軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天然食料庫

ドワーフの村は岩山の中腹にある。

だから、詰め所の部屋を借り、ゴマキ村で買った登山靴に履き替え、砂漠用の衣装から普段の服装に着替えた。

そして、俺は一本の鋼鉄の剣を取り出す。

鋼鉄の剣、第四号だ。

一本目はマーガレットさんから貰い、二本目はベラスラで買い、三本目は自分で鍛えた。

一本目は山賊を退治したときに折れてしまい、二本目は南の島で迫りくる壁から身を守るためにつっかえ棒にした。

そして、三本目、ついこの間、俺の本気の竜巻切りに耐え切れずに折れてしまった。

正直、三本目の剣に関しては店で売っているものよりも遥かに性能の高い物ができたと思っていたのだが、それでも俺の攻撃についてこれなかった。

別に鋼鉄の剣をもう一本鍛えるのは苦じゃないし、本気で攻撃する時は創生剣を使えばいいだけの話なんだけど、やはり冒険者ギルドなどで剣士を自称するからには、まともな剣を持っておきたい。それこそ、俺の攻撃に耐えられるような。

ダイジロウさんが何を企んでいるかは知らないが、彼女は勇者の仲間だった人だ。ミリを連れ戻す時、彼女が本気で抵抗してくるのならこっちもそれなりの装備を用意しておきたい。

ドワーフなら、何か武器を強化するいい方法があるかもしれない。

ケンタウロス? あいつはもういいんだ。なんか関わったら面倒な気がする。

あの食欲の権化のロバなら、ペンペン草しか生えないような荒野でも、サボテンしか生えない砂漠でも、そのわずかな植物を食べて生きていける気がするし。

絶対に周辺の動植物の生態系は狂うだろうけれど――それこそ日本における特定外来生物以上の影響を与えて。

さて、行くとするか。

一度山に入り、岩陰からマイワールドに移動する。

ちょうどリリアナを見つけた。

「イチノジョウ様、お疲れ様です。イチノジョウ様が用意してくださった鶏は私たちが保護しています」

「そうか……あの黒い鶏、本当に食べられるのか?」

「はい、とても美味しいですよ。私はあの鶏以外知らないのですが、族ちょ――ララエル様は他の鶏と変わらない味だと仰っていました」

「そうか――あ、これ、鶏を回収したあとで拾っておいた卵。有精卵か無精卵かはピオニアがわかると思うから、彼女に見てもらってくれ」

俺は白い卵を彼女に渡し、ふと思った。

「この卵で卵かけご飯って食べられるのかな」

「たまごかけごはん?」

リリアナが首を傾げる。

「あぁ、俺の故郷のメジャーな料理でな。暖かいご飯の上に生卵と醤油をかけて食べる料理なんだ。ちなみに、卵をといてからご飯の上に入れるかそれともご飯の上に直接卵を乗せるか、醤油を先に入れるかさきに醤油と混ぜてから入れるか最後に醤油を入れるか、食べ方の議論が絶えない料理だな」

「生卵ですか。私は食べたことはありません」

やっぱりそうか。

まぁ、これは異世界だからというわけではなく、多くの国で昔から言われている話だ。

欧米などでは、生食用の卵と加熱用の卵を別に売られているし、卵を生で食べるのはサルモネラ菌などの感染リスクがあるのだろう。

「あ、でもイチノジョウ様なら大丈夫ですね」

「それは俺の胃が丈夫ってことか?」

「違います。イチノジョウ様は生活魔法がありますから、生卵に 浄化(クリーン) をかけてから食べれば食中毒のリスクはありません。貴族の方は生活魔法が使える使用人に、全ての食材に 浄化(クリーン) をかけさせると聞いたことがあります」

「なんと――あの性活魔法……じゃない、生活魔法にそんな使い道があったのか」

いや、むしろ生活魔法として正しい姿なのかもしれない。性活魔法のほうが異常な使い方なのだ。

よし、俺も今度から食材に 浄化(クリーン) を……って、食中毒になっても魔法で治療できるからそこまで注意する必要はないか。

そもそも俺が料理に使っている食材は、ピオニアとニーテが品質管理を行っている野菜、もしくはミリが日本から持ち込んだ食材がほとんどだし。

「ところで、リリアナ。一つ頼みがあるんだが」

「はい、イチノジョウ様の頼みであれば一つとは言わずいくつでも――あ、でもここでは人目がありますから私の家に――」

「そんな重大な頼みじゃない。ドワーフについて教えてほしいんだ」

俺の中でドワーフにはある種凝り固まったイメージがある。

しかし、ダークエルフである彼女たちが肉を食べるように、この世界のドワーフもまた俺の常識と異なる話があるかもしれない。そう思ったのだ。

「ドワーフですか? そうですね、ドワーフは男性は髭が濃いですけど、女性は髭はないです」

「ふむふむ、そういうイメージだな」

「背は低いですが、背が低いことはコンプレックスではありません。しかし、 小人族(ミニヒュム) や 半小人族(ハーフミニヒュム) と間違えられたり比べられたりするととても怒ります」

「あぁ、種族的なプライドがあるのか。それは重要な話だな」

今の話を聞いていなかったら、ついついキャロと身長を比べてしまって、その話をしたかもしれない。

聞いておいてよかった。

「あとは、酒と鍛冶が好きですね」

「そのあたりはイメージ通りか」

俺の世界のゲームや物語における設定というのはこの世界が基になっているってこの世界に来るときに女神様が言っていたし、イメージと大きな違いはないのだろう。

これなら、マイワールドで作ったワインと日本酒を持っていけば。いや、日本酒だけでいいか。

この世界のワインは貴重だからな――なにしろ、ダキャットでハル、キャロ、マリナの三人娘が足で葡萄を踏んで作ったワインだからな。

そうだ、ダークエルフたちにもワイン造りを協力してもらおうかな。

そうすれば、ワインの量産も可能だろう。

「……本当に天然食料庫になってきたなぁ」

ミリが持ってきた苗により、すでに米作りも始まっているし、小麦畑や野菜畑もある。ダークエルフたちの森には果実もたわわに実り、海には小魚も泳いでいる。

さらに、鶏も育てられ始めた。

もう一生食べるに困らないな。