軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

小さいメダル

200年もの昔。魔王ファミリス・ラリテイ戴冠。南の大陸・ツァオバールを魔族の支配下に置く。

ツァオバールにあるアルタル湖は魔族にとっても、そして、この世界において最大の宗教派閥でもあるラコント教会にとっても聖地であり、アルタル湖の領有権を巡り戦争が起きた。

長きに渡る戦争の後、12年前、四人の英雄が魔王ファミリス・ラリテイを討伐、魔族をツァオバールの南側へと追いやり、アルタル湖を奪還した。

その四人の英雄の一人というのが、魔導技師ダイジロウであるとハルは語った。

そういえば、あの手記が書かれたのも12年前だった。

魔王を倒し、英雄として崇められてお金に余裕ができたのだろうか?

てっきり、瞬間移動の力を女神から貰って、交易チートなどで大儲けをした、とか勝手に予想していたが、現実は想像の斜め上を行くようだ。

事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだ。

ちなみに、ダイジロウさんがいるという魔法都市マレイグルリがツァオバールの首都らしい。

「へぇ、なるほど。スラッシュ……固いな」

目の前の青いゲル状の魔物を見つめ、げんなりした口調でつぶやく。

4階層の敵、スライムだ。

かなり強くなったはずなのに、なんでこうも倒せないんだ。

「スラッシュ! はい、スライムは物理攻撃は効きにくいのと、武器で斬れば得物を錆びさせます。遠くから離れて、スラッシュで攻撃を続けるのが有効です」

とりあえず、スライムは速度は遅いので、こうしていたらこちらがやられることはない。

だが、MPの問題もあるし、挟み撃ちの可能性もあるから、きっちり倒しておきたい。

先ほどのスラッシュから10秒後、再度スラッシュを使い、スライムを撃破。

俺がトドメをさしたのは偶然だが、おかげで経験値が多めに手に入る。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【見習い魔術師スキル:火魔法を取得した】

木こりレベルが8に、そして見習い魔術師レベルは5に上がった。

火魔法……魔法……魔法来たぁぁぁぁっ!

テンション上がるな、これ。

やっぱり異世界って言ったら魔法だよな。

ここでダイジロウさんの手記を思い出す。

【この世界の能力の中に魔法がある。地球の民なら誰もが憧れる魔法だ。簡単な魔法は見習い魔術師レベル5で覚えられる火魔法だ。魔法を取得すると、マジックリストオープンと念じるんだ。使える魔法が表示されるはずだ。ちなみに、回復魔法を覚えたければ平民レベル60の見習い法術師にならないといけず、生半可な方法だと取得できない】

とある。なので、

「マジックリストオープン」

と呟いた。

……………………………………………………

プチファイヤ Lv1 消費MP3

……………………………………………………

「……弱そうだな、プチファイ……呟いても大丈夫かな」

魔法の名前を唱えたら自動的に魔法が発動する、とかだったら怖いから、とりあえず、誰もいない方向を向き、手を前に。

そして、魔法を使いたいと念じてプチファイヤと言ってみる。

すると、手のひらから小さな火の玉が飛び出して、壁に激突。焦げ跡も残さずに消滅した。

【イチノジョウのレベルが上がった】

お、レベルアップきた。魔法を使うと見習い魔術師の経験値が溜まるようだ。レベル6に上がっている。

「ご主人様、今のは魔法ですか?」

スライムの魔石と乾燥した寒天のようなアイテムを拾っていたハルが訊ねてきた。

「あぁ……スライム相手だと魔法があったほうが楽だよな」

「はい、今の威力でしたらスライムなら一撃で倒せると思います。ご主人様は魔法剣士なのですか?」

「え? いや、違うけど?」

「普通、剣士は魔法の威力が弱く、魔術師は力がほとんどありません。両方使いこなせるのは魔法剣士か、肉体強化スキルを多く取得している魔術師、逆に魔術強化を多く取得している剣士くらいのものです」

