軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編ーオクソールの婚姻 5

その後、クーファルが調べを進めていた。

出るわ出るわで、学生はもちろん、しかも高位貴族の子息に限る、そして学園の教諭に事務。そんな人達の大半が令嬢からクッキーを手渡されていた。

しかし、高位貴族は危機管理を怠らないんだ。普通はね。だから、自分は口にせずに従者にあげていた者もいた。貰った従者は仕事仲間と一緒に食べていたりして、中毒症状を訴えている者達がかなりの数になった。

で、問題はその違法薬物入りのクッキーだ。

「伯爵夫人付きの侍女が作っていたそうだ」

クーファルが調べあげていた。しかも詳細にだ。

その調べによると……

伯爵夫人は元々我儘でしかも癇癪持ち、そして気位が高かった。その伯爵夫人がまだ婚姻前の事だ。

クッキーを作っていた侍女の母親が流行病に罹り亡くなってしまった。その時に、高価な薬を買いたいから給与を少しだけ前借りしたいと申し出たそうだ。しかし、それは認められず、しかも母親が危篤になっても帰らせてもらえず、葬儀にも休みをもらえなかったらしい。

その理由が、夜会のドレスを選ぶ為だとかふざけた理由だ。それからその侍女は夫人を恨んでいた。いつか仕返しをしてやるとずっと機会を窺っていたそうだ。

なんとも……執拗と言えばそうなのだが、母親の命に関わる事だけに言葉がない。

そして、しばらくして夫人は伯爵と婚姻し、娘ができた。姉のクラッシャーだ。

姉は幼い頃は身体が弱く、妹が出来ても姉の方に手がかかり妹は学園入学まで伯爵の両親に預けられていたそうだ。

オクソールは月に1度、妹と面会していたがその時も伯爵の両親の家か、若しくはオクソールの実家だったそうだ。そっちの家の方が城から近い。だから、オクソールは自分に負担が掛からない様にしてくれているのだと思っていたらしい。今までずっと、妹は自分の境遇をオクソールに話す事はなかったそうだ。

我慢強いと言うか……いや、多分だが伯爵の両親の家、妹からみれば祖父母の家になる。その方が単純に可愛がってもらえたのだろう。

幼い頃に身体が弱かったせいで、母親は姉を猫可愛がりし、姉は母親によく似た我儘で我慢のできない癇癪持ちに育ち、見た目も母親似だと侍女が話していた。

そんな性格の母親と姉が寄ってたかって妹を虐めていたそうだ。2人の鬱憤を晴らす的になってしまっていたんだ。

そんな、母親と姉がいる家よりも祖父母の家の方が自由で快適だっただろう。

そんな時に侍女は復讐の機会を得た。

偶々知り合った出入りの商人から麻薬を買った。麻薬と言っても決して毒性の強い物ではない。しかし、中毒性はある。

それを、クッキーに練り込み母親に出した。母親は大層気に入り欲しがった。そりゃそうだ。中毒性があるんだから。欲しくなるんだ。

そして、母親はそれを姉に持たせた。

『このクッキーがあれば、あなたの思い通りに人を動かせるわ』

そう言って持たせたそうだ。

まるで、悪魔の囁きだ。そんなもの、ある筈がない。人を思い通りに動かせる食べ物なんて、あってはならないんだ。

このまま、夫人も娘も落ちてしまえばいい。そう思いながら、侍女はクッキーを焼いたそうだ。

「侍女が母親の薬を買いたいと言った時に少しでも思い遣りを持てていたら、こんな事にはならなかった。母親の見舞いに行かせてあげていたら、母親の葬儀に行かせてあげていたら……もう、こうなっては今更なんだけどね」

「兄さま、原因は母親と言う事ですか?」

「まあ、そう言えなくもない。だが、姉だって自分で選ぶ事は出来た筈だ。自分で考える事もね」

確かに、その通りだ。

「処分はどうなるのですか?」

「侍女に薬物を売った商人も捕らえた。商人の裏には伯爵夫人を疎ましく思っている貴族の夫人がいたよ。何でも、お茶会で恥をかかされたとか言っているらしい。夫人は色んなところから恨みを買っていたみたいだね。その夫人や商人と侍女は実刑だ。命までは取られる事はない。だが、過酷な労働が待っているだろうね。母親や姉も知らなかったとは言え、言動に問題がある。そして、2人共中毒だったよ。しかもかなり侵されているそうだ。毎日クッキーを食べたんだろうね。だから2人共専門の施設に入る事になる。そこで先ず中毒から抜け出さないといけない。苦しい事だと思うよ」

「そうですか……伯爵家はお咎め無しですか?」

「いや、そんな訳にもいかない。伯爵は全く気付いていなかったんだ。何をしていたんだと言う事だ。しかし、罰金だけで済みそうだ。オクソールには影響はないよ」

「はい」

「リリ、人は弱い。それに、心の持ちようで悪にでも善にでもなる。分かるかい?」

「はい、兄さま」

「自分で間違った答えを選ばない様に知識をつけるんだ。日頃から、人を過度に羨まない蔑まない嫉妬しない。そうして自分で気をつけないとね」

「はい……」

「どこに落とし穴があるか分からないからね」

「はい、兄さま」

俺は、なんとも言えなかった。侍女の恨みがきっかけだが、それを作ったのが母親。姉は母親の被害者と言えなくもない。

が、クーファルの言う様に心持ちだ。姉だって気付くきっかけはあった筈だ。変わるきっかけも。

オクソールの婚約者である妹は完全な被害者だ。

オクソールはどうするのかなぁ? て、思っていたら、仲睦まじく2人して俺に挨拶に来た。

「殿下、此度はご迷惑をおかけしました」

「申し訳ございませんでした」

まあ、2人仲良くしているならいいや。と、俺は思った。

「オク、大事にしてあげてね」

「はい、殿下。ありがとうございます」

そして、令嬢がアカデミーを卒業するのを待って婚姻だ。

令嬢はオクソールが言っていた様に、真面目な大人しい慎ましやかな人だった。

オクソールとお似合いだったよ。

俺は婚姻式に無理矢理出たんだ。なんか微笑ましくてさ、俺の方が照れちゃったぜ。

さて、次はリュカの婚姻でも話そうかな。気が向いたらね。