軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

384ーフォルセの思い

「殿下、でも今年はアウルース様がいらっしゃるので良いじゃないですか」

「ミーリィ、そうだけどさ。あれ? ユキは?」

「まだ、厨房ですね」

「えー、まだ食べてんの? どんだけ食べてるんだろ?」

ああ、美味い。りんごジュースはいつも美味い。

噂のユキが戻ってきた。ユキは、もう我が物顔で城の中を歩いている。周りも慣れてしまって、怖がる人もいない。

それどころか、「ユキ様、お食事ですか?」なんて声を掛けられたりするらしい。

「ユキ、お腹いっぱいになった?」

「ああ。シェフの料理は美味い」

はいはい。もう量を減らせとは言わないけどさ。でもさ、ユキさんや。

「そのお腹はヤバイよ?」

ユキのお腹が、ぷっくりと膨れている。

「直ぐに消化する」

え、そう言う問題?

「問題ない」

あら、そう。太っちょの神獣て嫌だよ?

「リリ、問題ない」

はいはい。

俺は、父と皇后の間に立ち貴族達の挨拶を受けている。ずっと、皇子様スマイルだ。早くも顔面が引き攣りそうだ。

公爵家、侯爵家と終わって、次は辺境伯家アウルースだ。フィオンとアルコースに連れられて着飾ったアウルースが目の前に立つ。

「皇帝陛下、皇后陛下、ご無沙汰しております。アウルースです。リリアス殿下、いつも有難う御座います」

上手にご挨拶できた。あかん! 泣きそうやぁ!

「アウルース、大きくなったな」

「本当に。辺境伯領にお邪魔した時はまだ小さかったのに。ちゃんとご挨拶も出来て立派になりましたね」

「ありがとうございます」

ああ、もう言葉が出ねーよ。

「リリさま?」

「アウルース、本当に大きくなったね。嬉しいよ」

「ありがとうございます!」

「やだわ、リリ。泣きそうじゃない」

「だってフィオン姉様、小さかったのに立派になって」

「リリさま、ありがとうございます!」

「アウル、せっかくだからご馳走沢山たべてね。お友達も出来ると良いね」

「はい! リリさま!」

このお披露目パーティーが終わったら翌日には帰って行く。また、遠く離れた辺境伯領だ。転移出来るとは言え、俺が会いに行かないと気軽には会えない。

パーティーが終わったら、今日1日また一緒にいよう。沢山お話しして、沢山遊ぼう。

また、来年会いに行くからな。毎年必ず1度はアウルースに会いに行く事が、俺の大切なライフワークになった。

「リリ、寂しいの?」

アウルース達が、辺境伯領に帰ってから数日、俺は毎日の予定をいつも通り熟していた。

そんな時に、フォルセに突然言われた。

「フォルセ兄様。いえ、また会いに行きますから」

「ねえ、リリ。おじさんになっても、おじいさんになっても仲良くしようね」

「兄様、当たり前じゃないですか。どうしたんですか?」

「僕 も(・) 、婚姻するつもりはないからさ。ね、リリ」

フォルセが、俺の顔を覗き込む様に見て微笑んだ。

フォルセ……やっぱり、気付いていたんだ。言葉が出なかった。この時、俺はどんな顔をしていたのだろう。

「僕はさぁ、絵を描いたり、彫刻を彫ったり、何かを創り出す事が好きだし楽しいんだ。それに費やす時間よりも大切な人が現れるとは思えない。そんな気持ちで婚姻しちゃったら、相手の令嬢に失礼でしょ? 不幸にしちゃうかも知れない。そんな事はしたくないんだ。

だからさ、一緒に楽しくやろうよ。それはそれで楽しいと思うんだ。兄上達の子供が沢山いてさ、きっと賑やかだよ。兄上達がちゃんと婚姻してくれたから、僕達位は好きにしてもどうって事ないよ」

「フォルセ兄様、いつから分かっていたんですか?」

「ん〜、はっきりいつからかは分からないけど。なんとな〜くね。リリはそうなんじゃないかなぁ? て、思ってた。

リリは小さい頃からそうだったんだ。執着がないと言うか、割り切っていると言うか。もしかして、残したくないのかなぁ? て、思ってた」

そうなのか? 俺はそんな風に見えていたのか?

「兄上達は、気付いてないと思うよ」

そう言ってフォルセはふんわりと笑った。

フォルセに言われて初めて気が付いた。俺は執着がないのか?

いやいや、そんな事はない。りんごジュースだろ? 家族にアウルだってそうだ。

どうしても、守りたいものが山程あるぜ。

割り切っているのか? もしかして、この世界の人間じゃないと、割り切っているのか? そんな事はないぜ。俺なりに頑張っていると思うよ?

残したくないのか? 何を? 俺に関係する全てのものをか?

前の世界に残してきたものが大き過ぎて、この世界にも残す事に抵抗があったのか?

「リリ、細かい事じゃないんだ。

リリ自身、リリの人生の事だ。

でもリリ、忘れちゃ駄目だよ。僕達は皆リリが大切だ。リリの家族なんだ」

フォルセに大きな爆弾を落とされた。

あれから何度季節が移り変わっただろう。

俺は、魔術アカデミーに進学し錬金術科を選択した。

医学はレピオスに、魔法はシオンに教わっていたが、錬金術だけ本格的に学んだ事がなかった。

だから、やってみたかったんだ。だって、錬金術だぜ? 超ファンタジーじゃねーか。夢が広がるぜ!

そんな理由で選択したのだが、俺にはセンスが全くなかった。

「リリアス殿下、どうされました? 選択科を変更される方が宜しいのではないでしょうか?」

なんて、担当の教授に言われたよ。最後まで頑張って卒業したけどな。錬金術で俺が1番得意で唯一褒めてもらったもの。

それは、水だ。水を作るのだけは上手かった。水と言っても純水だぜ。混じり気のない水だ。だが、水だ。俺にとっては黒歴史だ。

なのに、その後アカデミーの客員講師になった。

錬金術科を卒業したのに、魔術研究科と魔道具科の客員講師になったんだ。変だろ? どう考えても違うだろ?

何故、そうなったかと言うとだな。

俺が、7歳の時に知り合った魔術師団団長ウォルター・クリムエルが、魔術アカデミーの学長に就任したんだ。

それで、お呼びが掛かった訳だ。

そして、当然シオンは魔術師団団長に昇任した。

相変わらず、魔法の訓練はドSだ。シオンの訓練の後には、魂が抜けてしまったかの様な団員達が彼方此方に倒れている。決して近寄ってはいけない。

魔術アカデミーで、客員講師をしながら俺はやはり医師と言う職業を諦められなかった。

ずっと、レピオスに師事していた。母と一緒に街でボランティアもした。

回復術師に掛かれない様な人達や、1人暮らしのお年寄りを訪問して診察したり回復魔法を施したりしていた。

孤児院の子供達に勉強や魔法を教えたりもした。

ジッとしていられなかったんだ。

前世では普通に助けられた命が、この世界では呆気なく失われていく。

回復魔法と言うとんでもないものがあるのにも拘らずだ。

母の行動力に引っ張られながら、いつの間にか色んな事をしていた。