軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16-62.パリオン神国、再び

サトゥーです。「永劫不滅の国家はない」と銀河を舞台にしたアニメで誰かが言っていましたが、比較的安定した国に住んでいると、どうしても「国家の滅亡」というのが、遠い世界のできごとのように感じてしまいます。

「ついに革命かクーデターでも起こったのか?」

オレは気軽な調子で、パリオン神国が滅んだと伝えに来たティファリーザに尋ねる。

天罰騒動の時にやや危機的状況になっていたものの、パリオン神国周辺の魔物はサガ帝国の勇者達によって排除されていたので、外的要因で滅ぶ事は考えにくい。

魔王や上級魔族による襲撃ならありえるかもしれないが、そういった存在が現れる前にはそれなりに予兆があるし、パリオン中央神殿には「神託の巫女」が複数人いるから、滅亡するような襲撃がある場合にはパリオン神から預言があるだろうしね。

「ち、違います! パリオン神国は上級魔族の奇襲で壊滅的打撃を受け、聖都にいたザーザリス法皇を含む法皇王庁の重鎮が全て死亡もしくは行方不明との事です」

――げっ。本当に滅亡だったらしい。

パリオン神のお膝元なのに、神託で警告しなかったのが謎――でもないか。国の中枢が魔王信奉者に支配されていたし、パリオン神に愛想を尽かされていても不思議じゃない。

幸いな事に、襲撃した上級魔族は大聖堂を始めとした法皇王庁の建物群以外に興味はなかったらしく、散発的な魔法で住民達をいたぶるように攻撃した後は、配下の魔族を呼び出して住民達を都市の外に追い払うだけだったようだ。

「聖都以外の都市は無事か?」

「情報が錯綜していて、シガ王国の工作員がいた聖都以外の情報はありません」

まあ、情報の伝達速度を考えたらしかたない。

ティファリーザに確認したところ、既に事件発生から数日が経過している。

「すぐに救援に行かなきゃ!」

「炊き出し~?」

「行列整理はポチにお任せなのです」

拳を天に突き上げて主張するアリサの左右に、タマとポチがシュピッのポーズで並ぶ。

「二人とも、都市を襲撃した魔族や魔物の排除が先ですよ」

「あい!」「なのです!」

リザが窘めると二人は出撃準備なのですと言って部屋を飛び出していった。

「ミト、悪いけどシスティーナ殿下と一緒に後詰めを頼めるかな?」

「うん、分かった」

活躍の機会が少なくて申し訳ないが、ヒカルなら大抵の問題を対処できる。

「サトゥー、私には聞いてくださらないの?」

ちょっと拗ねたような口調でシスティーナ王女が言う。

「システィーナ殿下、ミトと一緒に王都を守っていただけますか?」

「ええ、サトゥーのお願いなら喜んで」

防御中心の装備をさせたオリハルコン・ゴーレム達を預けたシスティーナ王女なら、ヒカルの直衛を任せられる。

「ティファリーザ、悪いけど王城に連絡を頼む――勇者ナナシがパリオン神国へ向かったと」

「わかりました。王都の守りにミト様が残ってくださる事もお伝えしますか?」

オレはティファリーザに首肯し、皆に出撃準備をするように指示した。

「うわっ、なかなか徹底しているね……」

皆が装備を着替えに行っている間に、オレはマップ情報を更新しに単独でパリオン神国に作った転移拠点にユニット配置で偵察に来ていた。

各都市の中心にある法皇王庁の聖堂や各地にある教会が、ほとんど破壊されている。

マップ検索した限りでは、過半数の神官が亡くなっているようだ。

この国は政治と宗教がセットなので、行政機能が完全にマヒしているに違いない。

事前情報通り、住民達は都市外に追放されているので、各都市の内部には救助すべき人は誰もいない。

追放された住民達を弄ぶように追い立てる下級魔族や使役魔獣が何体かいたので、疑似精霊「 鷲獅子騎士(グリフォン・ライダー) 」達を産み出して救援に向かわせる。

マップ情報だと、パリオン神国のマップ内に上級魔族や魔王などはいない。

それに、勇者達が乗るサガ帝国の大型飛空艇や随伴の中型飛空艇二隻がパリオン神国外縁に到着したようなので、民衆の救済は彼らに任せるのが楽そうだ。

「さてと、次は――」

空間魔法の「 遠見(クレアボヤンス) 」で、赤い光点でいっぱいの聖都を上空から見下ろしてみる。

聖都上空には分厚い暗雲が立ちこめていたので、視点を下げていく。

――ん?

