軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

密輸団の隠しアジト

まさか、デスウォーリアー先生がデスウォーリアーじゃなかっただなんて。

しかも、貴族!?

改めて職業鑑定でデスウォーリアー先生の職業を見る。

【騎士:Lv25】

騎士だった。

騎士――ナイトか。喋り方だけなら騎士より武士って感じだけど。馬にも乗っていないし。

ステータス偽造スキルを持っているのか? と思ったが、もしもそうなら、職業を調べられる前に自分の職業を変えていただろう。

とすると、俺たちと同じようにステータス偽造Ⅲのスキルを使って職業を弄っていたんだろうな。

まんまと騙されてしまった。

「敵のど真ん中にのこのこと現れるとは――どうなってもいいですよね?」

「ちょっと待ちな。話を聞くのは商売の後でもいいだろ。それに俺は、この偽デストロイヤー先生に危うく仕事を奪われるところだったんだ。痛めつけるのは俺にやらせてくれ――問題はあるか?」

俺がそう言うと、クッソもヤーロも笑顔で首を横に振った。

はぁ、さすがに騎士様を殺させるわけにはいかないからな。

とりあえず、俺は拳で騎士様の頭を軽く殴った。

――ピコッ。

可愛い音とともに、歯を食いしばっていた騎士様の眼が閉じられた。

ピコピコハンマーのスキルにより、気絶したのだろう。

荷を結ぶための荒縄を用いて騎士様をぐるぐる巻きにする。

「パブロフ。この男を俺たちがいた部屋の中に閉じ込めておいてくれ。他の連中に手を出させるなよ、俺が痛めつけるんだからな」

「わかっただ」

よし、これで一応騎士様の安全は確保できた。

パブロフならばストレス解消に騎士を殴ったりすることはないだろう。

「あっ」

「ん? どうしたんだ、鈴木」

「いや、なんでもないよ」

明らかに動揺した表情を浮かべる鈴木。

……もしかして、鈴木の奴、俺たちがいた部屋になにか忘れ物でもしたのか?

ただ、ここで口に出さないということは、やっぱり薄い本だろう。

それは後から取り戻せばいいじゃないか。

「じゃあ、行こうか」

俺のその声を合図に、俺たちは敵さんのアジトへと向かう。

当然、街道なんて使わない。

森の中を歩き続ける。荷車がなんども木の根にひっかかった。当然、荷車を引く二人の巨漢の体力の消耗は激しい。

いい加減に休ませてやればいいと思ったのだが、

「命令です。休んではいけません」

とヤーロが言うと、荷車を引く巨漢の首輪が光り、うめき声が聞こえた。

そうか、男たちが着けていた首輪はデザインが微妙に異なるが隷属の首輪だったのか。

隷属の首輪の効果で、体力の限界になっている奴隷を無理やり動かすとか。

フロアランスでマティアスさんが、奴隷にも最低限の人権があり、殺したり理由もなく痛めつけたりするのは犯罪になる、なんて言っていたが、南大陸では犯罪じゃないのか? あ、考えてみればヤーロは奴隷の扱い方関係なく犯罪者だった。職業も盗賊になってるし。

巨漢ふたりの職業は拳闘士なので、おそらくこの荷物を運ばせるために雇ったんだろう。

アイテムバッグがあればその必要もないのに……とは思うが、しかしアイテムバッグはかなり高価なもので、しかも市販されているアイテムバッグは鞄の数倍程度しか容量がないらしい。ダイジロウさんのアイテムバッグが特別過ぎるんだよな。

