軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18-26.流れ星(3)

サトゥーです。パンデミックを元にしたフィクションは嫌いじゃないですが、多くのパニックもの映画と同じで、リアルで体験したいとは思えません。リアルは平和が一番ですよね。

まだ焼かれていない遺体がある場所に向かう。

「遺体を調べさせてくれ」

「ダ、ダメだ。ワシの孫は誰にも触らせん」

「もう、ゆっくり眠らせてやっておくれ」

遺体の提供は残念ながら得られなかった。

火葬を担当していた兵士が、強制的に提供させようかと尋ねてきたが、それはかわいそうなので同意を得られるまで根気よくやろうと思う。

――そうだ。

オレは術理魔法の「 透視(スルーアイ) 」で遺体の内部を調べる。

白い糸?

無数の菌糸のような白い糸が内臓の中にびっしりと生えている。

なんだコレは?

これが患者の死亡する原因みたいだ。

なんとかしてサンプルを採取したいんだけど――。

もう一度、奇病でマップ検索してみる。

「――いた」

オレは火葬場を離れ、近くの森に駆け込む。

そこには内臓を食い散らされた鹿がいる。

食事を邪魔された熊が咆哮を上げて襲いかかってきたので、その勢いを利用して森の向こうへ投げ飛ばす。

頭を振って立ち上がった熊がなおも向かってきそうだったので、威圧スキルを全力で叩き付けて追い払った。

一応、あの熊にもマーカーを付けておこう。

「さてと――」

食い残しの腸を手に取り、ナイフでカットして断面を確認する。

そこにはさっき魔法で確認したのと同じ白い菌糸がびっしりと生えていた。

この病は野生の獣も媒介にするようだ。

オレは菌糸を見つめ、AR表示された説明を読む。

「……『奇病菌糸?』」

ハテナ付きって、不確定名かよ!

