軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

中級迷宮の56階層

中級迷宮95階層?

ボス部屋?

何言ってるんだ、こいつら?

「ハル、弱くても95階層に行けるものなのか?」

俺がハルに訊ねると「おいおい、弱いはないだろ、僕はこれでも一流の剣士だぞ!」「私は一流の魔物使いよ」「合わせて二流だ!」となぜか合わせて弱くなってしまっている見習い剣士と鞭使いの二人が文句を言った。そんな二人を捨て置き、ハルの答えを待つ。

「おそらく、寄生登録でしょう」

ハルの予想では、95階層まで到達してる他の冒険者とともに95階層まで転移して町に戻った。

そうすることで、95階層までクリアしたことになるんだという。

実際、引退した冒険者の中には迷宮の寄生登録で小銭を稼いでいる人もいるらしい。

町の中などで、転移陣のある迷宮ではよくあることなのだとか。

「100階層のボス、俺達でも倒せると思うか?」

「5分5分、危険な賭けだと思います。少なくともお二人のどちらか、下手したら両方死ぬことになるでしょう」

と、ハルはジョフレとエリーズを見て言う。

二人はその答えを聞いて、「うん、冒険者には身の丈にあった場所にいくほうがいいな」「そうね、ジョフレはここで死んではいけない人よ」と臆病風に吹かれていた。

俺もそんな賭けをするメリットは低いな。

「ということで、無理だ。経験値を稼ぎやすい場所にしてくれ。何匹かはラストアタックを譲るから」

「いや、ラストアタックはいらない!」

ジョフレは堂々と宣言した。

「だって、私たちの強さだと、瀕死の魔物にもやられるから!」

合わせて二流の二人は自分たちの実力をよくわかっているようだ。

列が少し前に進んだので、俺達も一緒に前に進む。

「そうだな、僕達を暫定パーティーにしてくれ」

「昨日の敵は今日の友ってこと。今日の友は明日の敵ね」

エリーズの言っていることは無視しよう。敵になった覚えもないし、友になる予定もない。

それより、暫定パーティー?

なんだ、それは。

「もしかして、仲良しリングを持っているのですか?」

「……仲良しリング?」

なんか、とても平和そうな名前の指輪だが。

ジョフレが二つの金色の指輪を取り出す。

「二つのパーティーのリーダー同士が指輪をはめる事で、二つのパーティーの合計人数が6人以下の場合、同じパーティー扱いにする魔法道具です。ダイジロウ様が開発なさった指輪で、とても貴重なものなのですが」

ここでもダイジロウさんか。さすがだな。

ていうか、なんでそんな貴重な指輪をこいつが持ってるんだ?

「おう、そのダイジロウって人にもらったんだ。12年前だったかな、森の中を案内してやったお礼にな。僕も当時は10歳のガキだったがよ」

「あの頃からジョフレはかっこよかったわよね」

「そういうエリーズも最高にプリチーだったぜ」

「もう、ジョフレったら」

「ははは、照れやがって、こいつ」

「――スラッシュ!」

DTを卒業したとはいえ、腹が立つのは変わらないらしい。イライラが限界になり、俺は思わず手刀でスラッシュを二人の間の足元に打ち込んでいた。

二人は怒るが、周りからは拍手が巻き起こる。

「ま、いいか。一つ、指輪を預かるぞ」

「おう、大事なものだからなくさないでくれよ」

「わぁってるよ」

俺は指輪をとると、ハルの指にはめようとして――

「こういう場合、どの指にはめたらいいんだ?」

「仲良しリングでしたら、左手小指にはめるのが通例となっています。友達同士がつけるものですから」

左手薬指じゃなくてよかった。

ハルとジョフレがペアリングを左手薬指に付け合うなんて絶対嫌だもんな。

俺はハルの左手小指に指輪をはめてあげたところで、俺たちは迷宮の入り口へと入っていった。

迷宮の入り口には地下に続く階段と、光る転移陣があった。

「では、しばらくお待ちください」

1分間待たされる。

その間に、何組かの冒険者が転移陣から出てきた。

転移陣は誰かが使っている間は使えない仕組みになっているそうで、迷宮から出る人を優先しているそうだ。

そして、1分後、俺達の出番が回ってきて、1センスをジョフレが支払い、転移陣に入った。有料だったのか。

転移陣に入ると一瞬のうちに景色が変わる。緑の壁にうっすら光る天井。

迷宮の中だ。本当にワープしたんだな。

早く転移陣の中から出ないと元の場所に戻ってしまうと言われたので、すぐに転移陣から出た。

んー、魔物の気配はないな。

「56階層にフィッシュリザードって魔物が異常発生してるらしいから、そこに行こうか」

フィッシュリザードは魚ではなくトカゲの魔物であり、落とす肉の味が魚肉の味がするからフィッシュリザードと呼ばれているらしい。中級の冒険者がよく倒すんだとか。

「へぇ、ジョフレ、よく知ってるな」

「あぁ、冒険者ギルドから駆除依頼が来てな。フィッシュリザードって単体だとFランクの雑魚なんだが、群れになると凶暴性が増してDランクになるからな。依頼を受けたんだよ」

「待て、受けた依頼を俺に手伝わせるつもりだったのか?」

自分たちでは倒せないって言ってたし。

さすがは小悪党、なんてやつだ。

「いや、 初心者(ルーキー) とは本気でボスを倒しに行くつもりだったぜ? フィッシュリザード退治のことはすっかり忘れてたからよ」

「ええ、忘れてたわ」

……馬鹿だろ、こいつら。てか、こいつらによくギルドは依頼を受けさせたな。

俺の思っていることを察したのか、ハルが説明してくれた。

「討伐依頼は冒険者ギルドのメンバーでしたら誰でも受ける事ができますし、違約金も発生しません」

「そうなのか……」

「まぁ、僕たちは討伐報告アイテムのフィッシュリザードの鱗さえもらえたらいいから、肉と魔石は自由にしてくれてかまわないぞ」

なんか、こいつらに利用されているだけな気がする。

でも、あのまま並んでいたら確実に迷宮に入れなかっただろうし。

「……ま、いいか」

俺はそう呟き、56階層に向かった。

55階層ではどういうわけか魔物を一匹も見かける事はない。こんなことは珍しいとハルが語った。

56階層に通じる階段を見つけ、俺達は下りていく。

そして、そこで見たものは――無数のトカゲ、そして巨大なトカゲに着ている鎧ごと飲み込まれていく冒険者の姿だった。

「嘘……だろ?」

中級迷宮56階層……そこはトカゲの地獄になっていた。