軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.完全に事案です。すいませんでした

ぷれいやー……プレイヤーのことだよな?

何か知っているのだろうか?

「なるほどぉ。どぉ~りで奇抜な格好をしてると思いましたぁ~。ぷれいやーって変わってる人が多いって聞きますからねぇ~」

「いや、だからこれはしたくてこういう格好をしてるわけじゃないんだ。本当だ」

「そうなんですかぁ~……あ、そうだ」

ぽんっと、少女は何かに気付いたように再び手を叩く。

「そういえば自己紹介がまだでしたねぇ~。ワタシは 羊人(シープル) のメイメイ・メイって言います~。気軽にメイちゃんって呼んでくださいねぇ~」

「……リュウだ。こっちは雷蔵」

「ウゴァ」

「リュウちゃんさんに、ライちゃんさんですね~。よろしくですぅ~」

メイさんはぺこりと頭を下げる。

……リュウちゃんさんって。雷蔵も勝手にあだ名付けられてるし。

ていうか、思わずプレイヤー名、名乗っちゃった。しかもアルダンの。

「それでメイさん、さっき言ってたぷれ――」

「メイ ちゃん(・・・) と呼んで下さい~」

「いや、でもちゃんよりさんの方が……。あ、じゃあメイちゃんさんとか――」

「き・が・る・にメイちゃんと呼んで下さい~」

笑ってるけど、目が笑ってなかった。

そのこだわりはなんなんだ?

「……メイちゃんがさっき言ってた『ぷれいやー』ってのは何なんだ?」

俺がそう聞くと、メイちゃんはむふーと嬉しそうに笑みを浮かべた。

「はい~、ワタシも直接見たことはないんですがぁ~、大陸のあっちこっちに居る強い人たちの総称ですぅ~。すっごく強くて、変わってて、猫みたいに何もないところをじぃーって見てたりぃ、ぼそぼそ一人で変なことを言うらしくてぇ、お兄さんたち、マジぴったりじゃないですかぁ~」

「マジぴったりじゃないですか~って……いや、まあ変な格好してる自覚はあるけど……」

でも俺だってしたくてこんな格好してるわけじゃないからねっ。

あくまでも『紙装備』の特性を生かすためにしてるだけだからね。ホントだからね!

「でもお兄さんたちはぁ、いい人そうですねぇ~。ワタシの種族にもぉ、全然反応無いですしぃ~」

「種族……?」

「 羊人(シープル) って言ったじゃないですかぁ。ワタシ、人の言うところの亜人種なんですよぉ~。ほらぁ~」

メイちゃんはモコモコした髪をかき分けて、何かを見せてくる。

それは角だった。羊のようなねじれた角が側頭部から生えていた。

髪に埋もれていて気付かなかった。

「おぉ、角だ」

「はい~……それだけですぅ?」

「え、ああ。まあ、そういう種族も居るんだなぁ、と」

剣と魔法のファンタジーな世界観なんだし、そういう種族も普通に居ると勝手に思っていた。

するとメイちゃんはにぱぁーっと嬉しそうに笑みを浮かべた。

「やっぱりお兄さんたちはいい人ですねぇ~」

「はぁ……」

「ゴァゥ……」

何というか緊張感のない子だな。

というか、雷蔵は人じゃなくホブ・ゴブリンだけどいいのか?

「それでメイちゃんは何故こんなところに?」

「薬草採取とぉ、森の調査ですねぇ。なぁーんかここ最近、妙に森が騒がしいみたいでしてぇ~」

「森が騒がしい……?」

そういえば、ステージのタイトルが『森の異変』だったな。

「そうなんですよぉ。さっきのシャドースネイクとかぁ、本来はもっと森の奥にいるはずなんですよぉ。不思議ですよねぇ~」

「へぇ……」

なにか理由があるのだろうか?