菌糸から正確な病名が分かるかと思ったのだが……そこまで考えて嫌な予想が脳裏を過った。

「まさか、今まで類似する病気がなかった新種か?!」

オレは森を巡って菌糸のサンプルを試験管に集め、ストレージに収納していく。念のため、血液も採取する。

まさか、血管の中にまで菌糸が生えているとは思わなかった。

「もしかして、この獣肉を食ったのが原因――なわけないか」

解体して内臓がこんな風になっていたら、よほど飢えていないかぎり口にしようとは思わないはずだ。

「――問題は何が原因か、だな」

この菌糸を媒介した胞子か何かがあるはず。

だが、この先の調査をするには専門家の知識が必要そうだ。

オレは空間魔法の「遠話」でアーゼさんに相談してみた。

『――体内に菌糸が生える病気?』

『ええ、知り合いの国で蔓延していて、治療方法を相談できる方を紹介していただけませんか?』

『それなら、ブライナンのムーゼが一番詳しいわ』

『分かりました。ありがとうございます』

ムーゼさんとは面識らしい面識がないから、研究でいつも話しているケーゼさんに間を取り持ってもらってから、ドライアドに「妖精の道」を開いてもらってサンプルを届けた。

「見た事がない菌糸だな?」

バイオ系の研究所にありそうな防護服を着込んだムーゼさんが、菌糸のサンプルをピンセットで摘まむ。

それを実験用のウジ虫の背中を開いて植え付けた。

「――これはっ」

菌糸があっという間に増殖し、ウジ虫は体液を吐いて絶命した。

それは他の実験動物でも同じで、特に内臓や血管で栄養を横取りしながら増殖する寄生生命体である事がすぐに分かった。

「治療薬は作れそうですか?」

「まずは既存の薬を順番に試してみよう。実験中に火に弱いのは分かったが、生き物の体内で使う訳にはいかないからな」

コンコンと音がして、透明な壁の向こうでケーゼさんが手を振っている。

『もう、昼だぞ。一緒にカレーでも喰おう』

「自分はすぐに食事を忘れるくせに――」

苦笑いするムーゼさんと一緒に、ケーゼさんが持ってきてくれたボルエナン伝来のオーソドックスなカレーを食べる。

ちゃんとサラダも付いていて栄養面もバッチリだ。

見たことのない野菜も多いけど、シャキシャキしていて実に美味い。

「ムーゼ様、治療薬のサンプルをご用意しておきました」

「ご苦労。運び込むのは私がやるから、そこに置いておいてくれ」

研究者らしきエルフが押してきたカートの上には、50種類くらいの治療薬が並んでいる。

これだけあれば、一つくらいは効くモノがありそうだ。

「行くぞ、サトゥー」

「まったく、食後のお茶くらいゆっくり飲めばいいのに」

ぼやくケーゼさんにカレーのお礼を言って、ムーゼさんの後に続く。

「――うわっ」

オレ達が中に入った途端、シャーレの上に置かれていた遺体から、菌糸が一斉に伸びて襲いかかってきた。

―― 防護陣(シェルター) 。

下級魔法の「防護陣」でムーゼさんごと守る。

「サトゥー、魔法が溶かされているぞ!」

「――げっ」

菌糸の先端部分が触れている障壁の表面に侵食されたような凹みが生じている。

――魔法中和か?

オレは障壁の外側に「自在剣」を生み出し、菌糸をザクザクと切断して細切れにしていく。最後は「理力の手」で集めて一纏めにしたら、ムーゼさんの精霊魔法で一気に焼却した。

『大丈夫か、ムーゼ! 何があった?!』

ケーゼさんが外からバンバンと透明な壁を叩いている。

「こっちは無事だ。菌糸はカレーが好物らしい」

ムーゼさんは冗談で言っているんだろうけど、さっきの急変を見る限りだとあながち間違ってはいない気もする。

続きの実験は外でカレーの匂いを完全に消臭してから行った。

「――よりによってこの薬か」

ムーゼさんが苦々しげな顔で言う。

「何の治療薬ですか?」

もしかして、水虫の薬とかかな?

「治療薬ではない。世界樹の汚染樹液を中和する為の魔法薬だ」

「汚染樹液というと――」

「 魔海月(エビル・ジェリー) が産卵した卵を保護する為の体液だ」

ムーゼさんの口から予想外の単語が飛び出てきた。

虚空とは縁もゆかりもないノロォーク王国に、どうして魔海月――クラゲの体液に類似したモノが?

「理由は分からんが、これなら地下倉庫に十分な貯蔵があるから、必要なだけもっていけ。量産するのもたやすい。足りなければ増産してやる」

「人族に処方しても大丈夫でしょうか?」

「問題ない」

ムーゼさんが自信ありげに保証した。

「世界樹に処方する為の薬だ。事前に森の植物や動物で実験してある。理論的には 魔海月(エビル・ジェリー) 以外にはなんの影響もない。濃度に気をつければ問題なく使えるはずだ」

