軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133.新しい装備を手に入れたぞ!ふざけんな!

扉を開けて、待機室へと入る。

「ひぃぃぃいいいいいい! なんなんですか、この大量のモンスターは!?」

「ラヴィ君、落ち着いて下さいよー。さっきも説明した通り、襲ってなんて来ませんから」

「……らび、うるさい」

大量のモンスターに囲まれる魔女っ子と井口とセイラン。

うーん、増えたなぁ……。

待機組が遠征でだいぶ頑張ってくれたようで、仲間になったモンスターの数は既に三百体を超えている。

(……見た感じ、希少種は無しか)

今のところ、仲間になったモンスターの中では雲母の近縁種である 悪夢妖狐(ナイトメア・フォックス) が唯一の希少種だろう。

マップも順調に増えてるようだし、希少なモンスターが仲間になる可能性もまだまだある。

来週の討伐クエストで一気にレベルアップさせたいな。

「あ、りゅーう♪」

「ウッキキ~♪」

俺が入って来たことに気付くと、早速セイランと夜空が抱き着いてくる。

魔女っ子が今にも泣きそうな表情でこちらへ向かってきた。

「お師匠さまぁ~! 来るのが遅いですよ~! ボク、本当に怖くて――いたぁ!?」

「……らびはだめ」

「ウキキ」

そのまま俺に抱き着こうとして、セイランと夜空に弾かれた。

魔女っ子が泣きそうな視線をこちらに向けてくる。

「悪い、悪い。でも事前に説明してただろ? この空間に居るモンスターは全部味方だ。襲われることはないって」

「……分かってても、怖いものは怖いですよ」

まあ、それもそうか。

絶対に襲ってこないって分かっていても、ライオンが同じ部屋に居れば、誰だって怖いだろう。

考えてみれば、これが普通の反応か。

もう少し配慮すべきだったな。

「……ついセイランを基準に考えちまった」

「ん? あたしがなに?」

「何でもないよ。セイランは凄いなって思っただけ」

「むふー。ほめられた♪」

頭を撫でると、セイランは嬉しそうに目を細める。

……適当に誤魔化したが、褒めては居ないんだよセイラン。

だってお前にとっては人や亜人よりも、モンスターの方がよっぽど信頼できる対象だったってことなんだから。

(……魔女っ子の加入が、セイランにとっていい方向に進んでくれることを願うばかりだな)

亜人嫌い。人間嫌い。

どちらもいずれはセイランに克服してほしい問題だ。

セイランの立場を考えれば、いずれは亜人の国にも向かわなきゃいけないんだし。

「……というか、ラヴィって?」

「えっ」

俺の言葉に、魔女っ子が呆然とする

井口たちも「何言ってんだこいつ?」みたいな表情になる。

「あの、師匠……ボクの名前、覚えてないんですか?」

「……ごめん」

「まあ……はい。そうですよね、だいぶ酔ってましたからね。じゃあ、改めて自己紹介をします。ボクの名前はラヴィ・ブリーズ。種族は兎人です。よろしくお願いします」

「本当にすまん。改めて名乗るよ。リュウだ。これからよろしくな、ラヴィ」

「はい、師匠っ」

魔女っ子改めラヴィはぱぁっと笑みを浮かべる。

だから師匠じゃねえっての。

「先輩、駄目ですよー。せっかく自分を慕ってくれる後輩君が出来たんですから。後輩にはもっと優しく接するべきです。ねー、ラヴィ君」

「あ、えっと……その、ボクが新参者なのは事実なので……。そもそも、亜人であることを明かしても、こうしてボクを受け入れてくれてる時点で、師匠や皆さんには感謝しかないです。本当に」

「ッ~~~いい子! 先輩、この子、すっごくいい子ですよ!」

井口はラビィをぎゅっと抱きしめる。

「ちょっ、そんな抱き着かないで下さいっ。は、恥ずかしいですよ……」

「恥ずかしがっちゃって。そういう所も可愛いなぁ~」

「あわ、あわぁ~」

「嫌がってんなら、止めろ馬鹿」

「あいたっ」

軽くチョップをして、ラビィから井口を引き離す。

「同性同士だからってなんでも許されるわけじゃねーんだぞ? 過度なスキンシップが嫌な奴だっているんだから、ちゃんと距離感、考えろ。今の時代はコンプラにうるせーんだから」

「えっ?」

「は?」

すると再び井口とラビィがぽかんとする。

何言ってんだコイツ、みたいな顔だ。

「え、なに?」

「あの、先輩……ラヴィ君は 男の子(・・・) ですよ?」

「………………は?」

何言ってんだコイツ?

「いや、だからラヴィ君は男の子です。ねえ、ラビィ君?」

「は、はい……。そうです……」

何故か赤面しながら帽子で顔を隠すラビィ。

確かに帽子以外は、男女どちらが着ててもおかしくないような服装だけど。

え、男……? どう見ても女の子にしか見えないこの顔で?

だって魔女っ子で、魔女の格好してて……え?

『今の時代はジェンダーフリー』

呪い人形がぽつりとつぶやく。

「…………マジかや」

じゃあ、コイツ男の子で魔女に憧れてたって事?

……なんか色々と闇が深そうな気がするぞ。

「ていうか先輩、ほんとに昨日のこと覚えてないんですね。昨日、何度も確認したでしょうに」

「あぅぅ……」

ますます赤面する魔女っ子、もといラビィ。

確認?

ちょっと待って。

確認って俺、この子に何したの?

まさかコンプラに反するような行為を……?

