軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17-12.変わりゆく世界

サトゥーです。生活しているとなかなか気付きませんが、変化がないと思っている地元でも、10年前の写真と比較して驚く事はよくあります。小さな変化の連続だと、なかなか気付かないものなんですね。

「平和ね~」

「ええ、平和が一番です」

美しい花々の咲き乱れる草原を眺めながら、アーゼさんとお茶を楽しむ。

ボルエナンの森のハイエルフ、愛しのアーゼさんは今日も可憐で一緒にいるだけで癒やされる。

「数ヶ月前までの忙しさが嘘みたいです」

二度目の神界訪問から、早半年が過ぎた。

半月で対神魔法用の障壁発生装置や各種対応の実験を完了し、続く半月で量産を済ませて世界中の紫塔周辺に設置したのに、あれから危機的状況は何一つ起こらずに平和な日々が続いている。

オレが破壊した塔も、二回目の神界訪問から戻った時には塚として復活しており、今では他の塔と変わらない高さになった。

オレ達が攻略した時は最高30階までだった塔も、何箇所かは50階層まで伸びていた。

「サトゥー、アメ、オクレ」

「アメ、ウメー」

羽妖精達が飴を貰いに飛んできた。

大量にストックしてある飴を取り出して、ムードクラッシャー達の矛先を逸らす。

「アレレ? ナナ、イナイー?」

「ナナ、ドコ?」

「ナナは修業中だから今日は来てないんだ」

「フーン」

「ソッカー」

いつもはナナに構われすぎるのを嫌がる羽妖精達も、ナナが全く顔を見せないのは寂しいようだ。

「ミーア達は今日も塔なの? 少し頑張りすぎじゃないかしら?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと休息は取らせていますから」

心優しいアーゼさんに、心配無用だと返す。

黄金メンバーは塔の上層部の間引きを兼ねて修業中、白銀メンバーは中層部の間引きと上層部へのチャレンジを進めている。

初期はセーラの神聖魔法による補助がないと一戦一戦の消耗度が高くて効率が悪かったそうだが、一ヶ月目くらいから不自然に紫塔の神様ゲージが充填されて戦闘が楽になり、迷宮で戦うのよりも効率的になっていったのだ。

今になって思えば、魔神によるチュートリアル的な神様ゲージ爆上げタイムだったんだと思う。

最初の頃はオレかアリサの転移で塔の出入りをしていたが、二ヶ月目くらいからは、エレベーターという名の転移装置が解放され、10階のボスを倒すと手に入る「紫紺の紋章」というアイテムでショートカットができるようになった。

今では定期的に仲間達のステータスをチェックして、フォローするくらいしか手出しをしていない。

「大丈夫ですよ、アーゼ様。みんな10日ごとにくつろぎに来ているじゃありませんか」

巫女ルーアさんがお茶のお代わりを注ぎながら言う。

迷宮の時と違って、今回は狩り尽くせないほど魔物がいるので、放置するとリザやアリサがどこまでもレベル上げを続けようとするので、定期的に森林浴でリフレッシュさせているのだ。

