軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

毛髪検査

DT勇者鈴木の活躍もあって、ロックゴーレム退治は僅か三分の攻防で終わった。カップラーメンよりも楽なものだ。

ちなみに、ジョフレとエリーズはずっと俺たちの応援をしてくれていた。

ステータスアップの効果があるエールスキルではなく、ただの声援だ。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【魔学捜査研究所員スキル:指紋発見を取得した】

【魔学捜査研究所員スキル:指紋検査を取得した】

【魔学捜査研究所員スキル:血液発見を取得した】

【魔学捜査研究所員スキル:血液検査を取得した】

【魔学捜査研究所員スキル:毛髪検査を取得した】

と、いろいろとスキルを手に入れた。

ここまでは簡単だったが、ロックゴーレムの残骸の中から、ゴーレムの核と呼ばれる物を掘り出す作業が面倒だった。

わざわざロックゴーレムの岩を砕き、中にある赤い宝石のような石を取り出す必要があるのだ。

ゴーレム核は、魔石と同じように魔道具のエネルギーになるのだが、こういう岩山で放置すればまた周囲の岩を取り込み、新たなゴーレムとして生まれ変わるそうなので、冒険者にとってゴーレム核の回収は義務なのだそうだ。

ある程度回収したところで、残りはジョフレとエリーズに任せて俺たちは休憩することにした。

それにしても、この魔学捜査研究所員のスキルって本当に独特だよな。

鈴木は鑑定だって言っていたけれど、微妙に違う。

まず、指紋発見――これは十日以内の指紋を見つけることができるスキルだ。

俺が持つ鞄を見たところ、指紋が山のようについていた。

そして、見つけた指紋について調べるのが指紋検査らしいのだけれども、この指紋検査をするには、いちど指紋を専門の道具で浮き上がらせないといけないらしい。

血液発見は、十日以内に血液のついたところが真っ赤に染まるスキルらしい。簡単にいえば、ルミノール反応を見るみたいなものだ。しかも、これは生活魔法の 浄化(クリーン) を使って完全に落としても見つけることができる。

ただし、これは魔物の血も含むため、鈴木を見たところ、全体が真っ赤に光って見えた。多分、最近大型の魔物を倒して返り血を浴びたのだろう。

ただし、血液検査を行うには、一定量の血液が必要だという(量が多ければ多いほど検査できる項目が増えるらしい)。

これらは使いどころが結構難しそうだ。

一番役立ちそうなのは、毛髪検査かもしれない。

これは、髪一本を消費することで、その毛の情報が得られるスキルだ。

試しに、手櫛で髪を整えてる仕草をし、抜け落ちた三本の毛を毛髪検査してみる。

すると、それぞれ別の結果が出た。

【個体番号:3193・2918・4141・1995・1713

毛髪年齢:25

性別:1】

【個体番号:3193・2918・4141・1995・1713

危険度:0・3・4・0

レベル:15】

【個体番号:3193・2918・4141・1995・1713

油分:23

毛根寿命:72】

と、このようにバラバラな結果が。

たぶん、個体番号、二十の数字がDNA鑑定みたいなものなのだろう。十の二十乗、一 垓(がい) 通りある数字だから、他人と一致することはまずないだろう。

ただし、この検査結果、見ればわかるかもしれないが、数字の意味がわからない。

危険度という項目。0がいいのか4がいいのか、そもそも危険度という意味はなんなのか?

油分って髪の油分? 数字の23ってどうなのか? 毛根寿命って、もしかしてハゲになるまでの時間ってこと? この数字は大きいのか小さいのか。何年大丈夫なんだ?

72歳に禿げ始めるってことなのだろうか? それとも、72歳に全滅するってことなのだろうか? それとも別の意味があるのだろうか?

ま……まぁ、気にすることはないな。髪の多さっていうのは多くの個性のうちの一つに過ぎないし、人間の価値、全てを示すものではない。

髪がなくてもカッコいいと思える人は多いし、スキンヘッドの頭が大好きな女性も多い。

わかるのは、性別の項目、男が1であろうということ。そして、レベルは、おそらく第一職業のレベルということだろう。

鈴木は魔学捜査研究所員の勉強をしたらしいから、この数字の意味はわかるだろうか?

と思ったけれど、毛根寿命の意味は知るのが怖くなった俺は、魔物と戦った疲れ(というより、ゴーレム核を取り出す作業の疲れ)もあって、その場で眠ることにした。

昼過ぎになり、俺たちは一度、ツァオバールへの検問所の近くに着地。

見張りをしていた兵たちは、突然のワイバーンの襲来に浮足立った様子だったが、その背中に俺たちが乗っているのを見つけると落ち着きを取り戻した。

鈴木はある程度低くなったところでポチの背から飛び降りると、兵たちに男爵の証だろうブローチを見せて事情を説明すると、再度ポチの背に飛び乗った。

「このまま行っていいってさ」

鈴木は白い歯を見せて笑いかけた。

「おぉ、コー、カッコいいじゃん!」

「うん、コー、カッコいいね! ジョフレの次に!」

ここで当然のようにジョフレを持ち上げるエリーズ。彼女はきっと、これを計算ではなく天然でやっているんだろう。本当にバカップルだ。

にしても鈴木の奴、無駄に飛び降りたり飛び乗ったり、普段からこんな無駄なパフォーマンスをしているのか? 主人公補正の天恵がなくても、やっぱりお前が主人公だろ。そりゃモテモテだわ。ステータスだけなら俺も同じようなことはできるだろうけど、きっと俺が飛び乗ろうとしたらそのままポチの頭上を通り過ぎて反対側に落ちてしまうという間抜けなことをしてしまう。

お前の爪の垢を煎じて飲みたいよ。

主人公になれなくても、もうすこし決めるところはしっかり決められる人間になりたいな。

俺はそう思いながら、ふとポチの背中に髪の毛が一本落ちていることに気付いた。

俺の頭から抜け落ちたのだろうか?

何の気なしに、毛髪検査を行ってみる。

【個体番号:3156・5913・9311・5312・3951

年齢:20

毛根寿命:40】

……ん? これは俺とは個体番号が別だ。

そして、この毛根寿命もまた俺とは違った。

「あれ? どうしたの? 楠くん。僕をじっと見て」

「いや、お前って良い奴だなって思っただけだよ」

俺は首を振って、微笑を浮かべた。

「そう? このくらいは普通でしょ?」

どうやら、鈴木は自分が代表して検問通過の許可をもらったことに対してお礼を言われたと思ったらしい。

俺の鈴木への好感度が大幅に上がった。

そうだ、ミリを助け出したら、育毛剤を調合してもらおう――そう心に決めて、俺たちはツァオバールの上空を南東に向かう。