軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

389ーepilogue 2

――ピッ……ピッ……ピッ…………

何だ? この音は……電子音か? 懐かしいな。電子音なんてなかったからな。

ん? 電子音? うん、正常に動いているな。いや、何がだ? 俺は死んだんじゃないのか? 何だ? どうなってんだ?

取り敢えず、先ずは深呼吸だ。状況を把握しないとな。ゆっくりと……確認だ。

身体は…… 動き辛いな。強張っているのか?

目は…… あぁ、良かった。目は開く。ピントが合わないが。見えるな……てか。

えッ? えぇッ!? ええぇーーーッ!?

「父さん! 分かるか!?」

ああ、分かるさ。声が上手く出ないけどな。ゆっくりと瞼を動かして返事をする。

「俺だよ、陽輝だよ! 良かった! 良かったよ!」

ブハハハハ! いかん、アウルとダブルわ。全然似てねーのにな!

「父さん、一緒だよ? 父さんも全然全くこれっぽっちも似てないからな!」

そりゃそーだ! 俺は純粋な日本人だからな!

「良かった! 母さん呼んで来るよ。あ、ばあちゃんと昴輝に電話しなきゃ」

アウル……じゃなかった。俺の息子、長男の陽輝だ。

おいおい、慌てているのは分かるが、病院の廊下を走ってはいけませーん。

俺が目を開けたら、白い天井が見えた。そして、ベッドの横に陽輝がいた。

驚いたよ。マジで。心臓に悪いぜ。今度こそ、心臓が止まるわ。

俺は、死んだと思っていたからなぁ。親父と違って転生だとルーは言ってたし。

いや、俺って2回死んでねーか? いや、1回か? 駄目だ、頭の中がぐちゃぐちゃだ。

「父さん、母さんと昴輝がすぐに来るって。ばあちゃんが超ビックリしてた!」

そりゃそうだろ。てか、俺まだよく分かってないぞ? どうなってんだ?

「ああ、そっか。分からないか。父さん、事故は覚えてるか? 助かったんだよ。脳波にも異常はなかった。なのに目が覚めなかったんだ。でも俺は、絶対に目が覚める、て言ってたんだ。

あれからちょうど1年なんだよ。そろそろだと思ったんだ! 予想通りだよ。

良かったな、父さん。お疲れ。リリ様と呼ぼうか? キャハハハ!」

なんだ、こいつ。予想通りって何だよ。余裕ぶっこいてんじゃねーぞ。てか、アウルと同じ笑い方じゃねーか。

いや、待てよ。そうだよ! 何で忘れてたんだ? 陽輝も同じ事があったじゃないか!

アウルースこと長男の陽輝がまだ大学生になって直ぐの頃だ。

新歓バーベキューとかで、あの湖の辺りで騒いでて天気が急変して湖に落ちた事があったじゃねーか!

あの時も、目が覚めなくて…… そうだ! ちょうど1年で目覚めたんだ!

なんで、そんな事を思い出せなかったんだ! 信じらんねー! 俺って、お馬鹿ー!

いやいや、ルーよ。お前やっぱ記憶を操作してねーか? こんな事忘れる筈ないじゃねーか! て言うかさぁ、ルーさんよお。ワザとだろ。こうなるって何で教えてくれなかったんだよ!

「あー、父さん思い出した? そうなんだよ。俺の方が先に行ってたんだよ。俺も父さんが事故に会った時に、向こうの世界での事を思い出してさぁ。

あっちとこっちだと時間軸がめちゃくちゃだな! いやぁ、参った参った!」

何、おっさん臭い事言ってんだ。

あれから、陽輝が変わったと思ってたんだ。母さんとよくそう話していた。思い出していなくても、意識が変わったんだろうな。

母さん、て俺の愛妻の事さ。まさか、浮気してねーだろうな! 俺はあっちでも結婚しなかったんだぞ!

「父さん、マジ馬鹿だな。リリ様は超カッコよかったのに」

うっせーよ! お前だって、アウルの方が数万倍可愛いわ!

あー、声が出ねー! 喋りたいー! 日本語を喋りたいー!