青ざめる俺に、井口はにやにやと笑いながら、ゆっくりと近づいてくる。

「せんぱぁ~い。昨日、ラヴィ君の名前と性別を聞いた後、先輩は何をしたと思います?」

「……な、なにをしたの?」

「先輩は――」

まるで死刑宣告を告げる死神のように。

「なぁ~~~~んにもしてませんよ~~~。がははって笑いながら『お~、そうかそうか~。じゃあ、これからよろしくな~魔女っ子~』って言っただけです。てへっ」

「井口ぃ!!!!」

ぶっ殺してやる! やっぱコイツ一回分からせないと駄目だわ。

まあ、そんなわけで、魔女っ子もとい、男の娘もとい、兎人の亜人ラビィ・ブリーズが俺たちの新たな仲間になるのだった。

その後、俺は井口を埋め、ラヴィに待機室について、もう一度、説明した。

「や、やっぱり凄い……。これが魔女の奇跡……」

ラヴィはますます目を輝かせて俺を見る。

いや、ゲーム仕様だから。

まあ、そこまで説明するのも面倒だし、それでいいや。

次に画面を開き、待機室の項目について確認する。

待機室が拡張可能になったってアナウンスがあったからな。

てか、土地を広げるのは100ポイントあれば出来るし、何か違いがあるはずだ。

「へぇ……様々な『環境』を追加、変更することが出来るのか」

森や川以外に、様々な環境――例えば砂漠や氷河、渓谷といった細かい環境を追加することが出来るらしい。森を『熱帯林』や『亜寒帯林』のように細かく分けることも可能になったようだ。

確かに一口に森や川って言っても色々種類があるからな。

要はよりカードたちの住みやすい環境に出来るってことか。

これはいい仕様だな。

雷蔵たちの意見を聞きつつ、変更していこう。

「雷蔵、ちょっといいか――って、あらら」

「ウ、ウガォゥ……」

「ウガーゥ♪ ウガ、ウガガーゥ♪」

雷蔵の方を見れば、以前仲間にした雌のホブゴブリンとイチャイチャしていた。

いや、雷蔵がホブゴブリンに迫られてる感じかな?

ホブゴブリンの放つ好き好きオーラが凄い。

雷蔵はかなり戸惑っている様子だ。

あー、ありゃあ完全に勘違いされてるな。

まあ、放っておいて問題ないだろう。

雷蔵も戸惑いながらも、まんざらでもなさそうだし。

「……後でホブゴブリンの名前、考えておくか」

雷蔵の奥さん(予定)だし、 稲妻(イナヅマ) とか?

とりあえず皆で話し合って、待機室をいくつかの区画に分け、環境を整備した。

モンスターたちにはとても好評だった。

次は、遠征組がドロップした装備品の確認だ。

大半は残念装備だったが、いくつか有用な装備も手に入った。

・マジカルイヤリング

知力+5%、回数制限のあるスキルの使用回数+2

・歌姫のローブ

知力+3%、防御+3%、スキルのCT-40%

・竜騎士の鎧

HP+5%、防御、魔防+8%

竜騎士系の装備効果上昇。

・溶岩の鎧

HP、防御、魔防+8%

被物理ダメージ-20%、被土・火魔法ダメージ-30%

水・氷魔法の被ダメージ+30%

この辺はかなり当たりの装備だな。

それぞれ夜空、新月、月光、月影にぴったりの装備だ。

で、問題は次の装備だ。

・被る下着(ブリーフ型)

攻撃、敏捷+10%

被物理・魔法ダメージ-30%

沈黙、疲労、毒、呪いのデバフ無効

変態職以外、装備不可。少し匂う

「なんでこんなくそみてぇな装備がこんな強いんだよおおおおおお!」

これ、俺に被れってことだろ!?

絶対そうだろ!

やっぱクソ! 異世界ポイントはクソだ!

頭にはブリーフを被り、下半身にはアヒルパンツ。

そして乳首には星シール。

どこからどう見ても変態です。クソが。

「先輩、今更ですよ」

「りゅーう、かっこいいよっ」

「ウキキ」

「ウガゥ」

「きゅー」

『ぼー』

やめろ、お前ら! 普通に受け入れるな!

なんでそんな当たり前に俺が変態装備になることを受け入れてるんだ。

……普段からそんな恰好をしているからですね。ちくしょう。

でも流石にパンツ被って歩き回りたくないよ。

しかも少し匂うんだぜ、これ……。

何の罰ゲームだよ。

はぁ、もういいや。次だ次。

「ナトゥリア、聞きたいことがあるんだが」

『なんだ?』

俺は屍狼の頭の上に鎮座する雪だるまに見えるように、収納リストから『旧世界の鍵』を取り出す。

「これ、『旧世界の鍵』って言うらしいんだが、旧世界ってのについて何か知ってるか? 魔女の弟子リリアンヌって奴から貰ったんだが……」

『知らん。興味もない』

「そ、そうか……」

まあ、これはある程度予想していた答えだ。

ちなみにリリアンヌのことは、呪い人形たちも知らなかった。

魔女の日誌にもそれらしい人物はいなかったし、本当に何者なんだろうか?

「じゃあ、やっぱ知ってそうな奴に聞きに行くしかないか……」

世界扉でアルタナへの往来も可能と分かったし、CTが終わったら そこ(・・) に向かおう。

「……話の分かる奴だといいんだがな」

というか、そもそも会話が成り立つのだろうか?

ナトゥリアから教えてもらった、ダンジョンに封印されていながらも、世界の情報を集めているというモンスター。

帰らずの森の先にあるパルムール王墓。

そこにある隠しダンジョンの主。

その名は――ディザス・マッシュリー。

『天星菌類』と呼ばれる 茸(キノコ) のモンスターだ。