軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険者始めました その10

部屋を出て通路を走る。

一応、毒を警戒して、いつでも解毒魔法のキュアを使えるように準備していたのだが、やはり偽ハルの嘘情報だったらしい。

気配を頼りに進む。

近くの部屋から気配を感じたのでそこにいると、修羅場になっていた。

「ライン、なんでこんなことをするんだ」

腕を怪我しているルートと、槍を構えるライン。

そして、ナターシャは二人を遠くから見て涙目になっていた。

最初に俺の存在に気付いたのはナターシャだった。

「……イチノジョウ様!」

「「え?」」

ナターシャの声に、二人も俺に気付いてこっちを見た。

「聞いてくれ、イチノジョウさん! 急にラインが攻撃をしてきて」

「違う! 先に僕を攻撃してきたのはルートの方です!」

俺はそれを聞いて、状況を理解した。

「ああ、ドッペルゲンガーが化けてるんだ」

俺がそう言うと、ラインとルートは同時に声を上げた。

「俺が本物だ!」

「僕が本物です!」

息が合ってるな。

もうこのコンビでいい気がしてきたが――

「何言ってるんだ、攻撃してきたのはラインだろ! 怪我をしているのは俺じゃないか」

「違う、僕はルートが剣で攻撃をしてきたときに反射的に槍で払っただけです! 傷はその時に――」

ああ、うん。

どっちの言い分も正しいように聞こえるが、推理をする必要はない。

職業鑑定を使えばいいだけの話だ。

ドッペルゲンガーは職業が表示されないからな。

「ああ、偽物はこっちな」

俺は闇魔法をルート――偽ルートにぶっ放した。

死体は残らず、代わりに魔石が残る。

あれ? 今回はレベルが上がらない――って、あぁ、そうか。

「魔石……やっぱりルートの奴、偽物だったんですね」

「待ってください、では本物のルートさんはどこに?」

「たぶん別の部屋だろうな」

とその時、通話札が鳴った。

『ご主人様、ハルです。偽者のラインさんと戦っていた本物のルートさんを保護しました、』

「おぉ、ルートも無事か。でも、どうやって本物だってわかったんだ? 贋作鑑定、それともにおいか?」

『贋作鑑定は生物には使えません。両方とも気絶させました。偽者は変身が解けました』

ルート、気絶させられたのか。

ドンマイ。

それにしても、気絶したら変身が解けるのか。

「こっちはラインを保護したから、偽物のラインがいたら遠慮なく倒していいぞ」

『かしこまりました』

そして、通話札は終了する。

「……イチノジョウ様、すみません。勝手に宝箱を開けたせいでこんなことに」

「僕もごめんなさい」

「いや、謝るのは全員揃ってからだ」

俺はそう言うと愛刀、白狼牙を抜いて、スラッシュを発動。

剣戟が飛んでいき、ピコっと音が鳴った。

ピコピコハンマーを発動させたのだ。

「イチノジョウさん、何を――」

「よく見ろ、ナターシャも偽物だ」

ナターシャだったそれは、黒い巨大カエルみたいな姿になっていた。

グロい、これがドッペルゲンガーの元の姿か。

……俺、さっき揉んでいたのって、このカエルの胸だったのか。

この姿だったら普通に倒せるな。

と俺は竜巻切りでドッペルゲンガーを切り裂いた。

【イチノジョウのレベルが上がった】

「じゃあ行くか」

「行くってイチノジョウさん、床とか壁とかボロボロになってるんだけど、やりすぎじゃないですか?」

見ると、壁も床も、さらには天井も、壊れてはいないけど表面がボロボロになってる。

あれ? 威力が強すぎる……って、あぁ、職業が壁を壊したときのままだったか。剣神とか入ってるし、そりゃ威力強すぎるな。

俺は職業を元に戻した。

「じゃあ行くか」

「同じことを二回言って誤魔化してますよね?」

図星を突かれたので、無言で誤魔化した。

そして、通路に出て走った俺は、直ぐにハルとルートを見つけた。

「ご主人様!」

「ハル!」

よかった、ハルとも再会できた。

そして、ルートとラインも、

「ルート!」

「ライン!」

「「本物だろうな!?」」

相手を疑ってかかった。

大丈夫、本物だ。

「ルート、ハルに気絶させられたみたいだが大丈夫か?」

「あ、はい。クビが少し痛いですが、大丈夫です」

「そっか。プチヒール」

ハルなら手加減を間違えることはないだろうが、とりあえず回復魔法をかけてやった。

そしてさらに進む。

全員この階層にいたってことは、ナターシャもこの階層のどこかで、恐らくルートかラインの偽者と一緒にいるに違いない。

騙されて殺される前に保護しないと。

「ご主人様、本物かどうかはわかりませんが、あちらからナターシャさんの――」

「見つけたか!」

「――大勢の匂いがします!」

……大勢?

