軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

362ー10年前

「お帰りなさいませ。思ったよりも早かったですね」

「レピオス、ただいま」

俺達はまた転移で戻ってきた。一度実際に行った事がある場所にしか転移できないので、明日帰るよ〜! とレピオスに魔道具で知らせておいたら、わざわざ鉱山近くの宿屋まで迎えに来てくれていた。

「クーファル殿下もリリアス殿下も良い事がありましたか?」

おや、レピオス鋭いね。

「わざわざ転移して戻って良かったと言うところだろうか。ねえ、リリ」

「クーファル兄さま、そうですね」

「それはそれは、良かったです。戻られる時は少しイラついてらしたので心配しておりました」

「レピオス、有難う。レピオスはこっちで何してたの?」

「リリアス殿下、オリクト伯爵と昔話をしておりました」

そっか。オリクト伯爵はレピオスの後輩だと言ってたな。

「オリクト伯爵もお待ちです。一旦、伯爵邸へ参りましょう」

「レピオス、分かった」

「クーファル兄さま、オリクト伯爵はレピオスの後輩だそうですよ」

「そうなのか。それは奇遇だね」

鉱山近くの宿屋から3〜4時間程だろうか。馬車で移動してオリクト伯爵邸に到着した。

「クーファル殿下、リリアス殿下。ようこそお越し下さいました。殿下方には、フィオン様のご婚姻の際にご挨拶させて頂きましたが覚えて頂いておりますでしょうか?」

「ああ、もちろんだ。オリクト伯爵。待たせてしまってすまない。宜しく頼む」

「リリアスです。宜しくお願いします」

「おぉー! リリアス殿下、大きくなられましたな。レピオス殿から色々お話を伺いました」

おいおい、レピオス。何を話していたんだ?

「恐れながら、私の事を『心の友』と言って下さるお可愛らしい殿下だと」

「えー、レピオス。可愛らしいは駄目」

「ハハハハ、まだ駄目と仰いますか」

「当たり前じゃん。ボクは男の子だから、可愛いは駄目」

「アハハハ、なんとお可愛いらしい」

「オリクト伯爵、だから可愛いは駄目です」

「これはこれは、失礼致しました。

ご紹介致します。妻のエスメラルダに、息子のアセーロ、嫁のマテーリエに孫のシュタールとアシエに御座います」

スターリ・オリクト伯爵。レピオスの二つ下の後輩だ。

アイアンシルバーの髪にダークグレーの瞳。眼鏡の似合う、落ち着いた研究職の様な伯爵だ。

と、言うのもレピオスは医療の現場の人間だが、オリクト伯爵は研究者だったそうだ。

学園の初等部に入る前に夫人と婚約。幼い頃から、前オリクト伯爵に気に入られアカデミー卒業後にオリクト家に婿養子に入った。元は、オリクト伯爵領近くに領地を持つ伯爵家の三男。この近辺の領主達は色々と交流があるらしい。

鉱山経営をしながら領地を治めているが、もちろん医学や薬学にも長けている。

婚姻のきっかけは、前オリクト伯爵に気に入られたからだが仲睦まじいご夫婦だ。

オリクト伯爵が治めている領地にある、帝国で最北の鉱山は北の山脈の始まりにある。つまり、山脈に少し入った所にある。

その上、崖に囲まれたカール(圏谷)になっている。山の斜面をスプーンでえぐったような地形だ。

その底に、山脈側に向かって坑道の入口がある鉱山だ。

「リリアス殿下、実は我が領地は薬草も沢山採れるのです」

「薬草ですか?」

「はい。鉱山のあるカールの底に珍しい薬草が自生しているのですよ。学生の頃に学んだ事が活かせております」

「そうなのですね! それは素晴らしいです」

薬草かぁ。またフレイの奥さんシャルフローラが飛びつく話題だな。

「有難うございます。薬草をそのまま卸すだけでなく、薬湯や粉薬も作っております」

「それは凄い」

「ああ、そう言えば。ビスマス鉱山に行かれた時に鉱夫長のエルツには会われましたかな?」

エルツ? 狼獣人だよな。クーファルを見る。

「ああ、案内してもらったが」

「クーファル殿下、そうでしたか」

それから、オリクト伯爵は……

「少し昔話になりますが……」

と、言って話し出した。

10年前、北の地域では短い夏がそろそろ終わりそうな気配のし出した頃だったそうだ。

「伯爵! オリクト伯爵!」

「おや、ビリューザ子爵。忘れ物でもされましたか?」

「伯爵! どうか見て頂けませんか!? 酷く衰弱しているのです!」

オリクト伯爵は、何事かと思ったそうだ。つい先程、鉱山の視察と研修を終えて荷馬車で帰って行ったビリューザ子爵が戻ってきて何やら慌てているのだ。

衰弱していると言うのだから病人がいるのだろうと思い外に出てみると、ボロボロの服を着た痩せた男が、女性を大事そうに抱き抱えて荷馬車に乗っていた。

その女性も何があったのか、ボロボロでまるで死んでいるかの様に真っ青で動かなかった。

「どうされた!?」

「伯爵、ポーションを飲ませたのですが吐いてしまって。まだ息があるのです! 助けられませんか!?」

「直ぐに医務室へ!」

伯爵が言うと、側にいた者が子爵達を案内する。

「私は息子達を呼んでくる!」

たまたま運が良かった。

その日は、子爵を送り出したばかりで伯爵夫人も息子夫婦も一緒に鉱山に来ていたのだ。

息子の嫁、マテーリエ・オリクトは弱いながらも光属性をもっていた。そして、ヒールを使える人だった。これが、幸運だった。

「アセーロ! マテーリエ!」

「父上、慌ててどうされました?」

「アセーロ、マテーリエ。病人だ。見てくれないか?」

「お義父様、医務室ですか?」

「ああ。マテーリエ、頼む」

「はい!」

伯爵も伯爵夫人も一緒に息子夫婦は医務室へと急ぐ。

「まあ! なんて酷い! とにかくヒールしてみます。お義父様、薬湯をお願いできますか?」

「ああ」

嫁に言われるまでもない。オリクト伯爵は薬湯を作る為に、ベッドに寝かされている女性の状態を注意深く診ていた。

「お父様、宜しいですか?」

「ああ、構わない」

「ヒール」

フワリと女性の身体が光った。

「マテーリエ、もう一度だ」

「はい、お義父様。ヒール」

またフワリと光った。少し、女性の顔色が戻ってきた。

「マテーリエ、もう一度」

「はい。ヒール」

フワリと光る。幾分か顔色が戻り呼吸も落ち着いた様だ。

「よし。私は薬湯を作る。エスメラルダ、彼女を頼めるか?」

「はい。お任せ下さい。体温ですね」

「ああ、そうだ。温めてほしい」

伯爵は隣の調薬室へ入って行った。

その間に伯爵夫人は使用人だろう女性に指示を出す。

「男性は部屋から出て下さいな。身体を拭いて着替えさせますからね」

何もする事のない男性達は部屋を出て行く。

「俺の妻なんです。側にいます」

「いいから任せなさい。貴方が此処にいても出来る事はないわ」

「母上の言う通りだ。さあ、外で待とう。君も身体を拭いて着替えなさい。食べられるなら何か食事を取る方が良い」

女性の使用人がお湯を持ってきた。仕方なく、男性達は部屋を出て行く。