軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無職の可能性

目を覚ますと、今度こそ知らない天井だった。

周囲を見回すと、天井の次にランプを見つけた。

ランプがあるおかげでこの部屋が明るいのか。

でも、このランプ……光源が火ではない。光の球が浮いている。

「……ん?」

そして、ランプの反対方向に……巨大な看板が立っていた。

その看板には大きな文字でこう書かれている。

《赤い本を読め・Read the blue book.****》

日本語、英語、よくわからない言葉の三ヵ国語で書かれた看板だ。

日本語では赤い本を読め。

英語では青い本を読めと書かれている。

どっちが正解なんだ? と思ったら、テーブルの上に3冊の本があった。

赤い本、表紙に「異世界の歩き方」と書かれている。

青い本、表紙に「Way of life of the different world.」と書かれている。

黄色い本に、表紙にはよくわからない文字が書かれている。

あぁ、看板の読める文字の本を読めばいいってわけね。

“Read the blue book”くらい俺でも読めるわ、と青い本をとってみたら、中身の英語がちんぷんかんぷんだったため、すぐにテーブルに戻した。誰も見ていないのに無駄な見栄を張って本当にバカなことをした。そう言えば、俺は英語の成績は最低ランクだったからなぁ。

ミリならこの程度簡単に翻訳できたんだろうな。あいつ、家ではフランス文学の原文読んでいたし。

今度こそ、赤い本を手に取りページをめくってみた。

【私は日本人だった。そして、この世界で今を生きている】

最初の一文はそう書かれていた。

【この世界の名前はアザワルド。この世界に住む後輩となる君にこの書物を残す。願わくば、最後まで読んでから、外に出てほしい。なお、青い本には英語で、黄色い本はこの世界の文字で同じ内容を記している】

