軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84ー逆切れ

領主隊隊長、ウル・オレルス。

淡々と、領主隊の見解を話し出した。ウルが言う領主隊の意見は……

ケイアが言った様に、確かに納品はしている。但し、自分でも言っていた様に、遅れての納品なんだそうだ。

領主隊がポーションの発注をする時は、討伐に向かう約2週間前。今はもう納品が遅くなるのが分かっているので、いつも討伐が決まり次第発注して対応しているらしい。

しかし、いつも早くに発注出来るとは限らない。当然だ。急に討伐が決まる時もある。

だから、いつも余分に発注しているそうだ。今はまだその対応で事故もなく何とかなっている。しかし、このままではいつか領主隊の不満が、爆発してしまう可能性がある。

「ですので、今回この様な機会を頂けた事は、私達にとっては救いでもあります」

「そんな! 私はちゃんと納品してます! 遅くなっても納品はしてます!」

「ケイア殿、そこです。『遅くなっても』が駄目なのです。

酷い時は、討伐から戻ってきてやっと納品される時もあります。それでは、ポーションを発注している意味がありません。」

「どうしてですか? 納品はしてるでしょう? 意味がないと言うなら、発注しなければいいんだわ!」

「待って! ケイア、それは違うよ? 落ち着いて?」

「リリアス殿下まで! やっぱり、初日の事を根に持ってるんでしょう!? だから、私にそんな……」

「ケイア! 黙りなさい!」

「奥様、そんな……」

「黙りなさい。殿下と隊長の話を、落ち着いて聞きなさい」

「はい、すみません」

「殿下、申し訳ございません」

「夫人、大丈夫です。ケイア、いいかな?」

「はい、殿下。申し訳ありません」

「ケイアは領主隊にとって、ポーションとはどんな意味を持つものか理解しているかな?」

「それは……怪我を治す為に」

「そうだね。その怪我も、色々あるんだ。怪我してすぐにポーションを使っていれば、後遺症が残らなかったのに……て、怪我もある。

そうでなくても、ポーションがあれば、万全で戦える。痛みを我慢しなくて良いんだ。これが、どんな意味か分かるかな?」

「それは……はい」

「薬湯もそうだよね? 早く薬湯を飲んでれば、良かったのに……て、場合がある。何よりも、苦しんでる人を少しでも早く楽にしてあげたい。分かるでしょ?」

「……」

「ケイア、研究も大事だ。未来の何百人の命を救う為に必要な事だ。研究がないと、進歩はない。だから必要だ。でもね、何よりも大事なものがあるんだ。何か分かる?」

「……いえ、私にとっては研究が一番なので」

「そうか。ケイアは幸せなんだね」

「……ッ! そんな! 私だって色々……」

「ケイア」

今度はアラウィンの低い声で静止されたよ。

なんか、ケイアて駄々っ子みたいだ。

辺境伯と夫人と二人して、ケイアを守っているよな。

「ケイア、これからも薬師を続けていくのなら、絶対に忘れてはいけない事がある。研究も大事だろう。そんなケイアの気持ちよりも、ずっと大切なものがあるんだ。

人の命だよ。何よりも優先すべきなのは、人の命なんだ。

ケイアは領主隊の、この邸の皆の命を預かっていると言ってもおかしくないんだ。

遅くなっても納品してると言ったよね? 遅いと意味がないんだ。

討伐に行く。命に関わる怪我をするかも知れない。なのに、ポーションが充分じゃない。そんな事はあってはいけない。

病で熱がでた。苦しい。なのに研究があるからと、薬湯をすぐに作ってもらえない。そんな事もあってはいけない。

人の命を守る為のポーションや薬湯よりも、研究を優先してはいけない。目の前の命よりも、優先させていい研究なんてないんだ。それでは、薬師失格だ。薬師でいてはいけない。ボクの言っている事が分からないなら、今すぐ薬師を辞めるべきだ」

「うッ……殿下……」

あー、泣いちゃったよ。

ごめんよ。キツイ言い方かも知れないけど、これだけは譲れないんだよ。

「だからね、ケイア。今回一緒に行って、討伐とはどんなものか。魔物とはどんなものか。実際にどんな風にポーションが使われているのか。自分の目で確かめるといいよ。自分は何に守られてきたのか、分かると思うよ」

「そんな、私は分かってないと仰るんですか?」

え? 逆ギレ?

「失礼ですが、殿下の様な子供に何が分かるんですか? 皇子殿下だからって偉そうに言わないで下さい!」

あー、逆効果だったか〜。

――ダン!

「殿下、申し訳ありません! 大変失礼を! 申し訳ございません!」

アラウィンが、ケイアの頭をテーブルに押さえ込み、自分も一緒に頭を下げた。

「アラ殿。止めて下さい! ボクみたいな子供に言われて、ムカつく気持ちも分かりますし」

「リリ、黙りなさい。ケイアの言った事は、皇族に対して立派な不敬罪だ」

「兄さま! やめて下さい!」

「リリ、私は黙りなさいと言ったよ?」

「……はい、すみません」

駄目だ。クーファルを怒らせた。ヤバイ!

「君はリリの何を知っている? 皇子だから、チヤホヤされて何の苦労もせずに育ってきたとでも思っているのか? 自分が住んでいる国の事も知らないのか?」

「クーファル殿下! 申し訳ありません! どうか、一度だけ猶予を下さい! ケイアはリリアス殿下の事を知らないのです。申し訳ありません!」

「辺境伯、知らなかったらこの国の皇子に向かって何を言っても許されると?」

「いえ! いえ!! とんでもございません! どうか、私共に話をする時間を下さい!」

辺境伯だけじゃなく、夫人まで平伏してるよ。やめて!

「クーファルにーさま!」

「リリ……」

俺は首を、イヤイヤと横に振って、訴えた。

「兄さま、止めて下さい」

頼むよ。クーファル。