軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18-51.栗拾い

「この、この、なのです!」

「お仕置きだべ~?」

タマとポチが倒した 狂乱歩樹(マッド・トレント) の死骸をテシテシと蹴っている。

「むぅ?」

いつもの二人らしくない行動に、ミーアが戸惑い顔だ。

「二人とも、死体蹴りは感心しませんよ」

「あい~」

「はいなのです」

リザに窘められた二人が、しょぼんと肩を落とす。

「ポチちゃん、タマちゃん、何があったの?」

「アイツが酷い~?」

「戦闘中にチクチク痛いのを、いっぱい落としてきたのです!」

ルルに優しく尋ねられた二人が、ルルの胸にぐりぐりと頭を擦りつけながら訴える。

「ちくちく?」

「ああ、なんだ。栗じゃない!」

ミーアが首を傾げ、アリサが「ちくちく」の正体を見つけて破顔する。

「栗違う~?」

「そうなのです! 栗さんはこんなに意地悪じゃないのですよ!」

「だから、 毬栗(いがぐり) なんだってば。外側の 毬(いが) をこうやって――」

アリサが両方の靴で器用に毬を踏んで、毬栗を剥いてみせた。

「あ! 栗のヒトなのです!」

「あんびりばぼ~」

ポチとタマがそれを見て目を輝かせる。

セーリュー市では見かけなかったから、 毬(いが) を取った後の栗しか見た事がなかったようだ。

「二人もやってみそ」

「あい」

「はいなのです! ポチは栗剥きのプロになるのですよ!」

この場合は毬剥きではないだろうか。

心の中でツッコミを入れている間に、タマとポチが甲冑に包まれた足で毬を剥く。

たまに加減を間違えて、栗まで破壊して悲鳴を上げていた。

「やる」

「イエス・ミーア。我らも参加だと告げます」

「ルル、私達も一緒にやりましょう」

「はい、リザさん」

他の子達も参加して、栗の収穫作業を楽しむ。

収穫を終えた栗は、半分を栗ご飯の材料に、残り半分はお湯で茹でてオヤツにしよう。

「さっそく食べましょう!」

「あい!」

「はいなのです!」

茹でた栗を、真ん中で二つに割って匙を付ける。

「匙で栗の実をほじくって食べてごらん」

「ほじほじ~」

「美味っ、とってもとってもデリンジャラスなのです!」

一口食べた子供達が笑顔になる。

栗は食べた事があるはずだけど、取れたての栗を茹でたのは格別に美味しいものだ。

皆がほじほじと一心不乱に食べる。

茹でた栗って、カニと同じくらい無口になるよね。

オレも一つ取って食べてみた。

ほくほくして甘い。迷宮都市は常夏だけど、ここだけ秋になったみたいだ。

「おみや~」

「ご主人様とポチ達からのお土産なのです」

後日、孤児院へのお土産に、たくさん取れた栗を届けた。

「おっきなドングリ」

「木の実より、肉の方が良かった」

子供達にはちょっと不評だ。

「待って~」

「そうなのです! ポチも肉は好きでとっても幸せで――」

「ポチ、本題~」

「そうだったのです。ポチとした事が、うっかりさんだったのですよ」

「なんくるないさ~」

思わず「肉愛」にハマって我を忘れたポチだったが、すぐにタマに軌道修正されて事なきを得た。

「――というわけで、栗さんもとっても美味しいのですよ!」

ポチが栗の美味しさを熱弁する間に、ルルと一緒に厨房で栗を茹でて戻ってきた。

それを子供達に配ると、すぐに子供達も栗の美味しさの虜になる。

「美味しかった」

「もっと食べたい」

「はいなのです。また、迷宮に行ったらお土産に持って帰ってくるのですよ」

子供達のリクエストにポチが安請け合いをしている。

まあ、次の狩り場にはいないけど、迷宮別荘からは近いし、お土産用に寄るのもいいだろう。

「あっ!」

「男子、うるさい!」

「どした~?」

「ケンカはだめなのですよ!」

「ケンカなんてしてないって、それより、これ! 見た事あるぞ!」

孤児の一人が立ち上がって主張した。

狂乱歩樹(マッド・トレント) はそんなに強くなかったし、迷宮都市の市場にも栗が流通しているのかな?