「もう少し休みを増やした方がいい。あやつらは少し頑張りすぎだ」

「いーじゃないか、シーヤ。若いうちは限界まで頑張るくらいの方が伸びるのさ」

「ポーアは雑すぎる」

いつの間にかエルフ師匠達がお茶の席に交ざっていた。

「それでポチ達はレベル99までいったのか?」

「ははは、さすがにまだ無理ですよ」

黄金メンバーは半年の訓練でレベル90台後半、白銀メンバーはレベル70前後まで鍛えられている。

フオンと音がして転移ゲートが開き、今話題に上がった仲間達が現れた。

「ただいまー!」

「たらま~」

「ただいまなさい、なのです!」

賑やかな仲間達の帰還に、アーゼさんが優しく「おかえりなさい」と言って歓迎する。

「ご主人様、見て見て! リザさんとヒカルっち!」

――おおっ。

「レベル99到達おめでとう!」

「ありがとうございます、ご主人様」

「えへへー、ありがとう」

他の黄金メンバーも、ミーアのレベル96を除けば、全員レベル98になっている。

「先に言うけど、無茶はしてないわよ。サガ帝国の帝都近傍にある塔が70階層まで増えたの。お陰で強い魔物が増えて効率良かったわ」

「塔の上限は50だと思い込んでいたけど、この調子だと99階や100階まで伸びるかもね」

アリサが急激なレベルアップの理由を、ヒカルがその先の予想を告げる。

空間魔法でチェックしたけど、今のところ他に51階層目以降ができた場所はない。

「今日のお土産は凄いわよ! A5のお肉も裸足で逃げ出す 魔竜古象(バハムート・マンモス) の霜降り肉なの!」

竜なのか象なのか微妙なネーミングの魔物からドロップした中にあったそうだが、アリサの「 格納庫(ガレージ) 」から取り出された肉は、見ただけで咥内に涎が溢れそうなほど美味しそうな肉だ。

これは気合いを入れて調理しなくてはいけない。

「 爆炎豚(バーニング・ピッグ) の アメングググ(・・・・・・) ・ミートもあるのです!」

「 熊海老(ベア・シュリンプ) も取ってきた~?」

タマとポチが格納庫の奥に飛び込んで、お勧めのドロップ品を運んできた。

どの肉も10キロ単位でドロップするらしく、十分な量がある。

ポチが「アメングググ」と言い間違えたのは「アメージング」だろうか?

どの肉も瘴気が染みこんでいたので、精霊光を全開にして瘴気を払っておく。

これは迷宮産のお肉も一緒なので、塔固有の問題という訳ではない。

「ネーアさん達と下ごしらえしてきます」

「ルル様、私達もお手伝いします」

「ありがとう。皆さんが手伝ってくれたらすごく助かります」

ルルの周りに 家妖精(ブラウニー) 達が集まってくる。

ルルが術理魔法の「 自走する板(フローティング・ボード) 」で食材を持ち上げて階下の厨房へと運ぶ。すごい量だけど、料理人エルフのネーアさん達や 家妖精(ブラウニー) 達が一緒なら問題ないだろう。

「マスター、他にも宝物がいっぱいだと告げます」

「楽器」

「へー、珍しいな」

ナナが運び出した宝物の中から、ミーアが楽器類を取り出した。

塔の宝箱から見つかるのは、塔の攻略に役に立つ武具や装備品、それと即物的な貨幣や宝石ばかりで、これまでの探索で楽器が見つかったのは初めてだ。

「それも装備品みたいよ。『呪曲および呪歌の効果が10%上がる』って詳細情報にあったわ」

ヒカルが鑑定結果を教えてくれる。

「呪歌なんてあるのか?」

「うん、王様になる前に一回だけ演奏魔術を使う吟遊詩人に会った事があるんだけど、演奏魔術で奏でる旋律を呪曲っていうらしいわ」

呪文の曲や歌バージョンのようだ。

マップ検索してみたけど、演奏魔術というスキルを持つ人はいなかった。

たぶん、失われた技術体系なのだろう。

「コアに頼んでスキル宝珠を作ってもらおうか?」

「いらない。音は楽しむもの」

ミーアがふるふると頭を横に振る。

鞭のようにしなったツインテールの髪が、ナナの胸をぺしぺしと叩いた。

「ミーア、ツインテールアタックが微妙に痛いと抗議します」

「ん、ごめ」

ミーアが両手で自分の髪を掴んで短く詫びる。

「ご主人様、この辺の武器はどうする? 私達やカリナたん達が使うには弱いし、エチゴヤ商会に委託してシガ王国の騎士団にでも売却する?」

「そうだね。危ない武器や道具は除外するとして、問題ないモノは売ってしまおう」

王都の近くに効率的なレベル上げができる塔ができた事で、王都に拠点がある騎士団の多くが交代制で塔の中層部を攻略している。

騎士団構成員の多くは魔剣などの装備を持たない者が多いので、アリサ達が回収してきた上層階でドロップした武具はきっと喜ばれる事だろう。

「――おっと、カリナたん達からお迎え要請が来たから回収してくるわ」

「オレが行ってこようか?」

「んー、リクエストされたのがわたしだから、わたしが行くわ」

オレがユニット配置した方が楽だと思うのだが、なぜか白銀メンバーからの復路での回収リクエストがない。往路は普通に送っているのに不思議な話だ。

「そこは効率じゃなくて、デリカシーの問題よ」

納得いかないオレの顔を見たヒカルが、分かりやすいヒントを教えてくれた。

なるほど、迷宮で汚れた状態で異性に会いたくないという事か。

ゼナさんやセーラは生活魔法を覚えているから、迷宮で問題なく身だしなみを整える事ができると思うのだが、それを口にするとヒカルに呆れられるような気がしたので口にしないでおいた。