意味がわからないがその部屋に向かってみる。

一番広い部屋、そこにハルが言う通りナターシャがいた。

五十人くらい。

「ナターシャがいっぱい!?」

「一体誰が本物なんだ!」

『イチノジョウさん、ライン、ルート、私が本物です!』

全員同時に声を上げた。

これだけいると壮観だな。

「これだけいても全員偽物だな」

全員職業が表示されていない。

念のため、ピコピコハンマーと竜巻切りのコンボで全員気絶させてみたところ、黒カエルだけが部屋に残った。

確認して全員殺す。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【チャンピオンスキル:王者の威厳を取得した】

【チャンピオンスキル:物攻増加(神+2)が物攻増加(神+3)にランクアップした】

【サバイバースキル:食いだめを取得した】

【サバイバースキル:痛覚遮断を取得した】

【サバイバースキル:根性を取得した】

【自由人スキル:縄抜けを取得した】

【自由人スキル:束縛無効を取得した】

【自由人スキル:麻痺無効を取得した】

【自由人スキル:混乱無効を取得した】

全部上級職だけあってレベルが上がりにくいはずなのに、さすがに五十匹全部倒せば経験値が半端ないな。

王者の威厳は、自分より弱い敵のステータスを下げるスキルだ。

食いだめは、満腹になってもさらに食事が可能になり、その時の栄養を後から消費できるスキル、痛覚遮断は痛みを無効化するアクティブスキル。

そして、根性はHPが0になる、つまり死ぬような攻撃を一度だけ無効化して、HP1で耐えるというゲームなどでよくあるめっちゃ便利なスキルだ……が、多分これを使うことはないだろう。

あと、自由人、バカにして悪かった。

ナターシャが到達特典として手に入れた縄抜けだけでなく、いろいろな状態異常を無効化できる便利な職業だったようだ。

遊び人の上位職なのに、全然遊び心がない。

「ご主人様、部屋の奥からナターシャさんの匂いが――一緒に偽者もいるのでおそらく本物のナターシャさんだと思います」

ようやくか!

どうやら無事のようだ。

それにしても、これだけドッペルゲンガーがいるのに、なんでナターシャは無事なんだ? 全員で一斉に襲われたら絶対に無事じゃすまなかっただろうに。

そんなことを考えながら、俺は部屋の奥に向かい、そこで見てしまった。

「ナターシャ、好きだ、愛している」

「……そんな……イチノジョウさんにはハルさんとキャロさんが、奥様が二人もいらっしゃるではありませんか」

「ハルもキャロも関係ない。いま、俺が愛しているのはナターシャ、いや、ナターリア、お前だけだ! 二人で逃げよう。公爵から追手がかかっても俺ならお前も守ってやれる!」

「……あぁ……イチノジョウ様……」

なんか、俺がナターシャを口説いていた。

ドッペルゲンガーの俺が、ナターシャの肩に手を回す。

いくらなんでもやり過ぎじゃないかって思うのだが、ナターシャ……まんざらでもない様子だ。

いまにも恋愛ムードから、そのままベッドインしそうな感じだ。

偽者の俺もエアクッションを使えるのだろうか?

俺がそんなことを思っている間に、いつの間にかハルが守命剣を抜いて偽物の俺の首を切り落としていた。

「え!? ハル様――何を……ってえ!? イチノジョウ様がもう一人っ!?」

「こちらは偽物、ドッペルゲンガーです」

「……ドッペルゲンガーだったのですか」

ナターシャは少し残念そうに呟いた。

「はい、偽物です。ですから、ナターシャさんはいまのことを全部忘れてください」

「……あの……ハルワタート様、怒っていらっしゃるのですか?」

「怒っていません」

「……ですが」

「怒っていません」

ハルの言葉の意味は聞くまでもない。

俺はドッペルゲンガーが落とした魔石を見て呟く。

「お前も俺の偽者なら、ハルのことは絶対に大事にしないといけないぞ……って、ん?」

魔石の横に、見慣れない白い球が落ちていた。

これって――と俺は宝石鑑定を使ってみる。

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真実の瞳

周囲にいる者の真実の姿を暴く宝石。

一度使うと砕け散ってしまう。

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