軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「「「!」」」

三人とも目を見開いている。どうやらこの姿は知っているようだ。

「ローズ商会会長のマリアです。さすがに皆さんご存知のようですね。陛下、王太子殿下、お父様。いつも当商会をご贔屓にしていただきありがとうございます」

もちろん感謝ではなく嫌味だ。

「三年前に王室御用達に任命していただいた際に陛下にお会いしていますのよ」

「……」

ローズ商会の本店はブルー領にあるが、王都にも支店を置いているし、他の領にも沢山支店がある。日用品から美容、服飾、薬、診療所、レストラン、パティスリーまで幅広くお店を展開している。

「王太子殿下。服飾店やレストランをいつもご利用いただきましてありがとうございます」

「あ、ああ……」

「毎回違う女性とご一緒だったとか。ふふっ、羨しい限りです」

「いや、それは……」

この男は王太子としては優秀なのだろうが、男としてはいかがなものか。いつも違う女性を同伴してくるなんて、前世で浮気された私としては嫌悪感が半端ない。

「ブルー家もローズ商会のお得意様でしたね。実は領地の財政を潤しているのは私だったんですよ、お父様」

「あ、あり得ない……」

父は私に関係することは受け入れられない病気なのかもしれない。

ちなみに王都も他の領地もローズ商会のお陰でずいぶんと潤っていて、もうこの国にはなくてはならない存在となっている。

「さて陛下、これで説明は終わりですがいかがでしたか?」

魔法を解除してダリアローズの姿に戻る。

「私の言いたいことはもうお分かりですよね?このまま無理矢理婚約させようとするのであれば、私はこの国から出ていきます」

「そ、それは!」

「私を受け入れてくれるところは沢山あるでしょう。さぁ陛下どうしますか?あ、力ずくで従わせようとするならば、それ相応の覚悟をしてくださいね」

微笑みながら話しかけているのだが、国王の顔色が悪すぎる。それだけ私がこの国から出ていってしまえば、損失が大きすぎるということに気付いているからだろう。

それに【あの国】との関係が悪化してしまうのではないかと。

自分で言うのもなんだが、私が国から出ていけば、カラフリア王国は相当な混乱に陥ることに違いない。

「……分かった。そなたの言うとおりにしよう」

「陛下!」

「父上!」

「うるさい!ダリアローズ嬢に国を去られたら大損失だということくらい、今の説明でお前たちも分かっただろう!?」

「それは……」

「ですが!」

「現実を受け入れるしかない……。ダリアローズ嬢。先ほどまでの振る舞い、大変申し訳なかった。婚約の話は白紙にする。だからどうかこの国に留まってはくれぬか?」

頭は下げないながらも謝罪をしてきただけ、国王は馬鹿ではなかったようだ。さっきまでの態度は気に入らないが、国のトップとしては及第点と言ったところか。賢明な判断だ。

「分かりました。では婚約の話は無かったことに……あ、そうだ。私の他の姿のことは、ここだけの秘密にしてくださいね。あまり周りが騒がしくなるのは好ましくないので」

「ああ、約束しよう」

「よろしくお願いしますね。もし約束を守らなかったらどうなるか……。賢い皆様ならお分かりですよね?」

乙女ゲームという決められた運命なんてくそったれだ。私はただ自由に生きたいだけ。だから邪魔する者は、相手が誰であろうと容赦するつもりはない。

続けて顔を歪ませ私を睨み付けている父に話しかけた。

「それとお父様。一応ご報告しておきますが、学園では寮生活をするつもりです。もうあの離れには住む予定はないので、どうぞ片付けるなり取り壊してしまうなりしてください」

「……なんだと?」

「ああそれと婚約は無事に白紙になりましたので、使い道の無くなった娘はいつでも除籍していただいて結構です。サインなど必要なものがあれば学園の寮まで連絡をお願いしますね」

すぐにでも除籍して欲しいところではあるが、あれでも領主だ。

嫌々でも、私には利益があると判断するはず。だから除籍する可能性は低い、いやしないだろう。

まぁ今はそれでもいい。私の除籍は決定事項なのだから。

最後は王太子だ。

「王太子殿下。まもなく学園が始まりますが、お互いに学園生活楽しみましょうね」

「あ、ああ……」

「学園で素敵な女性と沢山出会えることを陰ながら祈ってます」

もちろん本気で祈るわけなく、嫌味である。

さすがに本人も嫌味だと気づいたのか、顔を赤くしながら何も言わず俯いてしまった。まぁ何も言わないのならそれでいい。

さぁやることは全部終わったし、そろそろ帰るとしよう。

「それでは皆様、ごきげんよう」

私は転移魔法を発動し、さっさとこの場をあとにした。

ちなみに、ダリアローズがいなくなったあとの応接室では……

「転移魔法!?」

魔道具なしでは使える人間はいないと言われている転移魔法。それを目の当たりにした三人は、同じ顔で驚き固まっていたのであった。

「ふぅ」

私が城から転移した場所は、あの離れだ。

別に特別用事があるわけではない。念のため忘れ物が無いか確認をするために来てみただけ。特に忘れ物は無いようだ。

この部屋で前世の記憶を思い出してからもう九年だ。けれど九年も前のことなのに、つい最近の出来事のように感じる。

そして今日、長年の目標であった婚約を無事に回避することができた。

「……次は学園ね」

目標を達成できたことは素直に嬉しい。しかしこの目標を達成したあとはどうしようか……ふとそんなことが頭を過ったのだ。

だから私は考えた。そして出した結論が、学園に通うことだったのだ。

本当は学園に通う必要は無い。おそらく今の私が学園で学べることはないだろう。

けれどせっかくの二度目の人生。学園生活を楽しんでみるのもいいかもしれないと思い、行くことを決めたのだ。

学生らしく友達を作ったり恋したり……って恋はまだ無理かな。学園に通う子たちなんて、私からすればみんな子どもにしか見えない。それにまだ男を信用することができない。

でももしもこれから先、一生独身だったとしても、前世の記憶がある私にとっては大したことではない。だからまずは恋より自由を謳歌しようではないか。

「バイバイ」

この部屋に別れを告げる。そうして私は、再び転移魔法を発動させたのだった。