「そういえば、サガ帝国方面に行ったリーングランデさん達から、何か連絡があった?」

「ああ、手紙が来たよ」

リーングランデ嬢やメリーエスト皇妹――今度のサガ帝国の新皇帝はメリーエスト嬢の叔母にあたるそうなので、メリーエスト皇姪と呼ぶべきかもしれない――は、今サガ帝国にある塔を攻略している。

もちろん、二人だけではなく、軽戦士のルススとフィフィや弓兵ウィヤーリィ、神官ロレイヤといった勇者ハヤトの元従者達を集めたチームを結成してだ。

サガ帝国の有力者から熱烈な復職依頼があるので、それを避けるために二人以外のメンバーも建前上はオレのブライダル・ナイツの構成員として派遣している。

なお、彼女達にはエチゴヤ商会経由で、白銀メンバーの最新装備と同じ仕様の武具を供与しておいた。

「ふーん、新しい前衛が増えたのね。リーングランデさんがすごく褒めてる」

「ああ、ブルーメさんか」

ブルーメさんはシガ八剣筆頭のジュレバーグ氏の母親にあたる老婦人だ。

彼女は先々代勇者の従者をしていた人で、クボォーク王国の迷宮遺跡で出会った当初はレベル53の魔法剣士だった。

「勇者の少年達も元気だって」

リーングランデ嬢からの手紙には、たまに勇者ユウキや勇者セイギの近況なんかも書かれてあった。

どちらも、帝国の都市部近郊の塔を攻略しつつ、立ち寄った都市や街で復興に邁進する人々を慰撫しているそうだ。

「そういえばブライダル・ナイツの残りメンバーは?」

「メネア王女は迷宮都市セリビーラの探索者学校で基礎を学んでいるし、残りは非戦闘員ばかりだから騎士団駐屯地で留守番をしてもらっているよ」

メネア王女にはエリーナや新人ちゃんを護衛に付けてある。

たまに、王都まで遠征にきた「ぺんどら」達やブライダル・ナイツ加入希望の探索者育成校のメンバーなんかと一緒に、塔の下層階で共同訓練をしているそうだ。

ムーノ侯爵領のブライトン市で太守代理をしているリナ嬢なんかの非常駐メンバーは、肩書きだけなので訓練には参加していない。

そういえば、前に見かけたハンマーの女性は淡雪姫本人だった。

なぜか、探索者育成校のメンバーに紛れていたので驚いた覚えがある。

最近届いたメネア王女からの手紙には、淡雪姫と仲良くなったと書かれてあった。

どういう経緯でタイプが違う二人が仲良くなったのか少し気になる。今度会った時にでも聞いてみよう。

「ただいまー」

オレが厨房でルルと一緒に調理をしていると、伝声管からアリサの声が響いた。

白銀メンバーを連れて戻ってきたのだろう。

オレは完成した料理の盛り付けをルルに頼み、白銀メンバーを出迎えるためにリビングへと戻った。

「アイアリーゼ様、無作法にも先触れも出さず、いきなりの来訪を失礼いたします」

「そんなにかしこまらなくていいのよ?」

おめかししたシスティーナ王女がアーゼさんに挨拶している。

システィーナ王女は国の大きなお祭りや儀式にでも出るかのような盛装だ。

彼女の横に陣取るセーラも清楚ながら気品溢れる豪奢な衣装に身を固め、一分の隙もないナチュラルメイクでいつも以上に美貌に磨きを掛けている。

ゼナさんとカリナ嬢は二人よりもおとなしめだが、孤島宮殿にいるときよりもおめかしをしているようだ。

「皆、気合いが入っているわね」

「そりゃそうよ。最大のライバルの前に出るんだもん。比べられるのが分かっているんだから、自分の手札は切れる限り切ってくるに決まっているじゃない」

ヒカルとアリサが小声でそんな話をしていた。

アーゼさんと他の子達を比べた事なんてなかったはずだけど、もしかしたら態度や視線に出ていたのかもしれない。一応、気を付けておこう。

「今日はどこの塔を攻略していたんですか?」

「貿易都市タルトゥミナの傍ですわ」

「途中でシガ八剣様達にお会いしました」

カリナ嬢とゼナさんが、その時の様子を教えてくれた。

