軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無職に戻りたくない

自分でも驚いた。俺はこれまで、自分が無職であることをどこか自虐ネタのように言っていた気がする。

無職といっても、システム的な無職であり、実際、キャロの補佐という形であるが行商人としても仕事をしているし、成り行きとはいえ、准男爵という爵位もある。魔物を退治したり、鍛冶でお金を稼いだり、定職にはついていないが、十分にお金を稼いでいる。それはもう、ハルとキャロ、ふたりと結婚しても彼女たちを十分に養っていけるくらいに。

なので、俺は自分に言い聞かせていた。

自分は無職であっても、これは無職を超えた無職。ネオ無職なのだと。

無敵の強さと人類を超越した技能を誇る最強の無職なのだと。

だから、無職であることは恥ずかしいとは思っていても、それでも心のどこかで優越感を抱いていた――否、抱こうとしていた。

でも、無職じゃなくなった現在の俺にとっては違った。

やはり、俺は無職であることに嫌悪感を抱いていた。

さすがに盗賊になった時は焦ったが、しかし無職から平民になったとき、俺はがんじがらめになっていた鎖から解き放たれた――そんな気持ちになっていた。

それなのに、無職に戻れって、それはもう、鎖に自分から縛られにいったうえに、南京錠をかけて鍵を呑み込むようなものだ。

そんなの嫌だ。

「というと思って、マスターにサービスがあるそうだぞ?」

ニーテが俺に囁く。耳に息が当たって変な気持ちになりそうになる。

「エッチなサービスなら間に合ってるぞ」

「エッチなサービスだが、間に合ってないサービスだ」

「だから、そういうのは――」

「ハルワタートとキャロル――マスターの大事な人に関わっているサービスだとしても?」

「別にマスターを付けろとは言わんが、呼び捨ては辞めろ。二人ともお前より年上だしな」

「それを言ったら、あたしより年下の人間なんていなくなるんだが――わかった。ハルワタートさんとキャロルさんに関わっていることだ」

……二人に関わっているサービスと言われたら、俺の一存で決めていいものではない。

いや、二人がこの場にいない以上、俺の一存になるのだけれども、それでも詳しく聞く必要はあるだろう。

別に、エッチなサービスとハルを繋げてはいない。いないったらいない。

でも、なんでその二人だけなんだろう?

マリナには資格はないのだろうか?

「で、そのサービスってのはなんなんだ?」

「眷属化っていうスキルだ」

「眷属化?」

よくわからない。そういえば、以前、コショマーレ様からハルとキャロは俺の眷属であるようなことを言われたような気がする。あれはゴマキ村のダンジョンで、だっただろうか?

でも、あれは仲間――悪い意味では奴隷って意味での眷属だったはずだ。となると、その眷属とは違うのだろうか?

わからん。

「それを使うとどうなるんだ?」

「マスターの眷属となった人間が、マスターが使えるスキルの一部を劣化状態で使えるようになる」

「劣化状態?」

「マスターは魔法をコピーして使うことができるだろ? あれと同じだ」

魔法のコピー――フェイクマジックのことか。

なるほど、俺が使える魔法を劣化して使える。

それがなんでエッチなサービスに繋がるんだ?

「コショマーレ様の予想だと、その眷属化スキルでハルワタートさんを眷属にした場合、彼女は引きこもりを劣化状態で使えるようになるはずだ」

「というと、ハルが自分の世界を創れるってことか? マイワールドスキルで」

「そこが劣化版と本物の違いだな。眷属の引きこもりスキルで自分の世界を創ることはできない。あたしたちの住んでいるマイワールドに行き来できるようになるということだけだ」

ぐっ、なんてことだ。

痒い所に手が届くようなスキル選択じゃないか。

それが本当なら、俺とハル、たとえどれだけ離れた場所にいても、会う時間さえ決めておけばいつでも会えるってことだ。

一緒にイチャイチャできるってことだ。

たしかに、エッチなサービスだが、今の俺には間に合っていないサービスだ。

しかし、それで無職に戻らないといけない……というのは。

「マスター、別にコショマーレ様は永遠に無職でいろって言っているわけじゃないだろ? それこそ、無職を極めればいいだけだ。あたしの上司であるトレールール様の予想では、マイワールドでジュエルタートルの養殖が順調に進めば、あと5年でマスターは無職を極めることができる」

ジュエルタートルの養殖をしていることはバレているのか。

でも、確かにあの養殖が無事に進めば、マイワールドを拡大し、規模を拡大すれば経験値も楽に稼げるようになる。

「……五年……五年か」

五年後というと、俺も二十五歳。そうだ、一浪して大学に入った学生が大学修士課程を経た場合、年齢は二十五歳になる。

つまり、俺は無職であるが、学生という気分でいればいいんじゃないか?

高校中退の俺が大学生気分っていうのも妙な気分だが、そう考えれば……んー、でも無職か。

「わかっ――いや、ちょっと待て」

「煮え切らないなぁ、マスターは」

「そうは言うが、でも無職に戻るって――」

「ハルワタートさんやキャロルさんがマスターの眷属になれば、そしてマスターの力を少しでも使えるようになれば、ふたりが怪我をする確率が減るぞ?」

「……わかったよ。無職に戻る方法を教えてくれ」

俺は頷き、ニーテに尋ねた。

さて、どうすれば無職に戻れるんだ?

「職奪の宝玉を使うんだ」