処方する為のデータシートを受け取り、一通り目を通す。

魔海月(エビル・ジェリー) の因子だけを選択的に滅していく特殊な魔法薬らしい。これなら確かに問題なさそうだ。

念のため、希望者を募って臨床実験をしてから処方しよう。

『ご主人様! 治ったはずの人が苦しみだしたわ!』

アリサから 無限遠話(ワールド・フォン) で急報が入った。

「患者は?!」

オレはムーゼさんから件の魔法薬を樽で受け取り、帰還転移を繰り返してノロォーク王国へと戻ってきた。

「こっちよ!」

アリサに先導されて患者の所に向かう。

AR表示によると「奇病」が再発している。マップ検索で「奇病菌糸」を調べたら、予想通り患者の体内で再繁殖していた。

「最初の患者さん以外は皆、多かれ少なかれ症状が再発したわ」

最初の一人というと、虎の子の下級エリクサーを処方した少年か。

「先生、うちの人は治ったんじゃないんですか?」

「おばさん、ここは先生に任せて」

縋り付いてくる患者の家族をルルが引き離し、患者の前にスペースを作ってくれた。

残り少ない万能薬を飲ませると、患者の「奇病」が治る。

「やはり、 いる(・・) か――」

万能薬で癒やした患者を、奇病菌糸でマップ検索したら、微少な量だが体内に残存していた。

たぶん、さっきもこの状態から増殖して奇病が再発したのだろう。

「先生、うちの人は治っていないんですか?」

「一時的に症状を抑えているだけだ。治療するにはこちらの薬が必要なのだが、まだ治験が終わっていない――」

「先生、使ってくれ」

そう言ったのは、万能薬を投与して意識が戻ったばかりの患者自身だ。

「これは治験が終わっていない。絶対に安全とは言えないのだ」

「構わねぇ。本来ならとっくに死んでる命だ。あっちのベッドで寝てる息子を生かす為なら、俺の命くらいくれてやる」

「あんた!」

男前な事を言い出した患者に、奥さんが縋り付く。

「ごしゅ――ヒポクラテス先生、この人の男気に応えてあげましょ」

本当に投与していいのか迷っていたオレの背中をアリサが押してくれた。

「本当にいいんだな?」

「やってくれ。どうせ、このままじゃジリ貧だ。だろ?」

「――そうだな」

万能薬が尽きるのは時間の問題だ。

エルフといえど、万能薬の生産には時間が掛かるし、無限に作れるモノでもない。

「投与する。もし拒絶反応が起きても、ちゃんと助けるから安心してくれ」

勇敢な彼を助ける為になら、残り数本の下級エリクサーを一本使っても構わない。

「信じているぜ、先生」

オレから受け取った件の魔法薬を、男性は 躊躇(ちゅうちょ) なく飲み干した。

「なんだか腹がぽかぽかする――」

暢気な事を口走っていた男性が、急に言葉を詰まらせて苦悶の表情になった。

「――うがぁがががががががががっ」

「あ、あんたぁあああああ!」

オレはストレージから下級エリクサーを取り出しつつ、術理魔法の「 透視(スルーアイ) 」で体内を確認した。

「――ご主人様っ」

「大丈夫。菌糸が抵抗しているだけだ」

菌糸が身体を突き破って魔法薬から逃げようとしているが、逃げる端から崩壊して無害化していっている。

オレは男性に回復魔法を掛け、麻酔薬を無理矢理流し込む。

誤嚥しないように「理力の手」でサポートしておく。透視といい魔法は便利だね。

「痛みが引いてきた――」

麻酔が効いたのか、男性が眠りに就いた。

完全駆除までは三〇分ほど掛かったが、ちゃんと完治できたようだ。

次からは駆除用の魔法薬を飲ませる時に麻酔薬と体力回復薬も続けて飲ませるようにしよう。

できれば経過観察をしてから、他の患者に投与したいんだけど、事は一刻を争う。

こうしている間にも昏睡しそうな患者が多い。

「次――」

男性の叫びを聞かれていたせいか、次の被験者がなかなか決まらなかったが、ガテン系のいなせな男性が名乗り出てくれたお陰で無痛で処方できる事が証明でき、その後はスムーズに治療を進める事ができた。