「いやぁ、本当に助かりましたぁ~。流石に一人で来るのは無謀でしたよぉ~。お兄さんたちには感謝してもしきれません~」

「それはどういたしまして。この後はどうするつもりなの?」

「モンスターも怖いのでぇ、一旦村に戻ろうかなぁ~と。そのぉ、もしよければ森の入り口まで一緒に来て貰えませんかぁ~? 護衛のお金は払いますのでぇ~」

「森の入り口って、ひょっとして向こう?」

俺はある方向を指さす。

「はい。そうですねぇ~」

……なるほど、今回の流れが見えてきた。

俺が今、指さした方向はマップのゴール地点に設定されていた場所。

クリア条件の『NPCの脱出』ってのは、彼女を森の入り口へ連れて行くことで間違いないだろう。

「勿論、俺達でよければ力になるよ」

「ゴァゥ」

「ありがとうございます~」

こうして俺達はメイちゃんを護衛することになった。

「それじゃあ、早く行きましょうか。時間もありませんしぃ~」

「? それはどうして?」

「シャドー・スネイクってぇ、死体が他の仲間をおびき寄せるんですよ~。だから早くしないと、仲間がどんどんやってきちゃうんですぅ~」

「……へぇ」

なるほど……ふぅん、なるほどね。

「どんどんやってくるってどれくらい?」

「それはもぉ~たっくさんですよぉ~。でも何故か三匹以上同時には出てこないんですよねぇ~。でも三匹倒しちゃうと、また次の三匹現れての繰り返しで~。もう厄介なんですよぉ~」

「ほほぅ……」

どんどん増援がくるモンスター。

それも一度に現れる数は三匹まで。

まさにゲーム仕様だな。

(……さっきの戦いでシャドー・スネイクの動きや癖、弱点は把握した)

動きとしては狂鎧大猪よりも単調だ。

今度は一撃で急所を刺せるだろう。

雷蔵も戦闘に加わってくれれば、たとえ三匹同時だろうと相手に出来る自信がある。

つまりここで待っていれば、比較的安全に倒せるモンスターがうようよやってくるわけだ。

「……ねえ、メイちゃんさん、もう少しここに居ないか?」

「だからメイちゃんと呼んでと……はい~?」

ぽかんとするメイちゃん。

もふもふの髪を揺らしながら、首をかしげている。

「もぉ~、話聞いてましたぁ~? もうすぐシャドー・スネイクの仲間がたっくさん集まってくるんですよぉ~。とっても危ないんですぅ~」

ぷりぷりと怒るメイちゃん。

無性にモフモフしたい衝動に駆られる。

「ああ、聞いてたよ。だから、ね? その、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから待てない? メイちゃんはそこらへんに隠れていてくれればいいから」

「い、嫌ですよぉ~。それなら、一人でさっさと森から逃げた方がマシですよぉ~」

……彼女の言うことは正論だ。

むしろ俺の提案の方が間違っているのだ。自覚はある。

「じゃあ逆に報酬払うよ。10,000イェン」

「な、なんですか、その怪しさ満点の提案はぁ~。い、10,000……ごくり。いや、ダメダメ。そんなの絶対にダメですよぉ~」

「……そうか」

この子、今迷ったな。お金と安全を天秤にかけたな。

うーん、しかし駄目かぁ。じゃあ仕方ないか。

残念だ。いや、実に残念である。

「……雷蔵、手伝って」

「ウガァ」

「え、そのロープどこから……ちょっ――なんでワタシを木に縛り付けてるんですか~!? いやぁ~、やめてぇ~!」

俺はオススメ商品として紹介されていた『丈夫なロープ』を取り出すと、彼女を木にぐるぐる巻きにして固定した。

「……ウガァ」

雷蔵はそれをなにやら懐かしいモノを見る目を向けながらも、縛る手を止めない。

なるほど、丈夫なロープはこのためのアイテムだったのか。

流石、オススメ商品。いい仕事をする。

「大丈夫。こういう 場合(パターン) ってだいたい十匹から二十匹くらい倒せば実績は達成できるって決まってるから。それまで大人しくしてて。ね?」

「な、何を言ってるのかさっぱり分からないですよぉ~。やっぱりぷれいやーって変な人ばっかりだぁ~。誰か助けてえええ~」

最初に俺達が聞いたのと同じ悲鳴を上げるメイちゃんであった。

ごめんね、メイちゃん。出来るだけ早く終わらせるから。……その、隠しアイテムとか諸々の探索も含めて出来るだけ早く終わらせるから。

「シャァァ……」

現れた三匹のシャドースネイクを見つめていると、ピロンと頭の中に効果音が響いた。

『NPCの好感度が減少しました』

……なるほど、そういう仕様もあるのか。