軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

SS:ミーアの音楽教室

「ミーア様、今日の演奏も素晴らしかったです」

「ほんと、ミーアの曲は何度聞いても飽きないぜ」

「様を付けろと何度言ったらわかるのですか!」

「二人とも、ミーア様の前で騒ぐな」

演奏を終えるなり、妖精族の子や長耳族の子達が騒ぐ。

音楽の余韻に浸りたいのに、浸れないの。

困った子達。困るの――本当よ?

演奏を聴いていたお爺ちゃんやお婆ちゃん達みたいに、にっこり笑ってパチパチと小さく拍手してくれるだけでいいのに。

ボルエナンの森の騒がしい羽妖精達だって、演奏の後は居眠りしているように静かにしてるの。寝てないのよ?

だって、「演奏はどうだった?」て聞いたら、「今日もサイコーに熱かったぜ!」とか「夢の国にいるように幸せな音色でした」って言ってくれるもの……寝てないわよね?

「ミーアちゃん、喉が渇いたでしょう。井戸水で冷やした瓜をたべんさい」

「ん、ありがと」

お婆ちゃんのくれた瓜を一口囓る。

甘い。瑞々しいさわやかな甘みが口に広がる。

ほんの数度咀嚼するだけで、少しの後味を残して喉の奥へ冷たさを連れていくの。

ボルエナンの森の 西瓜(スイカ) も美味しいけど、セリビーラの迷宮瓜だって負けていない。

「ミーアちゃん、草笛教えて」

「おしぇーて」

小さな子供達が、草笛に使うフェシェカ草の葉を片手に請うてきた。

人族は草の名前を気にしないの。フェシェカ草の事もチェミラナ草の事も同じ雑草という呼び名で一纏めにしてしまう。

それはちょっと悲しいことなの。ちょっぴり、なのよ?

「アタシの歌をキケー!」

アリサが変わったリュートをかき鳴らして、そう叫んだの。

それは騒音だと思うの、内緒よ?

「何?」

「これはね、ギターって言うの。ご主人様に作ってもらったのよ」

「むぅ」

アリサばっかりズルイと思うの。

「サトゥー」

「ミーアにも何か作ってあげようか?」

「ん」

おねだりしたらサトゥーはすぐに作ってくれるの。

だって、婚約者だもの。私にメロメロなの。絶対よ?

「どんな楽器がいい?」

「ぱいぷおるがん」

「パイプオルガン? それはさすがに大きすぎるから、ピアノか電子鍵盤あたりで良いかな?」

サトゥーでも「ぱいぷおるがん」は無理なのかしら?

伝説の武具でも、不思議な魔法道具でも作れるサトゥーだもの、「ぱいぷおるがん」くらい作れるはずよ。

「ダメ?」

アリサに教わった「うるうる」攻撃でサトゥーに懇願したの。

勇者ダイサクが「ぱいぷおるがんは最高の楽器」だってアーゼに言っていたそうなの。

そうサトゥーに伝えたら、「分かった、任せておけ!」って言ってくれたの。

――嬉しいけど、複雑。

浮気はダメよ? 絶対なの!

「さあ、ミーア。弾いてご覧」

「すごい……」

蔦の館の地下にある実験場に「ぱいぷおるがん」が置いてある。

金色の管が幾つも並んでいて、夏の日の木漏れ日よりも輝いている。

サトゥーが練習用に作ってくれたピアノとは音の深みが違う。

私は夢中になって「ぱいぷおるがん」で音楽を奏でた。

――音が空から降ってくる。

サトゥーの「がらけー」で聞いた「わぐなー」や「もつあると」の曲やボルエナン交響曲をピアノ用に編曲したのを弾いてみる。

……みんなヘン。

音楽は楽しいモノなのに、泣いている。

「ミーア」

サトゥーがハンカチで私の頬を拭う。

私も泣いていた? 本当に?

「素敵な曲だったよ」

「ん」

今度はお爺ちゃん達を蔦の館に招いて弾いてあげよう。

もちろん、妖精族の子や長耳族の子達ものけ者にしないの。多分ね?