俺の他にもこの世界に日本人がいるのか。

まぁ、10億人に1人の転生だって言ってたから可能性はあるよな。

この本によると、数年に一人のペースで異世界人は現れているという。

異世界人が目覚める場所は三ヶ所あり、そのすべての場所にこの本を置いているらしい。

【ステータスオープンと言ってほしい】

本に書かれている通り「ステータスオープン」と言った。

……………………………………………………

名前:イチノジョウ

種族:ヒューム

職業:無職Lv1

HP:10/10

MP:8/8

物攻:9

物防:7

魔攻:4

魔防:3

速度:4

幸運:10

装備:リクルートスーツ 革靴

スキル:なし

取得済み称号:なし

転職可能職業:平民Lv1

天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20

……………………………………………………

おぉ、なんか出てきた。

えっと、説明によると、名前は日本のころの名前がそのまま使われるとある。

いや、間違えてるから。俺の名前、一之丞の読み方は、イチノスケであって、イチノジョウじゃないから。

学生時代は初めての担任の先生とかによく間違えられたんだけどさ、神様の仕事にしては大雑把すぎるだろ。

あと、種族は地球人なら全員ヒュームだが、この世界にはエルフやドワーフ、ヴァンパイアやマーメイドといったヒューム以外の人種もいるそうだ。

職業は無職に設定されていて、これについては後で述べるとある。

こっちの世界にきても俺は無職設定なのか。最初は全員そうらしいが、辛いな。

ゲームそのままのステータスの説明が続く。

HP:生命力。なくなると死ぬ。徐々に回復する。

MP:精神力。魔法を使うと消費。徐々に回復する。

物攻:物理攻撃力。上昇すると殴ったり剣を使ったりして攻撃したときに相手へのダメージが強くなる。筋力も上がり、重い物を持ち上げられるようになる。

物防:物理防御力。上昇すると魔法以外の攻撃を受けたときのHPの減少値が減る。スタミナも上昇する。

魔攻:魔法攻撃力。上昇すると魔法の攻撃威力が増える。

魔防:魔法防御力。上昇すると魔法の攻撃を受けた時のダメージが減少する。また、回復魔法の威力も上がる。

速度:反射神経や動体視力、足さばきなどが上昇し、攻撃を躱しやすく、また攻撃を命中させやすくなる。

幸運:レベルが上がっても上昇しない。様々な影響がある。一番実感できるのは迷宮に入ってから。詳しくは迷宮で聞くといい。

ちなみに、この世界の二十歳代の平均HPは50らしいので、俺はかなり弱いことになる。

職業レベルが上がると、様々なスキルを覚える。

職業を変えるとレベルアップで得たステータスは下がるが、スキルは覚えたまま。

例えば魔術師のレベル5に上がり、魔攻が5増えてファイアの魔法を覚えた後、戦士に転職した場合、魔攻の5の分は反映されないが、ファイアの魔法は使えるってことらしい。

職業レベルは、魔物を倒す他、特定の行動をすると経験値が貰え、それが一定量溜まることで上がる。

特定の行動とは、例えば平民は税金を納める、魔術師は魔法を使う、狩人は魔物を狩って解体する、剣士は剣で素振りをする、などらしい。

平民が税金を納めたら経験値が溜まるって、なんか酷い感じだな。いろいろとレベルアップの抜け道が用意されていそうな気がする。

それと、平民って、職業じゃなくて身分じゃないだろうか?

平民が身分だとするのなら、今の俺の身分は平民以下か。

あと、身分は奴隷なのに職業は平民だったりするのかな? 貴族なのに職業は平民でレベル80とか、少し面白そうだ。

称号は、特定の行動をすると得られ、様々な恩恵が得られる。

天恵は、女神様から貰った不思議な力で異世界人だけが持つという。

ってあれ? 取得経験値20倍と必要経験値1/20……って……もしかして、なんか凄いことになってないか?

普通の人の400倍成長するの?

これなら、無職レベル99も容易いな。

と思ったが、

【無職の説明であるが、この世界の人は生まれてすぐに別の職業に転職させられる。何故なら、無職のレベルは上げてもステータスは増えないし、レベル5になってもスキルを一つも覚えないからだ。君もすぐに北の町に向かい、平民か、可能なら別の職業になることを薦める】

無職はレベルを上げても意味がないのか。レベル上げは転職してからだな。

【ただし、夜は出歩かない方がいい。夜になるとこのあたりは狼が出没するからだ。他にも兎の魔物が出るが、兎相手なら無職でも素手で倒せるだろう。兎の肉は売り物にも食糧にもなる、見つけたら倒しておくことを薦める。君は昼間のうちに北の町に向かい、転職を済ませたらいい。私――ダイジロウの紹介だと言えば無料で転職させてくれるはずだ。なお、この世界の文字は君にはまだ読めないだろうが、話す言葉はどういうことか我々にも理解できるようになっている】

そして、このあたりの地図を記した紙が何枚か挟まっていた。

一枚貰っていいそうだ。

この世界の文字を学ぶための日本語を含んだ辞書も置かれていた。ダイジロウさんが書いたのだろう。

この世界の識字率はあまり高くないそうだが、勉強しておいて損はないというので、これももらっておく。

あと、異世界人という存在はこの世界では存在することはわかっているが、大体の日本人はその素性を隠して生活していることが多いと記してあった。

他にも本には様々なことが書かれていた。

この世界では六柱の女神が信仰されていること。

人さらいが多く、奴隷商人に隷属の首輪をつけられたら強制的に奴隷になってしまうから注意するようにとか、職業についての説明、魔法についての説明なども書かれている。

本当に初心者にとっては助かるガイドブックだった。

それと、一番うれしい話が。

なんと、アイテムバッグと呼ばれる魔道具があり、一つ持って行ってもいいという。中に便利なアイテムを入れてあるという。

バッグの中にアイテムを入れると亜空間に収納され、時間の経過も止まり、食糧を入れても腐らないとか。

アイテムバッグは3つあったが、俺は本に書かれている通り1つだけ持っていくことにした。

中を確認すると、薬瓶の中に入っている薬、銅貨100枚、銀貨100枚、金貨1枚が入っていた。

本によると、銅貨1枚が1ドルくらいだという。100円程度か。

【最後に、私は魔法都市マレイグルリに住んでいる。君がこれを読んでいるとき、私がまだ生きているかはわからないが、もしも立ち寄ることがあったら来てくれ。歓迎しよう。ちなみに、私がこの手紙を書いているのは、アザワルド歴379年だ】

ここで本は終わっていた。

本には、この本は持ちださないで欲しいと書かれている。ランプは魔道具としては安価で売られているものだから、これも置いておいてほしいと書いてあった。確かに、今後来るかもしれない日本人には、この本は必要だろう。

