軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

恐るべき敵

ケンタウロスを先頭に、俺たちは洞窟を進む。洞窟の中は迷路のようになっており、地下へと進んだかと思ったら、今度は登る。道も段々と狭くなってくる。

「複雑だな。まったく道がわからん」

帰りは拠点帰還で帰らないといけないかもしれない。

「安心してください、キャロが道を覚えています」

「私も、私たちの匂いが残っていますから道に迷うことはありませんよ」

――そうだった、俺の仲間は頼もしかった。

こりゃ安心だ。

そう思った――その時だった。

気配探知に引っかかる気配がひとつ。

しかも、その気配は――真下からっ!?

「ケンタウロス、止まれ!」

鷹の目を発動させた。

さらに暗視も発動させる。

鷹の目は普通、上空から地表を見下ろすために使うスキルだが、このスキルは視点の上下移動。つまり、下に視点を移すこともできる。

そして、俺は見つけた。

大きな空間、そして――

「いた、ドラゴンだ! かなりデカイ!」

「本当ですか!? ですが、いったいどこから。ドラゴンがこのような細い道を通れるとは思えませんが」

キャロが言う。

そうだ、確かにこの空間は広いが、しかしその空間に通じる出入口は、ケンタウロスや俺たちがギリギリ通れる程度。いや、それを言うなら、この洞窟の入り口ですらあの巨大なドラゴンでは通れない。

いったいどこから――と俺は地下空間をよく見ると、そこにあった。

地底湖だ。

「地底湖……そうかっ! ランドウ湖! あそこから通じてたんだ」

「迂闊でした。キャロたちはむしろ気付くべきでしたね」

キャロの言う通りだ。

俺とキャロは、かつて無人島で泉の中からダンジョンに通じている隠し通路を発見したことがある。

あの時のことを覚えていたら、ドラゴンのような巨大な生物が入ることができる入り口はランドウ湖しかないと気付いただろう。

「ですが、ご主人様。ドラゴンがランドウ湖から出入りしているのなら、何故湖にいるスーギューたちは逃げなかったのでしょう? ドラゴンが湖に飛び込むところを見たら、人も魔物も問わず、誰もが逃げ出すはずです」

「スーギュー病だ」

俺はようやく思い出した。

スーギュー病――ゴーツロッキーで流行ったスーギューたちにのみ感染する病気。その病気にかかったスーギューは脳に影響が出て、恐怖という感情がなくなってしまうらしい。

そのため、ドラゴンが現れても、それどころか目の前にその牙が迫っても奴らは逃げ出さなくなる。

それがわかっただけでも大きい。

ドラゴンに逃げられそうになったら、湖を凍らせてしまえば逃げられることはない。

俺たちはケンタウロスに案内され、さらに地下へと潜って言った。

「イチノ様、わかっていると思いますが」

「あぁ、こんな地下じゃ 太古の浄化炎(エンシェントノヴァ) は使えない」

こんなところで、あんな大爆発が起こる魔法を使えば、本当に俺たち全員生き埋めになっちまう。もちろん、生き埋めになる前に 拠点帰還(ホームリターン) で脱出はできるが、その場合、パーティ登録していないケンタウロスだけが取り残される。

こいつの場合、放っておいても大丈夫じゃないか? と思うが、まぁ、それはそれで。

「ドラゴンは眉間を剣で突けば倒せることができる弱点とかそういう話はあるか?」

「眉間を剣で突けばドラゴンだけでなく、大抵の生物を殺すことができると思いますが」

「確かにキャロの言う通りだ」

俺はそう言うと、白狼牙を抜いた。

「行くぞっ!」

俺はそう言うと、まずはスラッシュを放った。

不意の一撃だというのに、俺の存在に気付いたドラゴンがこんな狭い場所だというのに空を飛んで避け、こちらに目がけて飛んできた。

やるなっ!

ドラゴンの鋭い爪が俺に迫った。

「ストーン&シールド」

土属性のストーンにより複数の大きな岩が生み出され、物防上昇魔法によりその岩の物防が大きく上昇する。

ドラゴンは普通の岩を切り裂いたつもりだったかもしれないが、俺の魔法によって物防値が上がった岩は逆にドラゴンの爪にダメージを与え、さらに残った岩がドラゴンに突き刺さっていった。

ドラゴンは大きな鳴き声をあげたが、断末魔の雄叫びではなかったらしい。着地すると、再度飛び上がり、地底湖に逃げ込もうとする。

「何百年も生きておいて今更逃げるなっ! 」

俺はそう言って、魔法を唱えた。

「ブースト 細氷大嵐(ダイヤモンドダスト) !」

地底湖から巨大な氷が生えた。これではもう逃げられまい!

