軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

落としたくない

キャロ、キャンシー、シュレイルは留守番になった。

キャロには留守番をしてもらうつもりだと予め伝えていたので彼女から不平が出ることはなかった。

キャロには、このゴーツロッキーで手に入る情報という情報をすべて集めてもらうことにした。特に現在の魔王とミリ、ダイジロウさんの情報だけでない。前王妃についての情報もだ。

前王妃は十中八九魔王とつながりがあるだろうからな。

それと、人数が少なくなったことでひとつ大きな利点があった。

その利点は、国を出たときに明らかになった。

「――鈴木、こいつは」

「あぁ、ポチだよ」

ポチ――犬みたいな名前だが、そうではない。

鈴木の仲間のワイバーンだ。

前にフェルイトで乗せてもらったことがある。

「でかくなったな――いったいなにを食べたらこんなにでかくなるんだ?」

ポチの大きさは、前に比べて目に見えて大きくなっている。

「スーギュー一頭なら、三日もあれば食べてしまうよ」

「スーギュー一頭を三日か」

うちにいるナナワットよりもよく食べる奴だな。

これなら、俺たち全員なら乗って移動することも可能そうだ。

「今回、僕に依頼が来たのは、このポチの存在が大きい。魔王竜は空を飛ぶからね。魔王竜が逃げたときは、僕がポチに乗って追撃する手筈になっているんだ。勿論、乗って移動すれば、ランドウ山になら昼には到着するよ」

そりゃ速い。

俺たちはポチに乗った。前回より大きくなっているうえ、人数を絞ったおかげで広々と乗ることができる。

これならポチがアクロバット飛行しない限り振り落とされることないだろう。

真里菜がいたら、喜々としてポチをアクロバット飛行させ、見事に乗りこなしてみせただろうけれどな。

「ご主人様、後ろ失礼します」

「あぁ、落ちないようにしっかりくっついておけよ」

心配する気持ち七割、下心三割で俺はハルに言った。

「では、失礼するデス」

シーナ三号が俺の後ろにくっついてきた。

お前じゃねぇよ、と思ったが、ハルもしっかり俺の横に座ったので文句は言うまい。

「マスター、シーナの新しい体を作ったデスよね?」

「ん? あぁ、贋作スキルを使ってな」

「あれ、シーナの体よりかなり柔らかいデスよ? マスターの願望が入っているんじゃないデスか?」

「なっ!?」

そうなのか?

いや、贋作スキルだぞ?

贋作は見た目そっくりに変えることができるし、匂いも質感も変わらないってハルが言っていた。

俺の願望が入る隙なんてあるのか?

「これは楽しみデスね。マスター好みに作られた体で、マスターを篭絡するデス」

「妙なことを言うな」

鈴木とマイルからの視線が怖いんだよ。

マイルは修道女特有の堅物さから怒っているのだろうけれど、鈴木の場合はもっと別の理由だな。

……もしかしなくても、鈴木の奴はDT継続中なのか。

キャロと関係を持ったことは、鈴木には絶対に言わないようにしておこう。

「ふっ」

突然、一番後ろに座っていたタルウィが笑った。

「悪い、うるさかったか?」

「いや、そうではない。ただ、緊張感に欠ける奴らだと思ってな。魔王竜が怖くないと見える」

「そりゃ」

老竜も強い強いと聞いていて、蓋を開けてみれば楽勝だった。

正直、魔王竜といえども、その程度ではないかと思っている。

敗北らしい敗北もしてこなかったしな。

「言っておくが野生の魔王竜をそのあたりのドラゴンや、無限迷宮のボスの魔王竜と一緒にするんじゃないぞ。無限迷宮の魔王竜はボス部屋に単独でいる。つまり、瘴気のみを栄養源にしている存在だ。そのため、一定以上大きくならず、力もそれなりに強いが、所詮はそれなりに過ぎない。しかし野生の魔王竜は違う。獲物を食べれば食べるほどに強くなり、野生の魔王竜は、伝説のドラゴンにも匹敵する。勇者とともにいる竜王、洪水を起こすと呼ばれる大河の王ガルグイユ、死者の国からの使者ニーズヘッグ、大海の覇者レヴィアタン等の竜にもな」

レヴィアタンにも匹敵するっ!?

それを聞いて、俺の拳に力が籠もる。

俺が倒したレヴィアタンは復活したばかりで全力ではなかった。

タルウィが言うレヴィアタンが全盛期のものだとするものであり、レヴィアタンに匹敵するというのが真実だとするのなら危ない。

竜王の強さを知っているからだろうか、鈴木からも緊張が伝わってくる。

今回ばかりはヤバイかもしれないな。

「それでいい。相手を過小評価するな。最悪の状況を想定しろ。しかし、委縮はするな。最善を掴むために動け。君たちが強者であることは紛れもない事実だ」

タルウィは俺たちに言った。

最悪の状況を想定して、最善を掴むために動けか。

なかなか良いことを言ってくれる。

タルウィは合戦に出れば八十連勝の記録を持つという。

しかし、記録ならば俺は負けていない。

なにしろ、こっちは元の世界で就職百連敗の実績を持つんだから。

俺は最悪の状況を想定することも委縮をしないことも慣れているじゃないか。

就職に百連敗し、それでも俺は百一戦目に向かうために就職面接に向かっていたじゃないか。

危うく、レヴィアタンと戦ったときの恐怖に飲まれるところだった。

「鈴木、お前は勇者なんだろ。勇者は魔王とドラゴン、どっちも倒すものじゃないか。それが一度にできるんだ、こんなお得なことはないぞ」

「楠くんっ! ははっ、たしかにこれはお得だ。鴨がネギをしょってやってきてくれたみたいなもんだよね」

鈴木が頷くと、タルウィも頷いた。

ハルとマイルも頷く。

「これはいい部隊だ。この部隊があれば、国をひとつ落とすことも可能だろう」

タルウィが言った。

落としませんし、落としたくありません。

政治とかそんなのめんどくさいです。

小さな星を管理するだけでも面倒なんですから。

「ってっ! 楠君っ! シーナさんがっ!」

鈴木が叫んだ。振り返ると、そこにはシーナの胴体があっても首から上はなく――

「おーちーるーデースー」

シーナ三号の頭が落ちていっていた。

結果、ポチがアクロバット飛行をして落ちていくシーナの頭を回収することになり、俺たちまで落ちそうになった。