彼女達が遭遇したシガ八剣達は、聖騎士達の育成を兼ねて中層階から上層階の間引きに来ていたそうだ。

「ヘイム大先生もいたのです?」

「ええ、いらしたわ。見事な指揮で危なげなく魔物を倒していたのですわ」

カリナ嬢の肩に飛び乗ったポチが尋ねる。

さっきまで厨房で味見戦士をしていたのに、大好きなカリナ嬢の匂いを嗅ぎつけて出迎えに来たようだ。

「指揮だけ~?」

「いいえ! 個人の武技も素晴らしいものがありましたわ!」

ポチと反対側の肩に乗ったタマがカリナ嬢に尋ねると、カリナ嬢は大げさな身振り手振りでヘイム氏の活躍を語る。

そのたびに、魔を宿した胸元が――。

「ぎる――」

最後まで言わせずに、いつの間にか傍らに現れていたミーアを抱き上げる。

危ない危ない。

あやうくカリナ嬢の胸元に視線が固定されるところだった。

「サトゥーさん」

ゼナさんがオレを呼ぶ。

カリナ嬢の胸元の揺れに目を奪われたのを怒られるのかと思ったけど違った。

「お願いがあるのですが――」

ゼナさんが請うたのは、勉強の為にエルフの風魔法使いと交流したいというお願いだった。

「それは構いませんが、そろそろ第二魔法を選んだ方がよくありませんか?」

レベル70台に入った事だし、風魔法や片手剣スキルなんかもスキル最大になっただろうから、変なスキルにポイントが流れる前に、風魔法の苦手を補う魔法系スキルを選ぶべきだと思う。

「それなら、アリサちゃんやミーア様に相談して決めてあります」

「何を選ばれたんですか?」

「召喚魔法と雷魔法です」

「二つですか?」

風魔法と相性のいい雷魔法は分かるけど、召喚魔法を選んだ理由がよく分からない。

「はい、召喚魔法は連絡や偵察に使おうと思っています」

「それはシスティーナ様のゴーレム達でもできる事では?」

「殿下のゴーレムは前衛の盾役ですし」

偵察中に拠点を奇襲されるとどうしても反応が遅れ、ゴーレム達の戦列を突破する魔物がいるのだとゼナさんが言う。

風魔法でも探索はできるが、塔の中には風魔法を攪乱する場所もあるので、それだけに頼るわけにはいかないそうだ。

「わかりました。そういう事であれば、今日中に召喚魔法と雷魔法の宝珠を用意させておきます」

真面目なゼナさんは一から修業すると言っていたが、彼女のレベルでスキルなしの状態から覚えるのはなかなか大変なので、宝珠を使う事を了承してもらった。

「マスター、頼まれていた宝珠を持ってきた」

「ありがとう、コア・ツー」

大人な姿のコア・ツーがオレに宝珠を手渡す。

彼女はデジマ島の「夢幻迷宮」最下層にある「 迷宮核(ダンジョン・コア) 」の端末体だ。

「マスター、本体コアが拗ねるので、たまには『 迷宮の主の部屋(ダンジョン・マスターズ・ルーム) 』に顔を出してほしい」

「コア・ツーと繋がっているんじゃないのか?」

「繋がっている。でも既に自我は別個に存在する」

「分かった。それなら、夕飯の後にでも顔を出すよ」

「マスターの配慮に感謝」

コア・ツーが頭を下げる。

「ご主人様、ご飯の用意ができたわよ――あら、コア・ツーじゃない。一緒に食べていくでしょ?」

「イエス・アリサ。本体コアに拗ねられそうだけど、ルルのご飯が優先」

二人と一緒に樹家の食堂へと向かう。

「サトゥー、シズカは来ないって」

「わかった」

オレの持つ異界の一つで暮らす魔王シズカは、ボルエナンの森に来たがらない。

引き篭もりタイプの彼女にとって、プライバシーが存在しないほど開放的なエルフの里の雰囲気は、ストレスを与えるモノなのだろう。

「サトゥー」

「ご主人様~?」

「こっちなのです!」

ミーア、タマ、ポチが大きく手を振ってオレを呼ぶ。

皆が囲む大きなテーブルの上には、 魔竜古象(バハムート・マンモス) の肉を使ったビーフシチューやステーキ、ハンバーグといった定番メニューに加え、肉質に合ったジンギスカンも用意してみた。