「よし、覚悟しろ――老竜!」

俺は創生剣を生み出し、白狼牙と二本――二刀流で老竜と決着をつけ……る?

湖に飛び込もうとしていた老竜の顔が凍り付いていた。

「…………あぁ、もういいや」

スキル、瞬殺使用! 一秒間限定で物理攻撃力が三倍になる。そして、

「十文字切りっ!」

二刀流で使用する高速の十字斬りにより、老竜は最後までいいところを見せず、その長い生涯に幕を閉じたのだった。

【鍛冶師スキル:乱打夢を取得した】

【鍛冶師のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:鍛冶師の極みを取得した】

【職業:上級鍛冶師が解放された】

【職業:魔工鍛冶師が解放された】

【侍大将スキル:居合切りが居合切りⅡにスキルアップした】

【侍大将スキル:一閃が一閃Ⅱにスキルアップした】

【侍スキル:画竜点睛を取得した】

【侍のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:侍の極みを取得した】

【上級錬金術師スキル:分解が分解Ⅱにスキルアップした】

【レシピを取得した】

これまた複数のスキルを取得できた。

………………………………………………………………

乱打夢:生産スキル【鍛冶師レベル60】

MPを半分消費することにより、生産品にランダムに効果を与える。

消費したMPが多いほど、良い効果が付きやすくなる。

………………………………………………………………

これはいい。

さすが鍛冶師の最終スキルだな。

ただ、良い効果が付きやすいということは、必ず良い効果が付くとは限らないのだろう。もしかしたら、悪い効果が――それこそ呪われた剣ができるかもしれない。

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画竜点睛:戦闘術スキル【侍レベル60】

相手のHPが残り二割を切ったときに使用すると、

通常の二倍のダメージを与えることができる。

………………………………………………………………

これはとどめをさすためのスキルか。

瞬殺と一緒に使用すれば六倍のダメージになる。

これで倒せない敵はいないだろう。

「ふぅ、瞬殺――思ったより使えるな。七十二時間のクールタイムは使い時を選ぶが」

俺は創生剣で作った剣を消し、白狼牙も鞘に納めた。

職業もふたつ解放されたか。

上級鍛冶師は、鍛冶師の延長上にある職業とみていいが、魔工鍛冶師は少し違う。

同じ鍛冶でも魔剣のような魔法武器、防具を作ることができる職業であり、カノンが極めたという職業だ。

彼女が打ったエクスカイサーみたいな魔剣ならば、今の俺でも作ることができる。しかし、ミリが見たという斬った相手の重さを変えるような魔剣はどうやって作るのか見当もつかない。

そういえば、キャロから魔工鍛冶師は鍛冶師、錬金術師、魔術師を極めた者が転職できる職業だって聞いたことがあった。なるほど、だからこのタイミングで解放されたのか。

それにしても――と俺は死に絶えた老竜を見る。

なんというか、あっけない戦いだったな。

もう少し手間取ると思ったのだが。

「ご主人様、お見事でした。私はご主人様の魔法を避けようとするドラゴンの翼を傷つけることしかできませんでした」

「キャロも 魅了(チャーム) の魔法を使っていましたが、抵抗が厳しく、動きを少し鈍くする程度にしか使えなかったと思います」

「え?」

よく見ると、ドラゴンの翼の一部に新しい傷があった。

そうか、倒せたのは俺だけの実力じゃなかったのか。

――むしろ、それがわかって少しうれしかった。

「ケンタウロスもありがとうな。ほら、約束の報酬だ」

俺はそう言って、ケンタウロスにトマトを二十個与えた。

「ご主人様、ケンタウロスはどうするのですか?」

「そうだなぁ、このままってわけにもいかないし――ええと、ケンタウロス。ジョフレとエリーズの居場所、わかったりするか? わかるなら二度頷け」

俺が尋ねると、ケンタウロスは二度頷く。

そうか、わかるのか。

「なら、特別にニンジンを五本くれてやるから、お前はジョフレ、エリーズと合流して山を下れ。いいな? わかったら一度頷け」

ケンタウロスは頷かない。

ニンジンは嫌いなのだろうか? と思い、思考トレースを使い、ケンタウロスが頷かない理由を確かめる。

どうやら、ニンジンが要らないのではないらしい。

もっと寄越せと言っているのだ。

「……キャロ、交渉を頼む」

「動物相手の交渉をするのは初めてです」

あまり甘やかしてもダメということで、キャロに交渉を任せた。

時間は十分以上も続いた。

どういう交渉が行われたのかはわからないが、結果、ニンジン七本で交渉が纏まったらしい。

交渉が終わってから、キャロはその場に項垂れていた。

「……キャロがここまで交渉で譲歩させられたのは生まれてはじめてです」

恐るべし、ケンタウロスだな。