雲を抜けると、聖都の上空に何か生物的なシルエットをした黒くテラテラした飛空艇のようなモノが浮かんでいるのが見えた。

マップ情報によると、レベル50ほどの 魔空船(デーモン・シップ) という名前をした中級魔族の一種だと分かる。

そんな魔空船が数隻いる他に、クラゲと風船を足したようなシルエットの 魔風船(エビル・バルーン) という名前をした魔物が、ふよふよと空中を漂っている。こちらはレベル20前後だ。

聖都の地上には下級の魔族が徘徊し、死体や残骸からアンデッドやコンストラクト系の魔物を生成しているようだ。

大聖堂跡地にはゴーストやレイスなどの非実体系のレベル20~40ほどのアンデッドが何十体も集まっている。

その中心にレベル25という妙にレベルの低い『 不死の魔導王(リッチ) 』を見つけた。

普通、リッチといえばレベル40以上が多いので、少し気になって詳細情報を開いて確認してみた。

なぜか、リッチのくせに近接戦闘系のスキル構成をしている。

少し気になるが、それよりも重要な事を見つけた。

このリッチはユニークスキルを持っていたのだ。

ユニークスキルは「 粉砕無双(くだけぬものなし) 」「 無限再生(リビルド) 」「 無限増殖(ディビジョン) 」という三つだ。

「変だな……」

気のせいか勇者系のユニークスキルと転生者系のユニークスキルが交じっている気がする。

まあ、オレの経験則なので、名前傾向が違うのがあってもおかしくないけどさ。

もちろん、ちゃんと称号も確認したが、このリッチは「勇者」でも「魔王」でもなかった。

名前は日本系ではなく「アンメイクスィビ」という聞き覚えの無い感じだ。

「――ホムンクルス?」

備考情報を更に手繰っていくと、リッチになる前の種族が、ホムンクルスだと分かった。

ホムンクルスなら作った者がいるはずだと作成者名を調べたら、「ネモ」という偽名くさい名前が出てきた。

誰の偽名かはなんとなく想像が付くが、一応、交流欄のメモ帳に書き残しておこう。

『ご主人様、出撃準備が整ったわ』

アリサが眷族回線で伝えてきたので、謎リッチの調査を終了して孤島宮殿に帰還した。

「――というわけで、事前調査の結果はそんな感じだ」

孤島宮殿に戻ったオレは、黄金装備や白銀装備に身を包んだ仲間達に情報の共有を行なっていた。

白銀装備は外見こそ変わっていないが、既に改修を終え、内部性能は黄金装備に準ずる防御力を得ている。

「ユニークスキル持ちか……」

「無限に再生されるという事は、一撃で倒さないといけませんね」

アリサの呟きに、リザが対処法を検討しだした。

「なんでも壊しちゃうなら、ナナさんと相性が悪そうですね」

「否定。当たらなければ問題ないと告げます」

心配そうなルルの発言に、大丈夫だとナナが答える。

「回避盾~?」

「しゅぱぱぱぱ、なのです」

二人の会話を聞いていたタマがくねくねと踊り、面白がったポチが手刀の突きでタマを攻撃して遊ぶ。

「聖都は廃墟らしいし、ミーアの疑似精霊やわたしの火魔法、それにルルの加速砲で遠距離から攻撃するのが手っ取り早そうね」

「ポチも活躍したいのです!」

「なら、リザさんとポチは魔空船の撃破をお願い。セーラたんは地上のアンデッド、ゼナたんは地上のクリーチャー、下級魔族はカリナサマに任せるわ」

指示を終えたアリサがオレの方を振り返り、「ご主人様、それでいい?」と確認してくる。

「ああ、リッチ以外はそれでいい」

「リッチは?」

「そっちは、まずオレが直接会って会話できるか試してみるよ」

迷宮下層の「吸血鬼の真祖」バンや「骸の王」ムクロ達みたいに、アンデッドでも友好関係を結べる相手かもしれないしね。

「それでダメだったらアリサ達の攻撃で倒してくれていい」

「分かったわ。無限増殖でいっぱい増えたら、『グレーターデーモンの養殖』みたいな事もできそうよね」

ゲーマーな発言をするアリサに、「ほどほどにね」と釘を刺してから、皆でパリオン神国へとユニット配置で移動する。

「あら? もう始まってるわ」

聖都パリオンの上空では、サガ帝国の大型飛空艇が魔空船五隻と戦闘中だった。

到着にはもうしばらく掛かると思ったのだが、予想より早く戦闘が始まっていたようだ。

随伴の中型飛空艇は 魔風船(エビル・バルーン) と戦っている。

大型飛空艇からコーン状の炎が広範囲に放射され、黒い砲弾を撃ち続けていた魔空船を呑み込んだ。

あれはたぶん、勇者ユウキの攻撃魔法だろう。

「ふぁいあ~?」

「アリサの 火炎地獄(インフェルノ) 並みですね」

「沈んじゃった?」

「いえ、まだのようです」

炎と黒煙の向こうから、魔空船が黒い煙を曳きつつ飛び出してきた。

どうやら、魔空船の魔法障壁が勇者ユウキの攻撃魔法を受けきったようだ。

「レベル50にしては強いわね」

アリサが感想を言う間にも、勇者ユウキの乗る大型飛空艇と魔空船五隻が戦いながら聖都上空から離れていく。

「――あっ」

大型飛空艇から飛び降りた誰かが、魔空船の一隻に飛び移るのが見えた。

あんな事をする人間は他にいないと思って確認したら、やはり接近戦が得意な勇者メイコだった。この間、ドラグ王国の守護竜に丸焦げにされたばかりなのに、相変わらず無謀な戦いが好きな戦闘狂のようだ。

