軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険者始めました その12

ミュルト魔導王国。

古代の時代、かつて魔王ファミリス・ラリテイが歴史の表舞台に立つより遥か昔に魔導王朝ミュールと呼ばれ北大陸の大半を支配していた大国を源流に持ち、かつての技術を失っても尚、その栄光に縋り、その結果歴史に取り残された国である。

というのがミリから聞かされた話。

そして、この国は発掘することに成功した。

かつての技術が、かつての魔道具が残っていた秘密の倉庫を。

そこには、様々な技術が、魔道具が残されていた。

他人の職業を奪う宝玉、他人の姿に化ける腕輪、探している人物を見つけ出す鏡や、巨竜を一撃で葬り去るような槍まで存在した。

ミュルト国王は、魔導王朝ミュールでさえも成し遂げることができなかった北大陸征服に乗り出す決意をした。

その第一段階として聖女の力を奪うことにした。

自分の娘に聖女の力を奪わせて隣国を混乱に陥れ、その隙をついて隣国を侵略する手筈であったが、すべて失敗した。

――という話を、俺はすべての元凶であるミュルト国王本人から聞かされたのだった。

「話した、全部話した! だから、どうか命だけは助けてくれ!」

いや、殺さないって。

でも、怖がるのは無理もない。

なにしろ、フェンリルが大きな口を開いていて、口を閉じればその牙がミュルト国王の首上をパックンチョしてしまう状況になっていたから。

国王の顔は涎塗れになっている。

さっきまでは泣き叫んで周囲に助けを呼んでいたが、近衛兵を含め、全員気絶しているうえに、目を覚ました途端に新たに気絶させられているから、諦めているようだ。

近衛兵だけではない。

この城の騎士、衛兵含め戦闘職の全員が気絶している。

もちろん、ミリとハルの二人にやられた。

ミリとキャロ、二人が合わさったら世界中の情報が丸裸になるって言ったけれど、ミリとハルの二人が合わさったら国の警備網まで丸裸だな。

「命だけね。うん、いいわよ、助けてあげる」

仮面を付けたミリは、ミュルト国王の顔を覗き込んで、満面の笑みでそう言った。

「じゃあ、次は泣きながら、今すぐ殺してくれって言うまで、いろいろとやってみましょうか。五十二耐えられるかな?」

「ミリーナ様、五十二とはトランプの枚数でしょうか?」

仮面を付けたハルの問いに、ミリは満面の――邪悪な笑みを維持したまま答える。

二人とも仮面をつけて偽名を名乗っているのは、一応身バレ防止のためだ。

「良い質問ね、ハルート。もちろん、人間の歯と爪の数を合わせた数字よ。大丈夫、歯は一気に抜いたりしないで、まずは中心に穴を開けてぐりぐりとするくらいはしてあげるし、歯の無い部分は歯茎を削って神経ぐりぐりしてあげるから。あ、私が調合した精神安定剤を使えば、痛覚はそのままだけどショック死することも痛みで気絶することもないから、命だけは助けてあげることと矛盾しないわね」

そして、ミリは国王の口に、苦そうな緑の液体を流し込んだ。

国王の顔が青いのは薬が苦いせいか、恐怖のせいか。

「さて、まずは爪と歯、どっちがいい? そうだ、ハルートがいいヒントをくれたわね。トランプを使って決めましょうか。五以下の数字なら爪、六以上の数字なら歯を抜いて……あ、ジョーカーが出たら髪の毛を全部抜いてあげるわね。さて、何が出るかな? ハートの六ね、残念、最初は爪からにしてあげたかったんだけど、でもどうせ最後には全部抜くんだから一緒よね。じゃあ、まずはこの錆びたアイスピックを使って歯に穴を――」

「やり過ぎだ」

俺はミリの頭にチョップを打ち込む。

一体、こいつはどこの悪魔だ……いや、元魔王なのは知ってるけど。

「むぅ、でもこいつのせいで私とおにいの迷宮デートが台無しになったのよ?」

「いや、今回はハルートとのデートでミリーナはおまけだっただろ。ほら、今度東大陸に行って、お前が好きだった蜂の子買ってきてやるから」

東大陸の一部の国では虫食文化が根付いていて、いろんな食用の虫が売られている。中には日本でよく見る虫もあって、ミリの大好物だったりする。

「タガメも?」

「……あれが食卓に並ぶと俺の食欲がなくなるから、イナゴで勘弁してくれ。佃煮に調理してやるから」

「……うん、わかった、それで許してあげる」

ミリが少し渋る様子を見せながらも納得してくれた。

さて――

「ということで、国王さん。侵略戦争なんてしたら、こんなやばい奴がしゃしゃり出てくることになるから気を付けろ。次は止めないからな」

国王は何度も勢いよく首を振る。

フェンリルの涎が飛ぶから勘弁してほしい。

俺は自分に 浄化(クリーン) をかけ、ミリにフェンリルをしまわせた。

あと、ミュルト魔導王国が所持していたヤバイ魔道具類は全部回収させてもらった。

※※※

「イチノジョウ様、ミリュウ様、ハルワタート様、ありがとうございました」

「諜報員を捕まえたことで、俺たち、国王から報奨金貰えたんだぜ?」

「全部、皆さんのおかげだけどね。あ、キャロルさんにもお礼を伝えてください。本当にありがとうございました」

ナターシャ、ルート、ラインがそう言って俺に頭を下げた。

ナターシャは無事、聖女に戻り、これから教会の人間と一緒に南大陸の大聖堂へ巡礼の旅に出るらしい。ラインとルートも護衛として同行する。

彼らの実力が認められたら、教会騎士として雇ってもらえるそうだ。

きっと彼らなら大丈夫だろう。

彼らが正式に教会騎士として採用されている頃には、 拠点帰還(ホームリターン) に表示されているナターシャの名前も消えているはずだ。

「それにしても、普通に冒険者をするだけのはずだったのに、なんでこんな大事件に巻き込まれるんだ?」

「おにい、冒険者に向いてないんじゃない?」

「ぐっ――向いていない……過去のトラウマが蘇る。面接官に何度言われたことか?」

君、この仕事向いていないと思うよ。

他の職種を探したほうがいいんじゃない?

その言葉は俺の精神に多大なダメージを与え続けた。

「そんなことはありません。ご主人様は普通の人にはできない冒険をいろいろなさる方です。きっと、誰よりも冒険者に向いているんだと思います」

「ありがとう、ハル。俺、もう少し頑張ってみるよ」

ハルの言葉に励まされ、俺は冒険者として活動をする決意をしたのだが、そのせいで世界を揺るがす大惨事に巻き込まれることになるのだが、それはまたいつかの機会に。