軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔物殲滅戦

俺が良い方法を思いついてから30分後、

マリーナとハルが交代して淡々と魔弓を射続けていた。

「おぉい、マリーナ、そろそろハルにも代わってやってくれ。ハルも弓を使えるんだから」

「待て、イチノよ。あの目に傷のある牛、おそらく牛のボスに違いない。あの牛を射止めてからだ」

マリーナが弓を構えて目に傷のある少し大きめの牛を射止めた。

そして、魔弓をハルに渡して交代。

迫りくる魔物。

その魔物達があと五百メートルにまで迫ったら、

「よし、キャロ、外すぞ」

キャロの誘惑士の職業を農家に変更。

誘惑士がなくなったことで、魔物達は東を目指す。

先頭にいた足の速い魔物は後ろにいる魔物を追い抜こうとするが、うまいこと抜かすことはできない。

もう大渋滞。魔物達は混乱の極みだ。

ハルの放った弓が大型の魔物の足を撃ちぬき、敵の集団のど真ん中で倒れた。

それが、さらに魔物の動きを鈍くする。

そして、魔物達がある程度遠ざけることができたら、俺は再度キャロの職業を農家から誘惑士に変える。

さらに魔物は反転。

「ハル、後ろからも来ているぞ!」

「はい!」

ハルが後ろから近付いて来た狼のような魔物を風の矢で打ち抜く。

後方は風上のため、魔物が来ることはあまりない。それでもたまにくる魔物はいるのだが、一匹や二匹、多くて五匹程度のため、簡単に対処できる。

そして、ある程度魔物が団子状態になったところで、

「じゃあ、行くぞ!」

俺は手に魔力を集中させる。

スキル、魔力ブースト。

数倍のMPを消費し、一定の時間ためないといけないため使いどころがあまりなかったスキルだが、これだけ時間があり、しかも一か所に固まった魔物がいれば使えるからな。

俺は目を見開き、魔物の群れの中央に向けて手を前に突き出した。

手のひらに集まった魔力が視認できるくらいに濃度を増す。

紫色のオーラが、赤く染まったのを確認し、俺は叫んだ。

「ブゥゥゥストファイヤァァァァっ!!」

【ファイヤーの熟練度レベルが2に上がった】

熟練度アップのメッセージが流れると同時に、巨大な火の玉が魔物の群れ目掛けて飛んでいき、大爆発を起こした。

と同時に、俺は倒れた。

「ご主人様!」「イチノ様!」「イチノ!」

三人が俺のことを呼ぶが、俺は地面におでこをつけて手を振った。

「大丈夫大丈夫……ただのMP切れ」

あぁ……ひっさしぶりだ、この倦怠感。

ただ、完全にMPが0になったわけではないのでまだ意識はある。

俺は起き上がり、座った。

そこにあったのは一つのクレーターだった。

直径500メートルくらいある。

残っているのはぎりぎり範囲外にいた数匹の魔物だけか。

その魔物を、ハルの風の矢が撃ちぬいた。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【魔術師スキル:光魔法が光魔法Ⅱにスキルアップした】