「んー、まぁ、魔法剣士に似ている職業だと思ってくれ」

無職について説明するのはもう少し後にしようと思っている。というのも、ただ「俺は無職だ」と語るのが嫌なだけなんだが。

合コンで職業を聞かれて「無職です」と答えるのは誰だって嫌だろう。それと一緒だ。

「そういえば、ギルドの舞台での戦闘って、剣はご法度だけど、魔法は大丈夫なのか?」

「禁止ではありませんが、舞台での戦いを見ものにしている観客からは野次が飛びます」

「確かに、快くは思われないだろうな」

ハルから寒天もどきと魔石を受け取り、アイテムバッグに入れながらつぶやいた。

プロボクシングの試合を見に行って、一人がボウガンを用意しているようなものだ。

あと、プチファイヤは、1回使っても魔法のレベルが上がらなかった。

魔法のレベルアップに必要なのは経験値ではなく、熟練度と呼ばれるものらしいから、成長チートとは無縁なのだろう。

「魔術師は大成するには大金が必要と聞きます。魔法を多く使えば魔術師は成長しますが、MPを回復するためのマナポーションが高価だからです」

「なるほど……錬金術師になってマナポーションを自作するしかないのかな」

「マナポーションを作るのは錬金術師ではなくて薬師ですね。薬師の中でも高レベルの者しか作れません。だから高いのです」

ちなみに、薬師になるには、農家のレベルを5にして、採取人の職業を解放し、採取人のレベルをさらに10にすることで解放されるらしい。

錬金術師は見習い魔術師レベル10で解放される見習い錬金術師をレベル20にしたら解放されるという。

ちなみに、薬などを作るのは薬師。

鉱石から金属を、金属を組み合わせて合金を作るのが錬金術師だという。

「あっちにいるのはスライムかな」

気配探知を使うと、少し離れた場所に気配があるのを感じた。

この階層にはスライムとジャイアントバット、ゴブリンの三種類の魔物がいるらしい。4階層に入ってからは魔物避けのお香の効果もないから、敵の数も多いしな。

「はい、スライムの匂いですね」

「よし、じゃあ早速試し打ちさせていただきますか」

走っていくと、そこにいたのは――金色のスライムだった。

「…………」

「…………」

目が合う俺とスライム。

よし、とりあえず「プチファイア」と唱えてみた。

「あ、ご主人様、そのスライムは!?」

「え?」

ハルが驚き、俺が声を上げた。

だが、スライムは蒸発……楽々倒せた。

【イチノジョウのレベルが上がった】

無職のレベルが54に、剣士のレベルが7に、木こりのレベルが9に上がった。

そして――

【称号:レアハンターを取得した】

【称号スキル:幸運UP(微)を取得した】

おぉ、初めての称号GET。

こいつはラッキーだ。ステータスを見ると、幸運が1割増えている。

「ご主人様、レアメダルです」

「レアメダル?」

金色のスライムは魔石とともに、一枚のメダルを落としていた。

これがレアメダルというらしい。

「レアメダルってなんだ?」

「レアメダルは、レアモンスターが必ず落とすアイテムで、魔物使いがテイムして仲間になった魔物に食べさせることで、その魔物がパワーアップします」

「便利なアイテムなんだな」

「とても珍しいアイテムでして、レアメダル1枚で3万センスの値段で売れます。初心者迷宮のような低レベルの迷宮では一生に一度見られるかどうかのアイテムです」

「金貨3枚か!? それは運がいいな。レアモンスターなのに経験値が普通のスライムと変わらないのは残念だけど」

無機物のメダルを食べさせられる魔物の気持ちは横に置いて、小さな金色のメダルを見て、俺はふと気になったことを訊ねた。

「このレアメダルをたくさん集めると、レアなアイテムと交換してくれる王様っているのか?」

「高価で有用性の高いアイテムですから、たくさん集めたらどこの王様でもアイテムと交換してくれると思いますよ」

「そうか……そうだよな」

変な質問をした。

とりあえず、レアメダルはアイテムバッグに入れておくとして、迷宮探索を続けよう。