1年か。そりゃ声も出ねーし、身体も動かねーわ。仕方ない、リハビリだな。

「やだーー! もうー! どんだけ心配したと思ってんのよー! あー! 良かったー!」

と、我が愛妻は泣いて抱きついてきた。おいおい、息子の前だぜ。照れるじゃんか。

「父さん、お帰り。夢の世界はどうだった? これからリハビリ大変だよー? グフフッ!」

これが、次男の昴輝だ。ちょっとクーファルに似てるかも。ほんのちょっとだけな。昴輝はちょっと皮肉屋さんなんだ。ツンデレも標準装備だ。

「光輝! だから、湖には気をつけろって言ってたでしょ? 親子で何してんの!」

俺の母親さ。はいはい、すんません。すっかり忘れてました。

でも皆、心配かけたな。すまん。

目が覚めてから、俺はやっとの事で車椅子で移動出来るまでに回復した。

病院は、妻の勤務先だった。事故にあった俺を処置したのも外科医の妻だった。脳死判定もしたらしい。

辛かっただろう。立場が逆だったら俺は冷静に対処できただろうか。さすが俺の妻だ! エヘヘ。

あれから、分かった事がある。

陽輝、アウルだな。笑い方が一緒だった。俺もそうだ。ま、これはルーに聞いた時にもそう思ったんだが。

それより何と言っても、りんごジュースだ。俺の必需品だ。リリの時もそうだった。

で、俺は妻に、りんごジュースを一気飲みするな! と、よく叱られていた。

変わんねー! リリになっても一緒だったぜ。やっぱ人って、そう変われないよねー。

陽輝があっちの世界に呼ばれた理由を聞いた。

あの頃、辺境伯領を狙っていた貴族がいた。辺境伯領のすぐ隣の貴族だ。

豊かな領地だから、良く見えたんだろう。しかし、魔物が出るんだ。

だが、それも難なくアラウィン達が討伐していたので、自分だって楽勝だとでも思ったんだろう。

そして、代が変わってアスラールが辺境伯になった時に動き出した。アスラールの子供が娘だけだったからだ。

しかし、すかさずフィオンが矢面に立った。そして、アスラールが公に発表した。次期辺境伯はアウルースだと。

元皇族のフィオンが母で、しかも光属性を持っている。太刀打ちできないと思ったのだろう。それでも、強硬手段に出てきたそうだ。

それを、辺境伯領の皆で退けその貴族の領地も辺境伯領になった。

そんな事もあったなぁ。俺はその時、驚きはしたがまさかそれが陽輝を呼ぶ理由だとは思いもしなかった。

陽輝も、アウルースとして必要だったと言う事らしい。

病院の中庭に車椅子で出て来ている。今日は良い天気だからな。

その時だ。俺の目の前を白い鳥さんが横切った。

ん? なんか見覚えあるぞ。

嘴の薄いピンク、豊かで美しい羽根。頭には淡いブルーの羽根。広げたら孔雀の様になるんじゃないかと思わせる豊かな尾羽。冠羽と同じ淡いブルーの胸。それ以外は全身雪の様に真っ白だ。

その白い鳥さんは、俺の肩に止まった。

――クルッポー

マジか!? ルーなのか? ルーだよな! もう話はできないのか!?

――ニャア〜

と、白い猫が膝に乗ってきた。猫だけど豹柄てどうよ? ユキなのか?

マジかよ! こっちに来て大丈夫なのかよ! これは、似てるってだけじゃないよな?

もう喋れないけど、また会えて嬉しいよ。俺は膝の上の白い猫をゆっくりと撫でた。

――ニャア〜

ユキだろう白い猫が答える様に鳴いた。

兄上達にもう会えないのは寂しい。俺は皆に愛され幸せだった。兄上達を、帝国を頼んだよ。

ルー、ユキ、本当に世話になった。あの世界でも俺は幸せだったよ。心からそう思えるよ。ありがとう。

――ニャア〜

ユキは一鳴きして地面におり、俺を見つめる。

――クルッポー

白い鳥さんが、俺の肩から飛び立ち猫と一緒に消えていった。

俺は、日生 光輝 55歳いや、もう56歳の元小児科医だ。

そして、リリアス・ド・アーサヘイム 帝国第5皇子だった。

豊かな尾羽が扇状に広がっている全身雪の様に真っ白な小さな鳥が、大きく円を描きながら雲間から降り注いでいる光の中に溶け込む様に飛び去っていった。