「市場?」

「違う! 貴族街近くの森だよ!」

蔦の館の近くの森の事だろう。

あのへんは落ちている木の実を取ってもいいはずだから、皆で栗拾いに行くのもいいかもね。

「どこ~?」

「たしかこっちなんだけどな」

孤児院の子達がポチやタマと一緒に栗拾いに向かったので、空間魔法の「 遠見(クレアボヤンス) 」と「 遠耳(クレアヒヤリス) 」で様子を覗っている。

アリサが一緒なら心配ないんだけど、今は新しい魔法の練習に熱中しているので無理は言えない。

「どっちから来たか忘れちゃいそうなのです」

あの森はエルフの「 迷いの森(リターン・ホーム) 」の魔法が掛かっているからね。

まあ、迷っても普通に歩いていれば、魔法の効果で外に出られるはずだ。

「ジャリん子ども、大勢で何しに来やがったです」

子供達の前に現れたのは、「蔦の館」の管理人である 家妖精(ブラウニー) のレリリルだ。

「あー! 森の奥にいる偉そうな子だ」

「なあなあ、栗の木ってどっち」

子供達が物怖じせずに尋ねる。

「 れりりりる(・・・・・) なのです」

「おひさ~」

ポチとタマが子供達の中から手を振る。

「ミサナリーア様の下僕どもじゃねぇですか。栗を拾うのはいいけど、ちゃんと虫食いのない美味しい栗をミサナリーア様に献上するでやがりますよ」

「「「はーい」」」

レリリルがそう言いながら、栗の木のある場所に案内してあげていた。

口は悪いけど、良い子なんだよね。

「いっぱいあるのです!」

落ちている 毬栗(イガグリ) は、ぱっくりと割れて栗の実が顔を覗かせている。

「こうやって剥くのですよ」

「れっつとらい~?」

ポチとタマが毬の剥き方を実演する。

「痛っ」

「ちくちくする」

子供達がマネをしようとして、痛そうに飛び退いた。

なぜならば――。

「裸足はダメ~」

「そうなのです! 足の裏を怪我しちゃうのですよ」

「今日は森の中だから履いてこなかったぞ」

「森の中に履いていったら汚れちゃうもんね」

汚れたら洗えば良いと思うのだが、孤児院の先生あたりに汚さないように言い含められているんだと思う。

「靴がいるなら言えよー」

「ごみん~」

「そうなのです! ポチの靴を貸してあげるのですよ!」

「えー、小さくて合わないんじゃないか?」

「あたしにはぶかぶか~」

「大丈夫なのです! ポチの靴はじどーなのですよ!」

「タマのもていきょーするる~」

ポチに促され、男の子がポチの靴を、女の子がタマの靴を履いた。

「うわぅ、きゅってなったよ! きゅって!」

「げげげっ、靴が勝手に動いたぞ」

靴を履いた子供達が驚いて仰け反った。

二人の靴はエルフの里で作ってもらった特別製で、サイズの自動調整機能が付いているのだ。

「それならイガイガも怖くないのです!」

「試してみて~」

「お、おう。――おっ、意外に簡単だな」

「わあ、あたしにも取れたよ」

二人に促された子供達が、毬を剥いて栗を取り出す。

「おい、代われよー」

「あたしもやりたい」

「まだ、俺がやってるだろ!」

「ちょっと、引っ張っちゃやだ」

面白そうに見えたのか、他の子達も我先にと群がった。

「ケンカはダメ~」

「順番、順番なのですよ!」

タマとポチが仲裁し、一人二回ずつ順番にやるという事に決まったようだ。

賑やかな栗拾いを見守りながら、皆が帰ってきた時に振る舞う栗ご飯をルルと一緒に作る。

腹ぺこな子供達には秋を感じる山菜の天ぷらでも付けてやろう。

「たらりま~」

「ただいまなさい、なのです!」

スカートを篭代わりに、いっぱいの栗を持った子供達が満面の笑顔で帰ってきた。

「楽しかったかい?」

「あい~」

「はいなのです!」

「ご飯ができましたよ~。二人とも手を洗ってらっしゃい」

「あい!」

「だっしゅなのです!」

涎を垂らさんばかりのタマとポチが手を洗いに洗面所に駆けていく。

さて、今日の夕飯はタマとポチのお話を聞かせてもらおうかな?