軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

174ー出発

まあ、仕方ないさ。皇帝陛下の命令だからな。

しかし、あの父は飄々として何なんだ?

なのに、最短で最善の事を言う。

そりゃ、俺が必要なんだろうよ。第1王子を転移して救い出そう、て言うんだからな。

だがな、皇帝よ。もう少し考えないと、いかんよ。あの言い方は駄目だろう。

良い皇帝だから、なんでも許されるなんて事はない……と、俺は思う。

とにかく、何が起こるか分からない。

だから、俺は皆に結界に防御に状態異常をレジストする付与をしまくった魔道具を作る事にした。

毒を盛られる可能性だって、あるからな。

以前に即席で作った、ネックレスの進化版だ。バージョン2だ。もう、何度も作っているから、楽勝さ。

今回は、ユキ用の首輪も作った。もちろん、同じ様に色々付与している。

向こうでは、ユキは小さくなっていてもらわなきゃいけない。ユキのMAXの能力が発揮できない。

だから、ユキにも首輪型の魔道具をつける。

空間魔法も付与して、ユキが大きくなっても小さくなっても、対応可能な優れものだ。

騎士団はもちろん、父や母、クーファルにオクソールにリュカ、従者達にも同行する全ての者に魔道具を作った。

誰一人として、犠牲にはしないぞ。

そして秘密兵器、クーファルとソール、セティ、オクソールとリュカには一度だけ思った場所に転移出来る転移玉を渡した。

ルーと一緒に考えて作った物だ。

1個で、2〜3人は一緒に転移できる。

これがあるなら、俺行かなくてもいいんじゃね? て、アイテムを作ってしまった。

それと、もう一つ。

同じメンバーに、ピアス型の魔道具。

魔力を流せば会話出来る魔道具だ。

急いで作ったので、性能はあまり良くない。

ほんの数分程度しか、話せない。だが、即時に連絡を取る位なら、充分だろう。

このメンバーが、矢面に立つ可能性が高いであろうと予測してだ。

以上の魔道具を作っている間、シオンがずっと側でガン見していた。しかも身を乗り出して。目が血走っていてちょっと引く。

特にピアス型の魔道具だ。

離れた相手と話すと言う、発想自体がこの世界にはないんだ。

俺は前世の記憶がある。スマホが普通だった世界。

リアルタイムで情報を得られるのが、当たり前の世界。その感覚が、役に立った。

今回のイメージは、インカムだ。指でピアスを触り、魔力を流した時だけ会話ができる。

「これは革命が起こりますよ!」

と、シオンが目をキラキラさせながら言っていた。

まあ、無事に帰って来れたら、もう少し真剣に作り直そう。

簡単に、やられるつもりはないけどな。

そうして、出発まで忙しなく過ぎた。

「殿下、本気ですか?」

「うん。オクソール、もちろん」

「しかし……」

「決めたの。行くなら思い切りやらせてもらう。もう、シェフにも頼んであるし」

オクソールが戸惑っているのは、俺の考えた計画だ。

「リリ、良いかな?」

来た来た。クーファルだ。絶対にフォローしに来ると思ったよ。

「はい、兄さま」

「リリ、本気なのかい?」

「はい。もちろんです。駄目ならボクは行きません」

「リリ……何もそこまでしなくても」

「だって、落とし放題と言ったのは、兄さまです」

「そうだが……」

「兄さまは、普通に父さま達と行って下さい」

「リリ……分かったよ。気をつけるんだよ?」

「はい、兄さま」

「オクソール、リュカ。本当に頼んだ。リリを守ってくれ」

「はい、殿下」

「はい。もちろんです!」

「兄さま達も、気をつけて下さい。絶対に、魔道具を外さないで下さい」

「ああ、分かっている。それと、リリ」

「はい。何ですか?」

「そろそろ、父上と話してあげてくれないかな?」

「嫌です」

俺は、プイッと横を向く。

「リリ……父上がどんどんボロボロになっていくよ」

「知りません。自業自得です」

「向こうで合流する時は、普通にして差し上げて」

「公式訪問なんですから、それは仕方ないです」

「そうか」

クーファル、悪いな。迷惑かけるな。

俺の我儘だ。

「クーファル兄さま、ごめんなさい」

「ん? どうした?」

「ボクの我儘です。兄さまに、ご迷惑掛けてしまいました。ごめんなさい」

「リリ、そんな事はいいんだ。リリはもっと我儘を言っても良い位だよ。

父上や兄様達が、リリに酷な事をしているんだから。すまないね……」

クーファルに頭を撫でられた。良い兄だ。分かってるよ。

クーファルはきっと、皇后様の方の血を継いでるんだな。うん、きっとそうだ。

さぁ、出発の日だ。

「リリ、本当に大丈夫なの?」

「母さま、大丈夫です。オク達もいます」

「母様は心配だわ」

俺は母に抱きつく。

「さあ、リリ。行こうか」

「はい、兄さま」

「リリ、父様はまだ許してくれないのかな?」

「母さまに何かあったら、許しませんから」

「リリー、父様だってリリの事は心配なんだ」

「父さま、母さまをお願いします」

「リリ……分かったよ」

俺はジッと父を見た。

皇帝だからって、父だからって、何でも許されると思うんじゃないぞ。

「母様はちゃんと守るから、リリも気をつけなさい。オクソール、頼んだ」

「はい、陛下」

俺だって分かっている。

3歳の時に前世を思い出して、もう4年だ。

この世界が、この帝国がどんな世界かなんて、とっくに分かっているさ。

それでも、俺がこんな態度で許されるのは、父があんな性格だからだ。

俺が、光属性をもって加護を受けているからだ。

本当なら、いくら父だと言っても、皇帝にこんな態度は許されないだろう。

しかし……しかしだな。

今回の父の態度は、許せなかったんだ。

良い皇帝だと思っているから、余計にだ。

自分でも、引っ張り過ぎだと思うさ。だけど、お前の子供だろ? て、思ってしまう訳だ。

向こうに着いて、公式に出る時はちゃんとするから。もう少しだけ、許してくれ。

俺たち一行は、丸1日かけて湖の近くの別邸に着いた。

俺が3歳の時に、少しの間滞在していた別邸だ。

ここから、リーゼ河の出入国の検問までまた1日かかる。

鉱山に爆弾を仕掛けた者達も、護送している。

「ニル、検問から先は母さま達と一緒に行ってね」

「お断り致します」

「え!? ニル?」

「私は、リリアス殿下の侍女ですので」

「ニル、危険だから」

「殿下も危険です」

「ニル、お願い」

「お断り致します」

「殿下、無理ですよ」

「オク……」

「はい、オクソール様の仰る通りです。無理ですから、殿下が諦めて下さい」

「ニル〜……」

「殿下、以前に申しました。私達は、ちゃんと強いです。私にも、殿下をお守りさせて頂けませんか?」

「ニル……分かった。でも、ボクの為に命を犠牲にするのは、絶対に駄目だからね」

「はい。承知しております。皆、一緒に無事に戻りましょう」

「うん。ニル、ありがとう」

もう、ニル。本当に良い子だ。オジサンは涙が出るぜ。うちの息子の嫁にきてほしいわ。前世の息子だけどな。