軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

浴衣でダンジョン攻略

ルリーナに頼んでパーティ設定してもらった。魔記者の札についてはリリアナがインクを用意した。

魔記者がいないからパーティ設定ができないって話だったはずなんだけど、と尋ねたら、ルリーナが魔記者に転職してレベルを上げたそうだ。

魔記者のレベルアップは文字を書くことだって聞いたけど、成長チートもないのに、どうやってレベルを上げたんだ?

「では、私は罠の発見と解除に専念させていただきますが、本当に経験値だけいただいてもよろしいのでしょうか?」

ララエルが尋ねた。彼女は現在、自分の耳を隠すために、昔、母さんが使っていたニット帽を被っている。ミリが持ってきたアイテムバッグの中に入っていた。

ララエルが申し訳なさそうにしているのは、今回のダンジョン攻略で彼女の担当が罠の捜索と解除だからだ。

戦闘については、さっきまでの遊びは無効とし、俺も参加する。

「いや、ララエルが罠に専念してくれるお陰で俺たちも楽に戦えるんだ。俺たちは三人とも罠に対しては無防備だし、それに、ララエルに分配しても経験値は十分入ってくるからな」

俺が魔物を倒したときの取得経験値は二十倍、ハルとキャロが魔物を倒したときの取得経験値は四倍となる。

経験値の分配は、まず魔物を倒した者が半分手に入れ、残りの半分をパーティ全員で分配する方式となっている。

そのため、ララエルのようにサポートに徹する者は経験値の取得が少なく、レベルが上がりにくい。

法術師のレベルが80になればディスペルという状態異常回復魔法を修得できるのだけれども、その魔法を修得しているのは世界に数人しかいないというのも、きっとそのあたりが関係するのだろう。法術師が魔物にとどめを刺すのは普通の戦いでは難しいだろうからな。

「それに、パーティに入れたら第二職業まで解放されるからな」

現在、ララエルは本来のエルフ弓士に加え、第二職業に罠師の上位職である罠術師を付けている。いまはレベル1だが、レベルが上がれば罠に関するスキルが増えるそうだ。

俺たちはダンジョンの探索を続け、二階層に辿り着いた。

一階層では宝箱の他は階段の近くに仕掛けられていただけの罠だったが、二階層では四つの罠を見つけた。そのうちのひとつはなんと落とし穴だった。

「これ、三階層に通じているのか?」

パッカリ開いた床と同じ形の落とし穴には、銀貨が固定されている。銀貨を拾おうと近付けば落ちる仕掛けだったらしい。

「そのようですね。無防備に落ちていればタダでは済まなかったでしょう」

「だな。足首くらいくじいていたかもしれない――でも、よく穴が掘れるな。迷宮の壁とか床って物凄い硬いだろ?」

「それがトラップドールの特技ですから。ララエルさん、お願いします」

「はい」

ララエルは道具を使って器用に落とし穴の枠を取り除く。すると、ダンジョンの床に開いた穴の側面から白いクリームのようなものが現れ、みるみる塞いでいく。そして、クリームの色はすぐに土色に変わり、他の床と変わらない色になった。

修復された床を触ってみると、まだ少し柔らかい。

「凄いな。本当にダンジョンは生きているんだな」

ダンジョンに放置されたものはダンジョンに取り込まれるという話を聞いたが、こうして修復される床もまた俺を驚かせる。

そう思っていたら、カチャカチャと金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。

現れたのは、 動く鎧(リビングメイル) だ。ダイジロウさんが発明した 動く鎧(オートマタ) と似た形をしている。

「中に札はないだろうな」

あの程度ならプチサンダーで倒せるだろ――と俺はアクラピオスの杖を構えたが、ララエルが止める。

「イチノジョウ様、あの 動く鎧(リビングメイル) の中に罠がしかけられています。もう少し距離を取ってから攻撃してください」

「鎧の中に罠が? わかった」

動く鎧(リビングメイル) は動きが遅いので、俺たちは走って距離を取った。

「プチサンダー」

一筋の雷の魔法が 動く鎧(リビングメイル) を貫いた。

その瞬間、爆発が起こった。大した威力ではないが、至近距離で爆発していたら無傷では済まなかっただろう。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【法術師スキル:回復魔法Ⅴが回復魔法Ⅵにスキルアップした】

