軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

308ー実験

「シオン殿、魔術師団の事は聞きました。魔法の得手不得手は魔力量ではないと言う事です」

オクソール、知ってたんだ。

「我々もそうですが、どうも魔力量が多い程魔法が得意と言う様に考えがちです。しかし、そうとも言えません。

実際に魔力量が多い方が高位の魔法を発動できるのでしょうが、魔術師団の仕事はそれだけではない筈です」

確かにオクソールの言う通りだ。

魔力量がないと上位魔法は使えない。だが、繊細な魔力操作を必要とする仕事なら必ずしも魔力量が多くなくても構わない筈だ。

例の取り憑かれた彼女はその方面の研究者だ。

「とんでもなく魔力量の多いリリアス殿下より、私やリュカより魔力量の少ないシオン殿の方がお上手です」

あら、そこ? そこを比べちゃう? オクソールよ、俺はまだ10歳だからね。

「はい。オクソール様の仰る通りです。我々は大事な事を見逃していたのですね。その事に対しての、今回のお叱りだと」

「さあ、私は分かりませんが」

「オク、精霊の眼を貰ってから何か変わったね」

「殿下、そうですか? しかし、あれは本当に世界を変えてしまう程のものですから」

「は? リリアス殿下! その精霊の眼とは何ですか!?」

ヤベ、また墓穴掘ってしまったよ。

「ルー様に頂いたのですよ。殿下が持っておられる鑑定の最上位らしいです」

「はあ!? オクソール様、ルー様に!? 精霊様にですか!?」

「おや、シオン殿はご存知なかったですか? リュカも頂きましたよ。マルチプルガードを」

「何ですか、それは!?」

「シールドの最上位だそうです」

「殿下……せめて、せめて一言でも良いので教えて頂きたかったです」

言葉は丁寧だが、シオンの目が怖い。とっても、怖い……

「え、シオン。言ってなかったかなぁ〜? アハハハ。」

「殿下、一言も、これっぽっちも。しかし、内容が内容なので他言する事は良くないのでしょうが。それはよく分かるのですが。

私は一切他言致しませんので、お話頂けるととてもと〜っても嬉しいのですが。如何でしょうか、リリアス殿下」

「はい、今度からはシオンに報告します」

コエーよ、シオンの目がさ!

「殿下、有難うございます。では、殿下。早速実験を始めましょう」

本当、今日のシオンはテンションが変だ。

「ボクがシオンに魔力を流せばいいんでしょ?」

「はい。そうですね。殿下は光属性がお強いので、本来なら私は発動できないヒールにでも挑戦してみましょうか?」

おや、それは面白そうだ。

「うん、いいね」

俺は、シオンの手を握る。ゆっくりと確実にジワジワと魔力を流す。一気に流すのは危険だと勉強したからね。

「おぉ! はいはい。入ってきますね。これが殿下の光属性ですか。あ〜、はいはい。では、早速」

シオンが、一つ深呼吸して静かに自分自身に向かって詠唱した。

「ヒール」

フワンッ……と、白い光にシオンが包まれた。

「殿下、シオン殿。成功ですね」

オクソールが精霊の眼で見ていたのだろう。実験の成功を確認してくれた。

「殿下! 素晴らしい!!」

「シオン、出来たね!」

「はい! 何かパチンと開いた気がしますよ!」

ん? 何だと?

「シオン、自分だけでやってみて」

「殿下、私は光属性は持ってないので無理ですよ」

「まあ、ダメもとで」

「そうですか?……ヒール」

またシオンが自分に向けてヒールを掛ける。フワリと白い光がシオンを包み込んだ。

「殿下、見てましたか?」

「うん。オク、見たよ」

「殿下、オクソール殿、何ですか? 出来ていませんか?」

「シオン、出来てたよ。ちゃんと発動してた」

「おお! 素晴らしい!」

確かに発動はしていたよ。

「ただね……」

「殿下、何ですか?」

「弱いね」

「弱いですか?」

「うん。ボクがやってみるから見ていて」

俺は自分にヒールを掛ける。

『ヒール』

ブワンッと白い大きな光が俺を包み込む。

「シオン、分かった?」

「はい、殿下。別物ですね」

「殿下のヒールは力強いですね。大きさも光の強さも全然違います」

オクソール、それだけ?

「殿下の場合、ヒールでは殆ど魔力量が変化しません。しかし、シオン殿は結構使われたのではないでしょうか?」

そうだよ。その通りだよ。

「精霊の眼は、そんな事まで分かるのですか!?」

「シオン、今大切なのはそこじゃない」

「あ、そうでした。殿下失礼しました。あれですね、ルー様が以前仰っていた使えば使うだけ上位になると」

「そうだよ。今まで使えなかったヒールが使えた。これは凄い事だよ。でも、今の威力だと剣で斬られた傷なんかは治せない。パワー不足だ。シオン、使いまくる事だね」

「はい、殿下!」

そう言えば、以前ルーが『もう少し魔力量が増えたらヒール位なら使える様になるかも』と、言ってたのを思い出した。

じゃあ、この実験は良いタイミングだったのかもな。シオン自身が何か開いた気がすると自覚していたし。

でも、実験は成功じゃないか? 大発見だよ、これは。

「でも殿下」

リュカ何だ? ややこしい事は言うなよ?

「実験は成功ですよね? これは、だからどうなんですか? 何か凄く役に立ったりするのでしょうか?」

あー、やっぱそう思うよねー。

「リュカ、出来る事が凄いの。出来るか出来ないかを調べる実験なの」

「要するに? 特別何もない、て事ですか?」

リュカ、それを言ったら駄目だよ。

「そうですね。この実験は私の好奇心と言う事でしょうか」

「なるほど。じゃあ、俺もできますか?」

「え? リュカ、何を?」

「殿下、俺も殿下の魔力をお借りしてヒールできますか? で、使える様になりませんか?」

「今の実験結果から推測すると、出来る筈ですね、殿下」

「シオン、そうなるね」

「殿下、殿下、俺も!」

リュカ、何キラキラした目をして手を出してんだよ。最初からおかしいと思ったんだよ。首突っ込んでくるからさぁ。

なんだよ、やりたかったのかよ。

「リュカ、ちょっとだけだよ?」

「はい! 殿下!」

俺は、リュカの手を取り魔力を流す。

リュカが自分に向けて詠唱した。

「ヒール」

………………あれ? あれれ?

「殿下! できないじゃないですか!」

「クフフフ!」

あー、オクソール。分かっていたな?

「リュカ、魔力量だけじゃないと言う事だ。お前はあまり魔法を使う機会がないだろう? 経験値やセンスも必要って事だな」

「何ですか、それはー!」

はい、残念でした! プププ!