【職業:火魔術師が解放された】

【職業:水魔術師が解放された】

【職業:風魔術師が解放された】

【職業:土魔術師が解放された】

【法術師スキル:メイス装備がメイス装備Ⅱにスキルアップした】

【法術師スキル:盾魔法Ⅱが盾魔法Ⅲにスキルアップした】

【法術師スキル:回復魔法Ⅳが回復魔法Ⅴにスキルアップした】

……あぁ、法術師なんて、レベル1だったのにもう48になってる……魔術師も63になってる。

無職も85まで上がってる。

そろそろ無職を極めることができそうだ。

はやく極めて無職を卒業したい。

キャロの職業から誘惑士を外し、俺は一息ついた。

魔物はこれで全てということはないだろう。

それでも、暫くは持ちこたえられるはずだ。

そう思ったその時だった。空から鳥のような影が迫ってきていた。

おいおい、また敵かよ。

まぁ一匹ならハルの矢で打ち抜いてもらえば……そう思ったが、俺は驚いた。

空から来るのは鳥ではなかった。

プテラノドン――翼竜のような姿の魔物。

「ワイバーンかっ!」

おいおい、ここでそんな強敵っぽい魔物が来るのかよ。

「ハル、迎撃を頼む。倒せないようなら、マイワールドへの扉を作る。たぶん、それで俺のMPは完全に尽きるから、中に運んでくれ!」

「いえ、ご主人様、大丈夫です。あの魔物は敵ではありません」

「え?」

ハルの言葉に、俺は空を再度見上げた。

あ、ワイバーンの背中に誰かが乗っている。

銀色の鎧を着た黒髪のイケメン野郎がいた。

「君は!? 楠君じゃないか!?」

俺の名前を知っているだと!?

と思ったが、よく見たら俺もそいつには見覚えがあった。

「久しぶりってほどでもないか」

俺はワイバーンに乗る男に手を振った。

【聖騎士Lv41】になっているその男。

上級職で高レベルならレベルが上がりにくいはずなのに、レベルが2も上がっている。

いったいどんな修行をしたのだろうか?

「元気にしてたか、鈴木」

俺が言うと、高さ三メートルくらいから鈴木が飛び降りてきた。

「あぁ、元気……かな、いろいろと大変だったんだけど、魔物の群れがフェルイトに迫っているって話は聞いているかな? 僕はその魔物を退治するためにここに来たんだけど、ここを通らなかったか?」

「あぁ、その魔物の群れなら全部やっつけた……おかげでMP切れでこのざまだ」

「全部!? 君が全部やっつけたのか?」

「……なぁ、鈴木、マナポーションを持ってたら分けてくれないか? このトマトやるから」

「あぁ、もちろんだよ。貰ってくれ」

鈴木は薬瓶を取り出して俺に渡してくれた。

助かる。

マナポーションを受け取り一気に飲んだ。

おぉ、体のダルさが一気になくなり、軽くなる。

代わりに、トマトを渡したが、鈴木が渋い顔をする。

「……どうした?」

「いや、僕はあまりトマトは好きじゃないから……これはマイルに渡しておくよ」

そう言って、アイテムバッグにしまった。

あの旨いトマトを食べないとは、勿体ないな。

「そういえば、そのマイルたちはどうしたんだ?」

「彼女達は町の防備に回ってもらっている。僕は少しでも魔物を倒そうと遊撃に来たんだが――」

「必要なかったな」

「うん、必要ないならいいんだ。これから僕は魔物の湧き出る迷宮に向かうつもりだ。もしよかったら君も来てくれないか?」

鈴木の誘いに、俺は後ろにいるハル達を一瞥した。

彼女達は俺が行くと言えばついてくるだろう。

ただ、迷宮の中まで入ってしまえば、先ほど使った作戦は使えない。

どうしたものか。

「無理にとは言わない。僕も元凶をどうこうできるとは思えない。ただ、あの迷宮の中に五人の人間が閉じ込められているらしくてね、彼らだけは救出したい」

「知り合いなのか?」

「いや、直接の面識はない……あの猫使いの男性は覚えているだろ? 彼の姪御のミルキーという女の子とその友達のフリオ、スッチーノという男の子……」

鈴木は一拍間を置き、

「あと、ジョフレとエリーズという冒険者が閉じ込められているようなんだ」

「……ジョフレとエリーズが!?」

思わず声をあげた。

あのバカップル、フェルイトにいるはずなのにまったく姿を見せないと思ったら、そんなところで何をしてやがるんだよ。

「知り合いなのか?」

「……あぁ……助けないわけにはいかないか……無理そうなら見捨てるがな」

俺はそう言って頭を抱えた。