「どうしました? イチノジョウさん」

クッソが尋ねてきた。

ここで奴隷たちが可哀そうだとか言ったら、俺の職業が再度疑われそうだな。

「いや、ヤーロさんって人の口調、クッソさんに似てるなって思っただけだ」

「それはそうですよ。ヤーロ殿と私は兄弟ですから。彼は私の兄です」

「あ、そうなんだ」

親も可哀そうに。

自分の息子たちが揃って犯罪者になるなんて。

「ちなみに、これから会いに行く相手組織のリーダーは私の父です――もっとも兄も父も身内ですら裏切る男です。油断しないでくださいね」

前言撤回、親が諸悪の根源だった。

その後、クッソは、自分がもともとは親に反発して堅気の行商人として働いていた事だとか、いかにして自分が今の地位を手に入れたのか等を俺に話した。

どうやら、かなり自己顕示欲の強い男らしい。

最後に、「私はこんなところで終わる人間ではありませんよ、その時はイチノジョーさんも宜しくお願いします」と言ったので、俺は二つ返事で了承した。

そして、俺たちは谷を下りていくと、遺跡のようなものがあった。

どうやら、ここが相手の密輸団のアジトらしい。

中からいくつもの気配を感じる。

鷹の目のスキルを使って周囲を調べると、遺跡の屋根の上から、ボウガンらしき武器を持つ男の影がふたつ。

どうやら、なにかあれば――もしくはなにもなくても?――俺たちを襲うつもりなのかもしれない。

「楠くん、もうそろそろいいと思うよ」

鈴木が言った。敵のリーダーに会ってからだと思ったんだが、

「ああ、そうか――まぁ、中に入ってからだと面倒だからな」

俺が頷くと、同時に動いた。

鈴木は右の巨漢、俺は左の巨漢をそれぞれ殴って気絶させる。

「「裏切るのかっ!?」」

クッソとヤーロが叫ぶが、

「悪いな、最初から仲間になったつもりなんてないよ」

俺はそう言うと、

「スラッシュ」

と両腕を振るった。

二陣の剣戟がそれぞれ屋根の上の男を切り裂いた。

「なっ、気付いていたの――ぐへっ」

ヤーロが声をあげたが、その声も鈴木の拳が鳩尾に食い込んだことで途切れた。

「イ、イチノジョーさん! あなたの腕は見事です! そうだ、あなたが私たち密輸団の新たなリーダーです! あなたの強さと私の交渉術があればさらなる高みに登れるはずです」

「ああ、そうだな。クッソさんはたしかにこんなところにいる男じゃないよな」

「そうです、そうですとも。だから――」

「お前にはブタ箱がお似合いだよ!」

俺の拳が、ピコッという音とともにクッソを気絶させたのだった。

「楠くん、屋根の上のふたり、殺してないよね」

鈴木が心配そうに尋ねた。

「安心しろ、スラッシュとピコピコハンマーを組み合わせてる。ピコピコハンマーの効果なら死ぬことはないよ……たぶん」

レベルは上がっていないから、死んでいないと思う。

求職スキルを使用した場合、経験値は第一職業しか貰えなくなるので、火事場泥棒がレベルの上がりにくい職業だったら話は別だが。

「たぶんって……それで、なんで職業が犯罪職になってるの? ステータス偽造の効果は切れてるよね」

「ああ、まぁとっておきのスキルのおかげで、二十四時間限定で職業を変更できるんだ……ただしランダムに選ばれる五つの職業の中から一個を選ぶ感覚でな。ステータスは変わらないから戦闘には支障はない。ちなみに、俺の今の職業は火事場泥棒だ」

「そんなスキルがあったんだ。って、火事場泥棒ってそっちのほうが興味深いんだけど。世界職業辞典にも載ってなかったし。え? どんなスキルを覚えるの?」

「知らないよ。レベルが上がってスキルを覚えたら教えてやる」

と言ったところで、遺跡の中から二十人前後の男たちが現れた。

「無理しないでね。スキルは気になるけど、できるだけ殺さないでね。そして絶対に逃がさないでね」

「注文が多いな。一言で頼むわ」

「ハルさんたちに自慢できる行動を求めるよ!」

「オーケー、わかりやすい!」

俺はそう言って、鋼鉄の剣を抜いた。