軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

中級迷宮に少しだけ行こう

あっという間に朝がきた。朝が来たんだから朝が来た。

俺とハルは二人揃って素振りで汗を流して、タオルで汗を拭き、ダイニングに向かった。

既に朝食の準備はできており、四人揃って食事をすることに。

そして、四人揃って、パンとミルクの朝食をとることになった。

なったのだが――、身体を動かしていないと昨日のことを思い出して恥ずかしくなる。

だって、仕方ないじゃないか。大人の階段を初めて登ったわけだし、うん。思っているように上手くなんてできない。

ハルも同様に少し目線を下に向けている。

そして、一番恥ずかしそうにしていたのはノルンで、何故かマーガレットさんはニヤニヤ笑って食事をしていた。

「ねぇ、イチ君、うちの下宿ってね、壁がかなり薄いのよ」

マーガレットさんの一言に、俺は全てを察した。

全部聞かれていた……マーガレットさんにも、ノルンにも。

うわ、恥ずかしい……。今度からは時と場所を気を付けないといけないな。

「あんまり女の子に恥をかかせちゃダメよん。もしよかったら、私がイチ君の出発の時間まで手取り足取り――」

「間に合ってますっ!」

お願いだ、色目を使わないで。そっちに目覚めたくない。

俺が困っているとノルンが助け舟をだしてくれた。

「そうですよ、マーガレットさん、お兄さんにはもうハルワタートさんって恋人がいるんですから。いないなら私だって……」

ノルンはぶつぶつと呟きながら、牛乳を飲み始めた。

恥ずかしいけれど、本当に楽しい食卓だった。

「それで、イチ君、これからどうするの?」

「とりあえず、午前中は中級迷宮に潜って、昼食の後、冒険者ギルドに行って、アイテムを売却して路銀にしようと思います」

「冒険者ギルドにね……あまり無茶なことはしちゃダメよ」

「……はい」

笑顔で窘めるマーガレットさんに、俺は苦笑して頷いた。

最後までマーガレットさんには敵う気がしなかった。

例え成長チートで強くなっても、もしも魔王を倒すような力を身に付けたとしても、きっと頭が上がらないって相手はこれから先、たくさん現れるんだろうな。実際、一人日本に残すことになったミリには頭が下がりっぱなしだ。

そして、そういう人たちとの出会いが俺を本当の意味で成長させてくれるのだと思う。

「じゃあ、昨日の洗濯物とお弁当は、馬車の時間になったら届けに行くわね」

「最後までお世話になります」

「いいのよ、私にできるのはこのくらいなんだし」

マーガレットさんは俺にウインクすると何か準備があると言って去って行った。

今日は店は臨時休業にするそうだ。

俺達も後片付けをして、中級者向けの迷宮に向かうことにした。

ハルも自分の部屋で戦闘着に着替えている。

5分後、着替え終わったハルが俺の部屋に入ってきた。

「どうでしょうか?」

どうでしょうか? と聞かれて、ハルの服を見る。スカートに服なのは変わらないが、膝のあたりまであったスカートが短くなり、その代わり靴下も長くなっている。特別な生地で破れにくいらしい。

「とても似合ってるよ」

「ありがとうございます」

「ただ、これだけ短いと……その、下着とか見えそうだな」

「大丈夫ですよ、中にブルマを履いていますから」

そう言って、ハルがたくし上げた。

えぇぇ、実物見るの初めてなんだけど……て、なんでこの世界にブルマがあるの?

そう尋ねたら、なんでもこの世界に来た迷い人が趣味で作ったものらしく、今では世界中の服屋に置いているという。

やりたい放題だな、日本人。

でも、スカートをたくし上げて見えるブルマって、何だろう、ロマンを感じるな。テニスのアンダースコートと同じような感じで。

「……ごちそうさまでした」

「……ありがとうございます」

お礼を言いあう俺とハル。いいコンビだと我ながら思った。

そして、俺達はフロアランスの中級迷宮に向かった。

「意外と混んでるんだな」

遊園地のアトラクションのように並んでいる。遊園地と違うところがあるとすれば、子供は全く並んでおらず、ごつい男が多いところだろう。

これは並ぶのが大変そうだと思ったら、

「そうですね。3年目以降の冒険者なら中級迷宮から入ります。まぁ、ボス部屋にまで行ける冒険者は1割もいませんが。奥も深いですし、転移陣もありますから、ターゲットを選ばなければ魔物に困ることはありません。私は中級迷宮の22階層まで行ったことがありますから、5階層、10階層、15階層、20階層の転移陣を使えます」

「転移陣があるのか」

たぶん、ワープゲートみたいに、一瞬で他の場所に移動できるものだと思う。

流石は異世界だな。

ということは、この行列は転移陣の順番待ちなんだろう。

これだと中に入るまで1時間はかかりそうだ。

そう思ったら、

「おおい、 初心者(ルーキー) ! こっちだ! こっち!」

「一緒に行きましょ!」

前の方から声がかけられた。

……ジョフレとエリーズだ。あいつら、もう釈放されたのか。

「お言葉に甘えましょうか」

パーティーの誰かが順番取りをするのは迷宮ではよくあるそうだ。

というのも転移陣は同じ場所に行くなら6人までは一緒に行けるためだという。

「確かに、これを並ぶよりは楽だな」

俺は二人のところに行った。

「じゃあ世話になるよ」

「気にすんなって。困ったときはお互いさま、右の頬を殴られたら右の頬を殴り返せって言うだろ」

ジョフレが笑いながら言った。

「……いや、知らない……そんな言葉あるか?」

「私も知りません」

うん、やっぱりないよな。前後の文章、全く違う意味だし。

「旅は道連れ、地獄までってことよね、ジョフレ」

嫌だよ、そんな旅。

なんで死ぬこと前提の旅なんだよ。死ぬならお前等二人で死ね。

「てか、お前等、俺の事を恨んでないのか? 一応、お前たちのボスを倒したんだけど」

「ん? あぁ、気にするな! 友達だろ! お前、強いしな」

「そうそう、気にしたら負けだよ! 強い人と一緒だと得だしね!」

……こいつら、バカなのに、長い物には巻かれるタイプか。

まぁ、嘘は絶対に付けないタイプだし、並ぶのも面倒だから四人で行かしてもらおう。

「で、どこに行くんだ? 言っておくが、俺、昼過ぎまでに戻らないといけないんだけど」

「あぁ、それなら余裕だよ。95階層に飛んで、100階層のボス部屋まで行くだけだから」

…………は?