階で雷蔵はかなりの深手を負っていた。

俺の場合はクリアした時点で傷は治っているが、雷蔵はどうだろう?

『名前 雷蔵 LV16

種族 ホブ・ゴブリン

状態 重症、装備破損

戦闘力 ☆☆☆

スキル 防衛、鉄腕、雷撃、雷閃

忠誠度 最良』

カードを確認すると『状態』という項目が増えていた。

以前はなかった項目だ。

雲母のカードを確認したが『状態』という項目はなかった。

おそらくダメージや、何かしらのデバフを受けた場合に表示されるのだろう。

「これ、どうすればいいんだ?」

ヘルプで調べてみると、手に入れたアイテムをスライドさせればいいらしい。

俺はさっそくさっき手に入れた『回復薬』と『傷薬』を雷蔵のカードへとスライドさせる。

状態が『重症』から『軽傷』へと変化した。

もう一回、回復薬と傷薬をスライドさせると、状態の項目が消える。

おそらくこれでダメージはなくなったのだろう。

「はぁー、よかった……」

せっかくクリアしたのに、怪我したままじゃ可哀そうだもんな。

『装備破損』の方も、同じく新しい装備をスライドさせることで消えるらしい。

「あ、新しい装備が入荷してる」

ポイント交換に雷蔵が装備できる武器も新しいのが入荷していた。

せっかくなのでこっちを装備させよう。

ポイントには余裕があるしな。

・丈夫な戦士の剣 15ポイント 攻撃+20

・丈夫な戦士の鎧 15ポイント 防御+25

・丈夫な戦士の兜 15ポイント 魔防+20

・丈夫な戦士の盾 15ポイント 防御+25

・軽くて丈夫な靴 15ポイント 敏捷+10

・宝石リング 30ポイント 防御、魔防+10%

被ダメージ-10%

ほぼ前の武器の上位互換だな。

最後の宝石リングは雷蔵じゃなく、雲母の装備品、つまり首輪だ。

雲母が装備できるアイテムもあってよかった。

それぞれのカードに装備をスライドさせると、絵柄が変化した。

二匹とも嬉しそうな表情だ。

合計105ポイントだが、ポイントはたっぷりあるし問題ない。

「さて、最後にデイリークエストだな」

確か最初の説明でも、ポイントを得るための手段の一つとして明示されていた。

確認してみると、デイリークエストは曜日ごとに内容と報酬が異なるらしい。

月曜、火曜は討伐クエストで報酬はポイントと武器。

水曜、木曜は調査クエストで報酬はポイントと防具。

金曜、土曜は採取クエストで報酬はポイントとアイテム。

日曜はボスクエストで報酬はポイントと追加ポイント。

「今日は土曜日だから採取クエストか」

難易度はレベルに応じて変化するらしい。

メインストーリーと同じで達成度に応じて報酬も変化する。

「……少し休んだら挑戦してみるか」

デイリークエストはその名の通り日付が変わるまでいつでも挑戦できる。

流石に、EXステージをこなした後で、精神的な疲労が大きい。

「一旦、ログアウトするか」

フレンドに関してはまた後でいいだろう。

俺はログアウトを選択した。

現実に戻ると、時刻は午後四時半。

異世界ポイントを始めてから僅か五分ほどしか経っていない。

「こりゃマジで時間の感覚ズレるな……」

何時間もやっていると、現実の乖離が広がっていく。

注意しないとな。

「とりあえずちょっと休んでから飯食うか」

銭湯に行ってさっぱりしたが、何となくもう一度シャワーを浴びて昼寝をした。

精神的に疲れてたのか、二時間近く眠ってしまった。

ただ寝覚めはすごくすっきりしていた。

「二回分のポイントが効いてるのかな?」

容姿、頭脳、運動機能、身体機能、運にそれぞれ二回目のポイントを振ったのだ。

ひょっとしたらその影響で体力がついているのかもしれない。

「……顔は別に変った感じはないけどな」

鏡を見て自分の姿を確認したが特にこれと言って変化はない。

いや、別にモテたいとも思わないけど、二回目なんだし、もうちょい変化してると思ったんだけどな。……別にモテたいとは思ってないけど。思ってないけど。ホントだよ? ……すいません、嘘です。モテたいです。それなりに。

「うーん、それとも変化はしていて、それを俺が認識していないとか?」

ポイントを振って整った容姿を、以前から『そういう顔だった』と認識しているとすれば、辻褄は合うけど。

それはそれで怖いな……。

認識、いや現実の改変だ。

まあ、ポイントが現金に換金出来てる時点で十分改変だけどさ。

深く考えるのはよそう。

「ともかく腹減ったし、何か食うか」

そうめんが残っていたのでそうめんにしよう。

ただ普通にめんつゆだけだと味気ないのでちょっとアレンジすっか。

使うのは特売で手に入れた冷凍シーフードミックス、トマト、塩昆布、オリーブオイル。

まずシーフードミックスを3%くらいの塩分濃度の水で解凍する。こうすれば普通に溶かすよりも格段に美味しくなる。

いい感じに解凍し、水気をきったら軽く炒め、少し大きめに切ったトマト、オリーブオイルと和える。トマトは少し潰して水分を出しておいてもいい。

そうめんを茹でてる間にやると時短になる。

んで、茹でて冷たくしたそうめんにこれと塩昆布を和えるだけ。

お好みで胡麻を振りかけてもいい。

「ちょっとおしゃれな冷製パスタみたいで美味いんだよな」

トマトの旨味と塩昆布の塩気がポイントだ。

最初はゲテモノだと思っていたが、これが不思議と合うんだよな。

ぷりっとしたエビやベビーホタテもいいアクセントになっている。

オリーブオイルとトマトから出た水分のおかげで、そうめんがくっつくこともない。

するする食べれちゃう。

「さて、腹も膨れたし、デイリークエストをやってみるか」

俺は再び異世界ポイントを起動させた。