軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

NOと言えない日本人

「准男爵様とは露知らず、大変失礼いたしました!」

俺を連行した兵に謝罪を受けた。

準貴族とはいえ、爵位持ちの権力というのはかなり有効らしい。

「パウロ伯爵家、ユーティングス侯爵家に照会したところ、イチノジョウ准男爵様は大変有能で信用できる冒険者であると報告を受けております」

「あぁ、そうなんですか。えっと、気にしないでください。というより、明らかに非はこっち――というより俺の知り合いにあるわけですから」

反逆罪――一体、ケンタウロスがどんな大罪を犯したのか? と思ったが、こいつがしたのは、この国境警備兵たちの詰め所にあった食料を大量に食い荒らしたのだという。

そのため、国境警備隊たちは食糧難に陥っているのだとか。

僻地とはいえ、十人以上いる詰め所。そこの一カ月分の食料をあのロバは食べたのだ。

「いえいえ、そのことはもういいのです。准男爵様には十分な食料をいただきましたから」

ああ、俺のアイテムバッグには、マイワールドで育て上げた小麦や野菜、他にも米や茶まで揃っており、さらには味噌や醤油、酒、味醂、酢、ワイン等の発酵食品まである。

そのうちのごく一部を提供することで、兵士たちの失った食料は補われた。

その代わり、ケンタウロスが食べなかった燻製肉を分けてもらった。

「それにしても、さすがは准男爵様のアイテムバッグですね。一体どのくらい入るのですか?」

「まぁ、そこそこですよ」

ダイジロウさんが作ってくれたこのアイテムバッグの容量は、無限と言ってもいいくらいに保存できる。

ちなみに、ダイジロウさん製作以外のアイテムバッグも存在するそうなのだが、しかし容量には限度があるのだそうだ。せいぜい、俺の持っているアイテムバッグの中に入るのは、大きなスーツケースひとつ分くらいしか入らない。

ダイジロウさんのアイテムバッグは異常なのだ。

キャロも驚いていたし。最初はあまり目立たないように使っていたが、最近は結構普通に使っているよな。

まぁ、ダイジロウさんが掛けている魔法により俺以外は使えないというのもそうだけれども、誰かに狙われても逃げ切れるだけの力と権力も手に入れたからな。

「で、あのバカロバの行方はわかりましたか?」

俺が捕まって十分後。ケンタウロスの奴、当然のように脱走した。鎖でつながれていたはずなのに、いとも簡単に引きちぎってどこかへ行ってしまったそうだ。

まぁ、俺が持て余す相手だ。一般兵が取り押さえるのは無理だろう。

「申し訳ありません。東に向かったというのはわかったのですが」

「東か……ところで、あのふたりについては知っている人はいましたか?」

ケンタウロスよりも、ジョフレとエリーズの居場所が重要だと思った俺は、芸術家の似顔絵描きスキルを使ってジョフレとエリーズの人相書きを描いた。

ちなみに、わざとデフォルメを強めにしているのは、写真のような絵で尋ねると、少しだけ髪型を変えたり帽子を被ったりするだけでわからなくなるからだ。特徴的な部分を強めに書いたほうが情報が集まる、そう思ったのだが。

「すみません、全ての兵に聞いたのですが、このような旅人は見ていないそうです」

「そうですか。それじゃあ、ものすごいバカな旅人で聞いても?」

「はい――というより、この一カ月はこの国境は完全に封鎖していましたから、誰も通っておりません」

「そう……ですか」

シララキ王国とニックプラン公国は戦争していたからな。

さて、ケンタウロスを追って東に行くか、山を登ってドワーフに会いに行くか。

どっちがいいか……。

「あ、あの。准男爵様は武勇に優れた冒険者なのですよね?」

「それなりには」

「あの、不躾な頼みで申し訳ないのですが、東に向かわれるのであれば、荷の護衛の仕事を頼むことはできないでしょうか?」

荷の護衛?

俺が不思議に思ったら、それを聞いていた兵が、俺と話していた兵を引っ張って言った。

「(お、おい、准男爵様に失礼だろ)」

「(でも、ユーティングス侯爵様から准男爵様なら最適だって言ってたんだよ)」

「(最適? 確かに准男爵なのは本当だけど、全然強そうに見えないぞ?)」

強そうに見えないのは自覚がある。

それと、小声で話すなら、俺に聞こえないようにしてくれ。全部丸聞こえだ。

よし、断ろう。

「悪いですけど、ドワーフの村に用事があるんで」

「なんと、それはますます都合がいいです。荷を運んでいる馬車は現在、ドワーフの村で待機しているんです。話はその護衛をしている傭兵に聞いてから――ではどうでしょう?」

まさかの藪蛇だった。

まぁ、東に向かうというのなら、マレイグルリの方角だから別にいいんだが、しかしハルと待ち合わせの時間もある。

長時間の拘束は避けたい。

「わかりました。話を聞くだけなら」

俺はため息をついた。結局俺は断れないんだよな。

NOと言える日本人になりたいものだ。