軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ボス部屋に到着

「でも、迷宮ってもっと、3分歩けば魔物が出て来て……みたいな場所かと思ったんだけど、意外と魔物は少ないんだな……」

迷宮の9階層、すれ違った6人組(全員男)の冒険者に会釈だけの挨拶をしながら、俺はハルにそんなことを訊ねた。

一応、後ろから襲われないか警戒してみるが、相手は俺達と挨拶を交わしたあとはこちらを気にするそぶりを見せずに階段を上がって行った。

「初心者迷宮はそういうものですよ。 魔物部屋(モンスタールーム) もありませんし、ある程度強い人は道中の魔物は無視して、ボスを倒すのみですね」

「あぁ、俺達もそうするか。ボスって、この階段の下だっけ?」

「はい……今すれ違った冒険者たちがボスを倒したのなら、再度出現するまで時間があります。その間はボス部屋には入れません」

「リポップの時間があるのか。どのくらい?」

「初心者迷宮でしたら30分くらいで再度出現するそうです」

ハルの案内でさらに進むこと5分。

下り階段を見つけて下りていく。道を覚えているのか? と訊いたら、先ほどの冒険者の匂いを逆ルートで辿ったそうだ。便利だな。

そして、階段を下りてすぐ――獅子のマークの扉があった。高さ4メートル、横幅2メートルの巨大な扉だ。

「時間が来れば開きます。他の冒険者がいる場合は順番待ちになります」

「ここのボスはなんて魔物なんだ?」

「ゴブリンキングですね。ゴブリン5匹と同時に出現しますが、私一人でも十分に勝てる程度です」

「そうか。なら動きすぎて気分が悪くなることもないな。ちょうどいいし、御飯にしよう」

迷宮の中だと時間がいまいちわからないから、腹時計が頼りだ。

迷宮に入って3時間経過、午後4時くらいだと思う。

「ハルも干し肉とパン、水でいいか?」

「ご主人様と同じ食事でよろしいのですか?」

「あぁ……本当はアイテムバッグがあるからもっと出来立ての食事でもよかったんだけど、一度こういう干し肉とかも食べたくてな」

ハルと俺は干し肉とパンを分け合い、二人で食べることにした。

干し肉……ビーフジャーキーみたいかと思ったら、もうほとんど塩肉だな。それに固い。

消毒目的のため、高いアルコール度数の酒で拭かれており、その匂いも苦手だ。アイテムバッグの外に出していたら匂いも飛んでいたんだろうが。そのため、食べるとやたら喉が渇く。

パンもフランスパンよりも固く、味も薄い。歯が鍛えられる。自然と水の飲む回数も増える。

やっぱり、今度から普通の食事を持ってくるようにしよう。

「やっぱり干し肉はおいしいですね」

もくもくと干し肉を食べていくハル、尻尾が左右に揺れている。

表情はいつもと変わらないが、本当においしそうに食べている。

「ハルは干し肉が好物なのか?」

「はい、昨日マーガレット様が作って下さった肉料理もおいしかったですが、私はやはり固い肉のほうが好きです」

「そうか……ちょっと俺には固いな……ハル、俺の分も食べるか?」

「いえ、そんな、ご主人様の分まで貰うなど」

口では遠慮しているが、尻尾が大きく揺れている。とてもうれしそうだ。

そこまでうれしそうにしていると、いじわるしたくなる。

「そうか、なら俺が食べるか……」

そう言って食べようとすると、ハルの尻尾がしゅんとなる。

本人は尻尾がそこまで反応しているのに気付いているのだろうか?

「んー、でもやっぱり固いからな。ハル、俺のためだと思って食べてくれ」

「では、お言葉に甘えていただきます」

粛々と干し肉を受け取るハルの尻尾の動きは絶好調だった。

「……ハルは可愛いな」

「ありがとうございます」

頬を赤らめて頭を下げるハルを見て……俺の男の心がこみ上げてきた。

「あ……あの、ハル。一つ聞きたいんだが、白狼族にとって、尻尾とか耳とかっていうのは他人に触られると嫌なのか?」

「白狼族にとって、尻尾、耳、お腹は認めた主人以外に触られるのをとても嫌いますが……ご主人様に触っていただけるのなら光栄です」

耳と尻尾だけじゃなくてお腹もダメなのか。

でも、俺なら触ってもいいって言ったよな。

ならば、と俺はゆっくり立ち上がり、ハルの左隣に座った。そして、右手で――スカートの中に手を入れ――

「あ……」

「え?」

「いえ、あの、両親以外に触られるのは初めてなので」

「あ……うん、ありがとうございます」

触っているのはあくまでも尻尾だけだが、やましいことをしている気持ちになる。

でも……気持ちいいな。カシミヤとかムートンなど比べものにならないくらいの肌触りだ。

彼女の尻尾を枕にして寝たくなる。

そして、俺の手はハルの耳に移動した。

暖かい――それに柔らかい。脈打っているのがよくわかる。ハルの体温が俺に伝わってくるのがわかる。

「……ごちそうさまでした」

「……あ、あの、ご主人様、できればお腹も……撫でて頂けると……うれしいです」

「お腹?」

「はい、白狼族はお腹を撫でて頂くことが最大の忠義の印になります」

ハルはそう言うと、仰向けに横になり、服を少し捲った。

おへそが少し見える。

「誰か来たら匂いでわかります」

「うん、俺も気配探知で誰か来たらわかる。でもいいのか?」

「はい……本当は部屋に戻ってからと思っていましたが……その、尻尾を触っていただいて……」

……よし、据え膳食わぬは男の恥。まぁ、お腹を撫でるだけなんだけど。

俺は手を伸ばして、ハルのお腹を触った。

柔らかい……引き締まっているのに、この柔らかさについ夢中になってしまいそうになる。もっと触っていたい。その願いは最上限の形でかなえられそうになる。

「……ご主人様、もう少し上もお願いします」

「もう少し上?」

「はい、もう少し上も」

「もう少し上……いいのか?」

そこって、あれですよ?

二つのお山があって、そこはもうお腹じゃ……ってあれ?

「ハル?」

「………………」

「おおい……ハルさん?」

「………………スゥー」

寝ている……え? このタイミングで?

なんで?

と思ったら、ハルの顔が真っ赤になっているのを見て、俺はある可能性に気付いた。

酔っぱらっているんだ! 干し肉の消毒用に使われたアルコールで!

どうも大胆だと思ったら、そういうことか。

一体、いつから酔っぱらっていたんだろう。尻尾を撫でたときから? それとも仰向けに横になったときから?

本人に聞くとハルは絶対に恥ずかしがるだろうから、今日のことはハルには何も言わないでおいてやろう。絶対に忘れはしないが。

俺は彼女の服を整え、そしてハルの頭を撫でた。

ハルの意外な弱点も発見できたし、よしとしよう。

俺は行き場の失った右手を広げ、天井に伸ばした。流石に寝ている女の子の胸を揉むなんてできないよ。

すると、後ろの扉が開き、奥にはゴブリン王、そして五匹のゴブリンがこちらを見ていた。

ニヤニヤ笑いやがって。所詮俺は据え膳も食えない、恥の多い人生を送ってきたよ。

100パーセント被害妄想なのはわかっているが、俺は剣を抜いた。