「キュアサークル――広範囲の低級状態異常回復魔法か」

集団食中毒が起きたときに使えそうだな。

「ご主人様、魔石とインゴットです」

「ありがとう、ハル」

俺は魔石とインゴットを右手で受け取り、左手でハルの頭を撫でた。

浴衣の裾部分が揺れている。また尻尾を振っているようだ。

褒めた後にすぐ怒るのは、上げて落とすようなものなので、今回は注意するのは止めておいた。

「あの、ハルワタート様たちはずっとその服でダンジョンを攻略なさるのですか?」

確かに、浴衣姿でダンジョン攻略は不思議だろう。

でも、以前までの服も特別な布ではなく、ただの普段着だった。

「まぁ、この程度の敵なら万が一にもハルが傷つくことはないと思うからな」

本当は、ハルには頑丈な鎧や盾を持ってほしいと思っているんだけど、彼女は速度重視の戦闘スタイルだから重いものは着たがらない。

「それなら、頑丈な布を着るしかありませんね」

「いくら頑丈な布でも柔い布でも剣や魔法の攻撃を受けたら一緒だけどな」

それに、厚手の布を使った服は動きにくいらしく、やはりハルが嫌がる。

「それなら、我々と同じ方法で服を作ったほうがいいかもしれませんね。せめて剣くらい防げないと困るでしょうから」

「「「え?」」」

俺だけでなく、ハルとキャロも初耳だったらしく、尋ね返した。

まるで、ダークエルフたちの服なら、剣による攻撃を防げるような話だったから。

「はい、ダークエルフの秘術で服を作れば、衝撃や斬撃を全体に受け流すことができます」

「そうなのか? ちょっと触ってもいいか?」

「はい、どこでも好きなところをどうぞ」

そう言われて、はいそうですか、じゃあ胸を触らせてもらいます――と言えるような男ではないので、肩のところを触らせてもらった。

絹のような手触りで、攻撃を受け流せるようには見えない。

「重かったりはしないのか?」

「普通の服と変わりないと思います」

「そうなのか」

これなら、速度重視のハルでも、力のないキャロでも着ることができる。

ついでに、俺も軽鎧を着けているが、そこ以外は無防備なので着たいと思う。最近、俺の魔法の威力が上がりすぎて、余波で服が焼けるんじゃないかと心配になっていた。

ちょうどいいな。

「でも、ダークエルフの秘術なのだろ? 俺に教えてもいいのか?」

「秘術としていたのは、黄金樹を守る戦いとなったとき、戦いを少しでも有利にするためです。イチノジョウ様のマイワールドに住まわせていただいた時点で、秘匿にする必要はありません」

「それもそうか。じゃあ、頼むよ。必要なものはあるか?」

「素材はマイワールドで採れますから必要ありません。ピオニア様の協力を仰ぐ予定ですが、よろしいでしょうか?」

「ああ。あいつの服作りの腕は確かだからな。できれば俺たちの普段着とあまり変わらない服にしてくれると助かる」

浴衣姿のハルとキャロも魅力的だが、やっぱり普段の服のほうが魅力的に思える。

さらにダンジョンを進むと、宝箱が六つも置いてある部屋があった。

そのうち二つの宝箱は開いていて、四つ閉じていたが、その四つ全てから敵の気配がした。ミミックだろう。

罠の気配はないらしい。

「スラッシュ」

遠距離攻撃でハルがスラッシュを放つ。

宝箱が粉々に砕けた。砕ける瞬間、宝箱の中に能面のような白い面を被っている黒いものが現れた。どうやら、あれがミミックの本体だったらしい。

宝箱が壊されたのに中身はまだ生きているらしく、面がこちらを見ている。

仲間がやられたのを見たのか、残り三つの宝箱が同時に開き、同じく白い面を被っている黒いものが飛び出した。

「気持ち悪いな。スライムみたいだ」

「宝箱は外殻であり、中身は粘体――進化したスライムと言われています。まるでカタツムリみたいですね。ちなみに、どうして面を被っているのかは学会でも議論されていますが答えはわかりません」

「貝殻を壊されても生きているカタツムリを俺はしらないよ」

キャロの説明を聞いて、俺は毒づいた。カタツムリの殻をとってもナメクジにならないんだから。

「放っておけば、数日で体の表面が固まって宝箱の形になるそうです」

ハルが剣を構えて言った。

ミミックに関する雑学が増えていく。

宝箱の部分が皮膚のようなものなのか。

「 魅了(チャーム) 」

キャロが魔法を使った――直後、一匹のミミックが宝箱が壊されたミミックに襲い掛かった。彼女の魅了の魔法の効果で仲間割れを起こしたのだ。

思わぬ仲間の攻撃で全員隙だらけだ。

「プチストーン、プチファイヤ、プチウォーター、プチウィンド」

四属性の魔法を四匹のミミックに放ったところ、全て命中。

三匹のミミックをやっつけた。

「ミミックは土属性と闇属性に耐性があります。弱点は火と光です」

「じゃあ、プチライト」

瀕死状態のミミックにはオーバーキルだったらしく、一瞬にしてミミックは消え失せた。

「……イチノジョウ様は凄いですね。通常、魔法は一度使えばクールタイムが必要になるはずなのですが」

ララエルが驚き三分の一、賞賛三分の一、呆れ三分の一といった感じで俺を称える。

「あぁ、普通は無理らしいんだけど、魔法に関してはクールタイムを無視できるんだ。同じ魔法を連続で使うことはできないんだけどな」

第五職業まで解放されていることが原因らしいとコショマーレ様が仰っていた。

同時に魔法が使えるため、本来ならば特別なスキルが必要な魔法の融合を行うことができる。最初に行ったときはベラスラの町だった。

プチウォーターとプチファイヤを使ってお湯を作り出したのだ。

あの時は、自分が高度な魔法の使い方をしているなんて思ってもいなかった。

「イチノジョウ様、罠術師のレベルが上がって、広範囲で罠の場所がわかるようになりました」

「お、それは助かる。それで、このあたりの罠はあるか?」

「はい、僅かにあります。ですが、罠は下の階層に集中しているようです」

下の階層に集中している?

「どのあたりかわかるか?」

「ちょうどこの部屋の真下です」

真下か――ならば都合がいい。