軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暇になってしまった

ダンジョンからの脱出は、先に俺ひとりでその場で作った転移札を使って脱出した。今後、脱出がかなり楽になるな。

いや、考えてみれば、ニーテは《 脱出(エスケープ) 》の魔法が使えるんだから、あいつがいるときはわざわざ札を作る必要もないんだった。

考えてみれば、札作成で作った札って、使い捨てなのに、他のスキルで応用できるものが多いな。

地下一階層でハルとキャロを召喚して合流した。

召喚することは伝えてあったので、入浴中のキャロを呼び出してラッキースケベとかそういうことはない。

地上に戻ったときは既に夕方になっていた。

キャロとの約束を守るため、展望台に向かう。入場料は一人十センスだったので、三人分支払った。

この明るさなら、まだ町を一望することができるだろう。

「これがエレベーターか」

螺旋階段がずっと続いている吹き抜けの部屋だが、中央ではエレベーターらしきものが上下している。

エレベーターらしきものと言っても、扉があるわけではなく、ただ一つの台が上下するだけの仕組みになっている。

どちらかといえば、上下に動くリフトみたいだ。一応、乗る台が乗降場に辿り着くと一時的に止まるようにはできているようだ。

この時間でも展望台に行く人はいるらしく、俺たちと一緒に、一組の男女カップルが同じエレベーターに乗っていた。

台が一番下に来たところで、乗り込んで上に上がっていく。

視点が上昇していくのは、鷹の目を使っているかのようだ。

「きゃぁ、怖いわ」

「ははは、僕がついてるから大丈夫さ」

女性が悲鳴をあげて男性に抱き着き、男性が腕をまわす。

驚いた、この世界にジョフレ&エリーズよりも腹がたつカップルがいたのか。

いや、これはただの嫉妬だな。

考えてもみれば、むしろ嫉妬されるのは俺のほうだろう。

ハルとキャロ、ふたりの美少女と一緒にいるのだから。

そう、両手に華だ。

「ポチに乗ったときのことを思い出せば怖くありませんね。私の足なら螺旋階段を駆け上がったほうが早いでしょうか。今度来た時はどちらが早く上までいけるか試してみたいです」

「エレベーターと建物の維持費として必要なのは一日三百センスくらいでしょうか。従業員の給料や緊急時のための蓄えを考えると――一日最低五百人の集客は欲しいところですね。展望台にレストランを誘致し、テナント料をもらったほうが経営的には安定するかもしれません」

ハルとキャロの反応がなんか違う。

特にキャロさん――デート気分で来たかったのではないのか?

「……ふっ」

でも、そうだよな。

これがハルの魅力だし、キャロの魅力だもんな。

どうだ、嫉妬するならしてみろ。

「ねぇ、あの三人おかしくない? 女の子は変なことばっかり言ってるし」

「男はニヤニヤしてこっちを見てるしな」

嫉妬はされていなかった。引かれていた。

確かにデートスポットで空気を読んでいないのはこっちの方でしたね、ごめんなさい。

台は最上階で止まった。展望台にもカップルや家族たちの姿が見えた。

高さ三十メートルと、東京タワーの十分の一もない高さだが、高層ビルどころか三階建ての建物すらほとんどないため、町を一望するには十分な高さだった。

町のあちこちに街灯が立ち並んでいて、ちょうど俺たちが見下ろした直後に点灯した。まるでマレイグルリという町全体が俺たちを歓迎してくれているかのようだった。

「絶景だな」

「はい。格子状に延びた道と通りごとに特色のある建物の屋根が夕日に照らされて――って説明する必要はありませんね」

「そうですね、キャロ。これは一言で十分でしょう」

ハルの言葉に俺は頷いた。

「あぁ、綺麗だ」

本当に綺麗な街並みだった。

これがマレイグルリなのか。

展望台の壁には、建物の説明が書かれている。

東部にある大きな三階建ての建物が教会兼庁舎か。

「この町は首都なのに王城はないのか?」

ツァオバールは王国だったはずだ。王国の首都ならば、城があって王族が住んでいると思ったのだけれども、よく見ると王族だけでなく、貴族が住むような家もない。

むしろ、鈴木が住んでいる家が展望台からも確認でき、そっちの方が広いことがわかる。

「はい。ツァオバールの城は一度落城して、南東部の山の上に城を築いたのです。魔王との戦いが終わった後、王家はダイジロウ様にこの町の自治を託したと言われています。この地に王城を再建するためのお金が残っていなかったのでしょう」

最後は俺にだけ聞こえるようにキャロが説明した。

お金がないから城を作れなかっただろうって、不敬罪が適用されても文句言えない台詞だもんな。

俺は苦笑し、外を見た。

「貴族たちもその山のふもとに、貴族街と呼ばれる町を作って、そちらに住んでいます。マレイグルリに住んでいる人はあまりいません」

まぁ、十数年前までこのあたりも激戦地だったのだ。

王族が住んでいないのも仕方がない。

財政的に落ち着いて来たら、再度この地に王城を築くことになるかもしれないが、それこそ百年単位で先の話だろう。

「…………っ!」

ハルが何かに気付いたかのように身を乗り出す。

展望台といっても、ガラスが張られているわけではなく鉄の柵しかないので、落ちるのではないかと驚いた。

「どうしたんだ、ハル」

「いえ、気のせいかもしれません。一瞬、タルウィが見えた気がしたのです」

「タルウィが?」

「直ぐに建物の陰に入ったので見間違えたのだと思います」

白狼族のタルウィとは、つい数日前にゴーツロッキーで共闘し、別れたばかりだ。ポチという高速移動手段がある俺と違い、通常の手段でマレイグルリに現れることはないだろう。

ハルが自分で言った通り、見間違いの可能性が一番高い。

展望台で景色を楽しんだ俺たちは、大切な仕事として冒険者ギルドにトラップドールの報告に向かった。

この中で冒険者はハルだけなので、報告は彼女に任せる。

トラップドールを討伐した証拠として、レアメダルを三枚、ハルに預けた。

受け付けで説明をすると、いきなり奥のギルドマスターの部屋に通され、そこまで大袈裟なことなのかと驚いた。

「上級者向けのダンジョン でも(・・) 複数のレアモンスターか……厄介だな」

ギルドマスターは俺たち三人から根掘り葉掘り話を聞き出した後、そう言った。

「でも、ということは他のダンジョンでもレアモンスターが目撃されたのですか?」

「あぁ中級者向けのダンジョンでも、初級者向けのダンジョンでも複数のレアモンスターが目撃されている」

まぁ、俺もフロアランスで、二回レアモンスターと遭遇してるし、珍しいことはないか。

「レアモンスターはとても珍しく、そして本来なら一体ずつ出現するはずなのに、妙ですね」

と俺の考えを否定するようにキャロが言った。

「ああ。初心者向けのダンジョンでは複数の怪我人が、中級者向けのダンジョンでは犠牲者も出た。上級者向けダンジョンでトラップドールが三体――被害が拡大する前に討伐してくれたことに礼を言う。だが、暫く、調査が必要だから、三カ所すべてのダンジョンを封鎖して調査をしないといけないだろうな」

「すべてのダンジョンを封鎖するのですか?」

「言っただろ、犠牲者が出ていると。本来、冒険者ギルドがダンジョンの入場を禁止することはないのだが、事態が事態だ。調査と上級者向けダンジョンの罠の解除を行い、問題がなければ封鎖は解除する」

「……はぁ」

そんなこともあり、即売会までの時間が暇になってしまった。