ハンバーグには「 爆炎豚(バーニング・ピッグ) 」の肉も使ってある。

こっちの肉は薄切りにしたモノを巻いて唐揚げにし、酢豚に投入してみた。

そのサイドには大きな「 熊海老(ベア・シュリンプ) 」を使ったエビチリやエビフライ、それからタマとリザにリクエストされた殻付きの素揚げが並んでいる。

「さあ、食べようか」

皆が席に着き、ビーフシチューの皿が配られたのを確認してアリサに合図する。

「いただきます!」

「「「いただきます」」」

アリサの号令で皆が手を合わせて異口同音に「いただきます」を合唱する。

手の短いタマとポチに肉を取り分けてやり、差別はいけないと寄ってきたアリサやミーアにも肉や野菜料理を取り分けてやる。

「でりしゃす~?」

「ビーフシチューも美味しいけど、やっぱりハンバーグ先生が一番強いのです」

「ポチ、視野狭窄はいけませんよ。ジンギスカンや酢豚も負けていません」

「海老の殻付き素揚げも強い~?」

「もちろんなのです。肉に貴賤はないのです。最強なのはハンバーグ先生だと言いたかっただけなのです」

獣娘達がいつものように和気藹々と肉談義をしている。

「やっぱり、カレーはとても美味しいですわ」

『カリナ殿、そのようにスプーンを振っては、カレーの雫が服に飛ぶぞ』

「ごめんなさい、ラカさん」

喜ぶカリナ嬢に「 知性ある魔法道具(インテリジェンス・アイテム) 」のラカが注意する。

鉄壁の防御力を誇る彼も、カレーの雫から服を守るのは嫌なようだ。

「この肉はカレーに入れても美味しいんじゃないかしら?」

「うむ、ビーフシチューに合う肉ならば、きっとカレーにも合うだろう」

「よっしゃ、それならあたしがネーアに頼んできてやるよ」

カリナ嬢の思いつきにエルフ師匠の二人が同意し、ポチの師匠であるポルトメーア嬢が、料理人エルフのネーアさんのいる厨房の方に走っていった。

「お肉も美味しいですけど、この野菜料理もとても繊細で美味しいです」

「ん、同意」

システィーナ王女の感想に、ミーアが頷く。

「そういえば、こっちの神官は肉類を食べてもいいのね」

「肉食を禁じる戒律がある神殿があるのですか?」

アリサの発言に、セーラが首を傾げる。

セーラはビーフシチューがお気に入りのようだ。

「エビチリが美味だと告げます」

「ちょっと辛いけど、癖になる甘辛さですよね」

ナナと巫女ルーアさんはエビチリが気に入ったらしい。

ナナにくっついていた羽妖精達も、彼女の皿から分けてもらったエビチリで身体をオレンジ色に染めている。

「ゼナさん、こっちのハンバーグも食べませんか? これはご主人様が焼いてくださったんですよ」

「サ、サトゥーさんが! ぜひ頂きます!」

「私も食べる」

ルル、ゼナさん、コア・ツーの三人はポチと対面の位置からハンバーグの山に取りかかった。

小さめサイズなので、色んな味を楽しんでほしい。

「アーゼ、アレ、トッテ」

「ワタシハ、コッチノガイイ」

「オレハ、ニクガイイ」

「そ、そんなに一度に言わないで。順番よ」

オレの横に座るアーゼさんは、羽妖精達に食事を与えるのに追われてまだ何も食べていないようだ。

「アーゼさん、あーん」

「あーん」

オレの声に素直に従ったアーゼさんの口に、ビーフシチューを掬った匙を差し入れる。

「ん、んぐぐぐっ」

オレに食べさせてもらったのに驚いたのか、アーゼさんがむせてしまった。

「すみません、驚かせてしまいましたか?」

アーゼさんの背をさすりながら尋ねる。

「だ、大丈夫。ありがとう、サトゥー」

可憐に微笑むアーゼさんに、オレも釣られて笑顔になる。

やっぱり平和が一番だね。