治療は昼夜を徹して行われ、噂を聞きつけてやってくる患者達を次々と癒やす。

それと並行して、病原と覚しき獣肉の摂取をしないようノロモスの街の衛兵達に広めてもらった。

新規の患者が落ち着いた頃、ようやく王都から使者がやってきた。

「ヒポクラテス医師、貴公の功績を陛下がお認めになられ、王室の次席医務官として抜擢すると仰せだぞ」

「それは謹んでご辞退させていただこう」

そんな面倒な地位なんていりません。

「陛下のご厚意を無にするとは、なんと無礼な!」

いかにも貴族な感じの使者が激昂したが、それよりも優先する事がある。

「ここに治療手順があります。医師や神官を集めて組織的に処方してください。それと、麻酔薬が足りないので、王国内の錬金術士や薬師を総動員して用意を」

オレは彼をスルーして、事務方らしき有能そうな随員に話しかける。

王都にも処方箋や治療薬を送ったんだけど、イマイチ動きが鈍いんだよね。

「し、しかし――」

「国民を助けられるのはあなただけですわ。英雄になるのは今です」

アリサがスッと現れて、随員に囁く。

「分かりました。陛下に直訴して直ちに取りかかります」

「お前、何を言って――」

随員がやる気に満ちた顔でオレから書類を受け取り、使者を強引に説得して王都へと戻っていった。

「もしかして――」

アリサが唇に人差し指を当てて下手くそなウィンクをした。

たぶんだけど、アリサはスキルとしては失った精神魔法を使って彼を心変わりさせてくれたのだろう。

「この後はどうするの?」

「ここは医師に任せて、病原を追うよ」

オレは医師に後を託して、仲間達と共に出発した。

案内役は最初にクラゲ除去薬を使ってくれた男性とその息子だ。

「半月くらい前から、獣がやたらと山を下りてくるようになったんだ」

ゴフェーという肉好きの少年が言う。

彼や彼の村の人々は最初期の患者の中で生き延びていた。

たぶん、菌糸の勢力が弱い個体を食べて抗体を獲得していたんじゃないかと思う。

オレ達が向かっているのは彼らの村だ。

マップ検索でも、村から二つほど向こうの山奥に、菌糸がびっしりと集まっている場所がある。

たぶん、山の獣や植物に寄生して大繁殖しているのだろう。

「ここが君達の村か」

「そうさ。今は皆でノロモスの街に行っちゃって、村には誰もいないけどね」

ゴフェー君の父親に山の獣の分布や、どのあたりで異変が起こったか、などの情報を確認し、村で別れる。

「ここで待っていてくれ。少し森を見てくる」

「それなら俺が案内する。これでも猟師の端くれだ。役に立つぜ」

「いや、不要だ」

「そうです。ここからは私達が――」

意気込むリザには悪いけど、ここから先は本当に危険なので俺一人で行く。

「 飛翔靴(フライング・ブーツ) で空から確認に行くだけだ。お前達には彼らの護衛を頼む」

「承知いたしました」

リザが悔しさを押し殺して首肯してくれた。

オレは飛翔靴を履いたていで、天駆で空に舞い上がる。

「護衛」

「狙撃は任せてください」

「汚物は消毒よ!」

後ろから、シルフに抱えられたミーア、ルル、アリサの三人が追いついてきた。

「うわっ! なんじゃありゃ!」

「むぅ、ばっちい」

「山が一面、真っ白ですね」

アリサが驚き、ミーアが顔をしかめ、ルルが目の前の光景を端的に表した。

山奥の谷を中心に、菌糸が大繁殖して山を白く染めている。

「斜面」

「何かに抉られたような後ね。隕石でも落ちたのかしら?」

「斜面の線の延長上に、大きな窪みができています」

「クレーターっぽいね。本当に隕石でも落ちたのか――」

――サトゥー! 我らはやったぞ。

脳裏にハイエルフのケーゼさんの言葉がフラッシュバックした。

彼らが虚空専用の疑似精霊ブルグトム・アイで世界樹を狙ってきた数百ものクラゲを一掃したのはいつの事だ。

なぜ、菌糸の除去に、クラゲ汚染液除去用の魔法薬が効く。

「くらげ?」

「 本当(ほんと) ね。クレーターの真ん中の菌糸のドームがクラゲみたいに見えるわ」

アリサがクレーターを指さす。

たしかにクラゲ――正確には世界樹に寄生した 魔海月(エビル・ジェリー) に似ている。

「スカスカ」

「言われてみれば中身はないわね。外側だけなのかしら?」

クラゲドームの隙間から、炭化したように真っ黒の塊が見えた。

