軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112.デイリーダンジョン 共闘戦 その1

終末世界に向かう前に、まずは待機室で確認作業だ。

待機室へ入ると、セイランが懐に飛び込んできた。

「りゅーぅ、まってた!」

「セイラン! もう大丈夫なのか?」

「うんっ。もうげんき!」

セイランはにかっと笑みを浮かべる。

遺跡では、割と追い詰められてたっぽい感じがあったが、今はその雰囲気が見られない。

むしろ前よりも元気が有り余っているように見える。

『お前が居ない間に、俺様が力の使い方を教えてやった。盛大に感謝しろ』

ハスキー……じゃなかった屍狼の上でドヤる 雪だるま(ナトゥリア) 。

食べられないように、頭の上に現れるようにしたらしい。

しかし力の使い方を教えていたとは。ずいぶん親切だな。

それだけセイランに目をかけてるってとこか?

もしくは……。

「……ひょっとしてあの時言い過ぎて、責任感じてるのか?」

『ばっ……そ、そんなわけがあるか! 勘違いするな!』

……この狼さん、ツンデレだ。

しかもなんて分かり易いツンデレなのだろうか。

いや、ほんと良い人過ぎる。人じゃないけど。

しかし、セイランはぷくーっと頬をくらませつ。

「むぅ……あいつ、きらい。れんしゅう、きびしかった」

「セイラン、そんな嫌うなよ。教え方は厳しかったかもしれないけど、強くなれたんだろ? 教えてくれたのならちゃんと感謝しないと」

「そうだけど……むぅー」

ぎゅーっと、セイランはコアラみたいにしがみついてくる。

まあ、理解できても、納得できるかは別だよね。

それはよく分かる。

「……ウキキ」

ついでに夜空も背中にくっついてくる。

……毎回、君らくっついてくるの好きね。

『…………ボ』

「小雨、もう大丈夫か?」

『ボ! ボー!』

小雨はピチピチと体を震わせる。

どうやらこちらも無事に立ち直ったらしい。

『で、これからどこへ向かうのだ? その顔はこれから戦に出向く男の顔だ』

良い人な上に、察しがいいな、この狼さんは。

まあ、雷蔵たちも既に俺が来た時点で、武器や体の調子を確かめてるけどさ。

「向かうのはデイリーダンジョン『終末世界』だ。そこでエイトさんって人を助けて、門番を倒す」

『終末世界? それはどういうところなのだ?』

「えっとだな――」

俺はナトゥリアに終末世界について説明する。

これまでの経緯や、これから向かう目的や、戦う相手も含めて。

『……釈迦蜘蛛に瓦礫蟲か。あの害虫どもめ、アルタナ以外にもおったのか』

「知ってるのか?」

『知っているも何も、ソイツらはヌッチャラ湿原に封印されている災害指定モンスターだ。ヌッチャラ湿原のダンジョンの主が、己と共に封印した。黒い巨人や嘆きの白とやらは聞いたことがないが……』

「マジか……」

てっきり終末世界特有のモンスターかと思ったが、アルタナにも居るのか。

でも封印されてるってことは、やっぱりモンスターとしては規格外なんだな。

災害指定モンスターか。まあ、あの説明からすると納得しかない。

そんなモンスターを自分と共に封印したって、ヌッチャラ湿原のダンジョンの主もなんか良い人っぽいな。

『その狙撃兵と魔導士とやらは、よく分からんな。人の姿をしているのならば、お前らの仲間ではないのか?』

「それはないだろ。あくまでモンスターの一種だ」

確かにパルゴスのように、モンスター扱いされてた奴もいる。

アイツは確か、暗黒魔剣士ってカテゴリだったか。

「レベルは高いけど、少なくとも、現状では負ける要素はないよ。エイトさんの言う魔導士に何か切り札でもない限りはな」

強力な貫通力を持つ狙撃兵と、大勢の 高位屍鬼(ハイ・グール) を召喚する魔導士は、確かに厄介だろう。

だが、総じて感じた印象は呪術猿の上位互換ステージ。

あの時は、デバフ対策がほぼ皆無だったから苦戦したが、今は称号に加えて、対策用のスキルやアイテムがいくつもある。

ニャンマルさんに貸したままの『天使のネックレス』もあれば尚よかったが、そこは同じく魔女さんの遺産で手に入れた『ファンブル・エレメント』で代用できる。

今まで使う機会はなかったが、おそらく今回は使用することになるだろう。

『油断は禁物だぞ?』

「するわけないだろ」

『ふっ、確かにそうだな』

一瞬の油断、判断ミスが命取りになるのは、これまでのEXステージや終末世界でのクエストで経験済みだ。

絶対に油断も慢心もしない。

アイテムも装備も何度も確認した。

(……新しい終末の楽譜が演奏できなかったのが残念と言えば残念か)

前回のクエストで手に入れた終末の楽譜G。

これでセイランと小雨のパワーアップが出来ると思ったのだが演奏できなかった。

前回はCとDで演奏が出来たし、ひょっとしたら使用するには複数の楽譜が必要なのかもしれない。

「それじゃあ、始めるか」

エイトさんにメッセージを送る。

すぐに返事は返って来た。

後は俺が終末世界でエイトさんをリスキル状態から解放するだけだ。

『デイリーダンジョンに挑戦しますか?』

イエスを選択する。

視界が暗転し、俺はデイリーダンジョン『終末世界』へと足を踏み入れた。

『デイリーダンジョン 終末世界

クリア条件 マッピングを0.8%以上に広げる

門番を撃破し、救世の鍵を入手する

成功報酬 大空の欠片×10、終末の楽譜E、不変の宝珠』

今回はクリア条件が二つ。

一つはいつも通りマッピングを広げる。

もう一つが、門番を倒すことか。

「門番は駅前に居るって言ってたな……」

まずはマッピングをしながらそちらへ向かおう。

エイトさんからの情報では、駅前までは特に危険なモンスターもおらず、マッピングも駅前に着くまでに0.8%になるとのこと。

とはいえ、油断はできないので慎重に進む。

かつて駅前で栄えていた周囲は見るも無残に崩壊し、どこもかしこも廃墟となっていた。

そのまま道なりに進んでいくと、やがて目的地が見えてくる。

(……あそこか)

駅前にある中央広場。

かなり距離は離れているが、あの周辺だけが不自然に灯が灯っている。

エイトさんの話では、駅の入り口に魔導士、周囲のビルの屋上に、狙撃兵が隠れているらしい。

まずは警戒範囲外のビルへ上り、そこから狙撃兵と、エイトさんの復活地点を確認する。

(……あれか)

駅前中央広場から少し離れた場所に、仰向けに倒れ、半透明になっているエイトさんのアバターが見えた。

……屋上からだと数字の道路標示にしか見えないな。

しかし死亡状態ってああいう感じになるのか。

どことなく、世界扉を通った時に見た現実の俺たちの状態に似ているな。

そこから視線を移せば、エイトさんのアバターからほど近いビルの屋上に、狙撃兵らしき姿が見えた。

『モンスター図鑑が更新しました』

『モンスター図鑑№20 終末の狙撃兵

終末世界に存在する狙撃兵

終末の力によって変異し、近づくものを問答無用で狙撃する

その命中率、貫通力は凄まじく、決して防ぐことは出来ない

強い未練を残したその魂は決して朽ちることなく、倒しても一定時間後に復活する

討伐推奨LV45』

エイトさんから聞いた通りの内容だな。

まずはアイツを倒してエイトさんを救出する。

作戦開始だ。