「ありがとう、ダイジロウさん」

異世界の先輩に礼を言って、俺は部屋の奥にあった扉を出た。

扉を出ると、階段があり、そこを登っていくと、そこが巨大な大木の中だったことがわかる。

大木から出ると、獣道があった。森の中だったが、鬱蒼と茂る森ではなく、太陽もしっかりと見えている。

そして、外からは木の中には入れなくなっている。これなら盗賊などに見つかって荒らされる心配もないわけか。

えっと、地図によると、こっちが北。太陽は東……ってことは今は朝か。

バ○ボンのパパが言うように、西から太陽が昇るのなら話は別だけど、そこまで疑っていたらきりがない。

北を目指して歩こう。

そう思い歩いていくと前方に白く可愛い球のような、特徴的な耳を持つ生き物が――いきなりウサギ発見!

異世界のウサギってこんな可愛い形なのか。

確か、ダイジロウさんの本には素手でも十分に倒せるし、売り物にもなるって書いてあったな。

ならば、倒させていただきますか。

可愛いけれどこれ戦いなのよね。

近くに落ちていた尖った石を掴み、俺は兎に殴り掛かった。

が、もう少しというところで、跳ねて躱される。

そして、ウサギの体当たり――ぐはっ、痛ぇ、結構強いじゃないか。

女子中学生バレーボール部のエース級のアタックを鳩尾に受けたくらいの痛みだ。適当に言ってるだけだけど。

でも、これなら痣になることはあっても一度や二度喰らったくらいじゃ死なないな。

それならばと、俺は再度攻撃。またもウサギは躱して、俺に体当たりをしてこようとしたが、甘い!

相手がバレーボール級なら、こっちはレシーブだ!

レシーブでウサギを宙へと浮かせ、アタックの代わりに尖った石を思いっきり叩きつけた。

【イチノジョウのレベルが上がった】

レベルが上がったと声が聞こえた。録音音声みたいな無機質な声だ。

本当にドラ○エみたいだな。

ステータスを確認しようと「ステータスオープン」と念じたところ、

……………………………………………………

名前:イチノジョウ

種族:ヒューム

職業:無職Lv13

HP:10/10

MP:8/8

物攻:9

物防:7

魔攻:4

魔防:3

速度:4

幸運:10

装備:尖った石 リクルートスーツ 革靴

スキル:なし

取得済み称号:なし

転職可能職業:平民Lv1

天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20

……………………………………………………

一気にレベルが13まで上がっていたけれど、見事にステータスの変化はないし、スキルを一つも覚えていない。

ダイジロウさんの言っていたことは間違いではないようだ。

やはり早く転職しよう。

日本でも異世界でも無職はよくない。

さて、倒したウサギはアイテムバッグに入れておいて、冒険者ギルドに売ろう。狩人になれたら解体スキルがあるらしいから、解体してから売るのもいいな。もちろん、俺には解体の仕方もわからない。ウサギどころか鶏すら捌いたことないから。

北を目指すか……と思ったら、またもやウサギ発見!

今度は油断することなく、簡単に倒すことに成功。

その結果、

【イチノジョウのレベルが上がった】

【無職スキル:職業変更を取得した】

【無職スキル:第二職業設定を取得した】

【自動的に第二職業を平民Lv1に設定しました】

え? 確か、無職ってスキルを入手できないはずじゃなかったっけ?

……………………………………………………

名前:イチノジョウ

種族:ヒューム

職業:無職Lv20 平民Lv1

HP:22/22(10+12)

MP:13/13(8+5)

物攻:20(9+11)

物防:16(7+9)

魔攻:6(4+2)

魔防:5(3+2)

速度:10(4+6)

幸運:20(10+10)

装備:尖った石 リクルートスーツ 革靴

スキル:【職業変更】【第二職業設定】

取得済み称号:なし

転職可能職業:平民Lv1

天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20

……………………………………………………

……え?

なんか、ステータスが一気に倍になってるんだけど?

無職のステータスに、平民のステータスがそのまま上乗せされてる?

もしかして、俺、裏技発見しちゃった?

……無職なのにサイドビジネス始めた?