AR表示によると、魔海月命核というモノらしい。名前からして、クラゲ―― 魔海月(エビル・ジェリー) 由来の存在だろう。

「なんだか、再生しているように見えませんか?」

クラゲもどきの周辺には夥しい数の動物の骨が転がっている。

これは単なる想像だけど――奴は野生動物達に自分を喰らわせて寄生し、動物の遺体を苗床に増殖して大気圏突入で失った身体を再生していたのかもしれない。

「ご主人様、どうする?」

「焼くよ」

「綺麗に焼かないと拡散しそうよね」

「大丈夫だよ」

オレはストレージから、秘密兵器を取り出す。

「カレーの匂い?」

「そうさ」

ヤツらの嗅覚は鋭いらしく、すでに菌糸がオレ達の足下に集まってきている。すごい速さだ。

オレは風魔法を操って、カレーの香りを周囲の山々に漂わせる。

「うわっ、集まってきた」

「不思議」

「あの白いのはカレーが好きなんでしょうか?」

オレも不思議だ。

「獣」

「けっこういるわね」

白い領域の外側から、野性動物達が走ってくる。

彼らも犠牲者だ。クラゲと一緒に焼き払うのはしのびない。

オレは投擲スキルと布で作った簡易スリングを駆使して、汚染液除去薬を投擲し、動物達を奇病から救う。死にそうな個体は同様の方法で水増し魔法薬を投与した。

「シルフ、上昇」

「「ご主人様!」」

アリサとルルに腕を掴まれ、シルフによってより高空へ持ち上げられる。

下を見てみると、菌糸が集まって触手のようになってこちらを捕らえようとしていた。

ルルが魔法銃で菌糸を牽制し、アリサが火魔法でなぎ払う。

「もう、油断しないでよ」

「ごめんごめん」

オレはアリサ達に詫び、リザに事前連絡をする。

『リザ、今から病原を焼き払う。山の向こうに炎が見えるが、危険はないから安心しろ』

『承知いたしました。ご武運を』

十分に菌糸が集まったのを確認してから、中級攻撃魔法の「 火炎嵐(ファイア・ストーム) 」で山ごと焼き払った。

「うっひゃあ、ギルド長のインフェルノよりもエグい火力よね~」

「ん、凶悪」

「ご主人様、凄いです!」

火傷しそうなほど熱風が凄いので、風魔法で防ぐ。

マップ検索で、取りこぼしを捜し、順番に小火弾で丹念に焼いて回った。

その甲斐あってか、その日のうちにノロォーク王国から、奇病の原因となる菌糸を殲滅する事ができた。

街への報告はゴフェー少年親子に任せ、オレ達は王都や衛星都市に残る罹患者達をこっそりと癒して回り、ついでに汚染食料――主に干し肉だった――を回収して、奇病騒動を終結する事ができた。

最後に立ち寄った仮設病院では、医師と司祭に泣いて礼を言われ、助かった患者やその家族から救世主のごとく扱われてしまった。

お祝いの宴はノロモスの街の守護が食料庫を開いて盛大に祝ってくれたので、街を巻き込んだお祭り騒ぎになった。

「びみびみ~」

「お肉さんが少ないけど、どの料理もとっても美味しいのです」

今回の媒介物質が獣肉だったせいで、止める間もなく関係ない肉まで焼却処分されちゃったんだよね。

「ご主人様、チーズを頂いてきました」

「ここのチーズはサガ帝国でも有名なんだってさ」

それは期待が高まる。

せっかくだし、年代物の良いワインを開けよう。

その日は泣きながら患者と肩を組んで酒を浴びる医師に巻き込まれて、全身酒まみれになってしまったが、翌朝にはリザや街の人達が用意してくれた湯でさっぱりする事ができた。

こうして、流れ星から始まった一連の騒動は終わりを告げたのだ。

「サトゥー殿! ヒポクラテス医師がやってくれたのじゃ!」

国許から連絡が来たノロォーク王国のミーティア王女から、国王からの礼だと言ってヒポクラテスを紹介した功績を讃えて、感状と勲章を渡された。仲間達の分が無かったので、あとでお手製の勲章を作って配ろうと思う。

なお、疫病で荒廃したノロォーク王国の再建には、設立して間もないエチゴヤ商会を介して復興支援しておいたので、そのうちなんとかなるだろう。

もちろん、発端となったケーゼさんには事件の概要を話し、地上へ落下する個体があったら、最後まで後始末をするように約束してもらった。

ノロォーク王国への賠償は当事者間の話なのでオレはよく知らない。

「よーし、今日から後半ターン! 目指すは 階層の主(フロア・マスター) 討伐よ!」

アリサの元気な声に背を押され、オレ達は今日もセリビーラの迷宮へと足を向けた。