勇者メイコが飛び出したハッチから見えるのは、索敵が得意な勇者セイギだろう。

もう一人の勇者フウは、今回も出動していないようだ。

「それじゃ、聖都の掃除を始めようか」

オレはそう言って、仲間達と一緒に聖都の中央にある大聖堂跡地へと向かった。

「■■ 浄化(ターン・アンデッド) !」

聖都に入ると様々なアンデッドが襲ってきたが、大抵は近寄る事もできずに白銀騎士ホーリーことセーラの神聖魔法で浄化されて消えていった。

希に、浄化を免れたレイスナイトやワイトメイジ達が襲ってくるが、セーラが重ねてターン・アンデッドを使う事で軽々と浄化されていた。

「右前方から敵接近。アンデッドじゃないみたい」

アリサの指さす方から、ガラクタで作られたリビング・オブジェクトやブラッドゴーレムを引き連れた下級魔族がやってくる。

「……■■ 重旋鎚(ヘビィ・ハリケーン・ハンマー) 」

白銀騎士エアーことゼナさんの風魔法がザコを蹴散らし、ナナの理術が下級魔族を穴だらけにし、瞬動で駆け寄った白銀騎士クンフーことカリナ嬢が、格闘ゲームのキャラみたいな跳び蹴りで下級魔族を粉砕した。

「にんにん」

隠蔽系のスキルを持った下級魔族がこっそりと接近していたが、いつの間にかその背後にいたタマが、奇妙な形をした下級魔族の首を刎ね飛ばした。

「やっぱ、ニンジャは首刈りよね~」

アリサの発言は間違っている気もするが、マップ上の動きが気になったので、突っ込むのをスルーしてそちらに集中する。

どうも、神殿関係者が空路で聖都に向かっているようだ。

空間魔法の「遠見」で確認したところ、「魔法の絨毯」に乗った年配の巫女さんと禿頭の空間魔法使い、それから厳つい神殿騎士二名の組み合わせだった。

すぐに空間魔法使いがオレの「遠見」に気付いて対抗魔法を使ってきた。

別段、対抗魔法による妨害で「遠見」が遮断されたわけではないが、特に見るべき事も無いので「遠見」を解除する。

「……■■■■ 神威浄化(セイクリッド・ターン・アンデッド) !」

次第に面倒になったのか、セーラが白銀鎧の広範囲拡張機能を使いつつ広域を浄化する魔法を使う。

暇なのか、アリサが「最上位の魔法ってさ、神聖魔法はセイクリッドで、それ以外の魔法はディバインって付くのは何か意味があるのかしら?」と話題を振ってきた。

興味深い話題だが、戦闘中にする話でもないので「孤島宮殿に帰ってから」と言って話を打ち切る。

「マスター、空を!」

ナナが空を指さす。

魔風船(エビル・バルーン) と戦っていたサガ帝国の中型飛空艇が、タコのような触手で絡みつかれた次の瞬間、轟音を上げて大爆発を起こした。

中型飛空艇は黒煙を上げつつも飛行していたが、速度を落とした飛空艇に次々と魔風船が寄ってくる。

あの数の魔風船が張り付いて自爆したら、間違いなく轟沈してしまうだろう。

「――ルル」

「はい!」

携帯用の加速砲を構えたルルが、次々と魔風船を撃墜していく。

スナイパー・ルルの狙撃は一発の外れもなく命中し続け、瞬く間に上空の敵を全て掃討してしまった。

『ご主人様』

『お待たせなのです』

繋いだままにしていた空間魔法の「 戦術輪話(タクティカル・トーク) 」から、リザとポチの声が届いた。

マップを急接近する青い光点の方角を見ると、白、緑、黒の大小様々な竜達がやってくるのが見えた。

ポチの騎竜である白竜は予定通りだが、幼い緑竜や黒竜ヘイロンまで一緒なのは予定外だ。

緑竜はともかく、黒竜はよくゲートを通過できたと感心してしまう。

リザは白竜の背ではなく、新装備の強化外装で随伴飛行している。

一度の飛行で紅貨が一枚消費される燃費の悪さなので、もうちょっと改良が必要な感じだ。

『ポチとリザはヘイロン達と一緒に、大型飛空艇を襲っている魔風船を撃墜してきて』

『はいなのです』

『承知!』

リザと三体の竜達があっという間に聖堂の上空を通過し、幼竜と黒竜が魔風船に向けてレーザーのような「 竜の吐息(ドラゴン・ブレス) 」を放つ。

黒竜ヘイロンの放ったブレスは一瞬で魔風船を消し飛ばしたが、幼竜の方は命中したものの魔風船の障壁に阻まれてしまったようだ。

『ブレスはずるいのです!』

『ポチ、私達は一番端のをやりますよ』

『らじゃなのです!』

ポチが焦ったように叫ぶ声に少し遅れて、白竜の鳴き声が聞こえてくる。

空はポチ達に任せておけば大丈夫だろう。

「それじゃ、ちょっと行ってくるよ」

大聖堂跡地に到着したオレは、皆にそう宣言して影の中へと沈む。

リッチが話の分かる相手だといいんだけど。