軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 ガリソンの冒険日誌④

落とし穴の下は坂になっていて、俺は滑り落ちていった。

落とし穴の先にスパイクがあって突き刺さるという罠かと思ったが、これを見るとそういうものではないようだ。殺すつもりならこんな長い坂を作る必要はないから。

「くそっ」

俺は落下をなんとか堪えようとするが、坂の摩擦係数がとても低い。坂だけじゃない。手袋を加えて手の平を壁に押し当てても、壁までもがツルツルと滑ってしまう。ここまで滑らかな壁をどうやれば作る事ができるかわからないが、とにかくこのまま流れに身を任せるしかなさそうだ。

かなり滑り降りたところで、下に落ちる穴を見つけた。抵抗できない俺はそのまま穴へと落ちてしまう。せめて受け身だけはしっかりとろうと身構えて。

そして、俺は二メートル半くらいの高さの場所から落ちた。着地は完全に成功とは言い難いが、しかし外傷はなさそうだ。

そして、そこにいたのは――

「オークっ!?」

じゃない――コショマーレ様の女神像だ。

なんでこんなところに?

じゃない、まさか――

(ここは女神像の間かっ!?)

嘘だろ? ボスも倒していないのになんで女神像の間に辿り着いたんだ?

(そういや聞いたことがあるな……一部の迷宮には女神像の間に直結する秘密の抜け穴があるって――この迷宮にもあったのか)

こりゃ、この場所のことを言ったらギルドから特別報酬も貰えそうだ。

とりあえず、ここまで来たのは初めてなので女神像に祈りを捧げる。

【称号:迷宮踏破者を取得した】

【クリア報酬スキル:迷宮道具錬成を取得した】

――っ!?

迷宮道具錬成だって?

マジかっ! 宝くじに当たったような気分だ。

迷宮道具錬成というのは、迷宮の中で使えるアイテムを錬成するためのスキルだ。とても珍しいスキルであり、このスキルを持っているだけで教会に行けば司祭相当の待遇で雇ってくれる。

俺の人生バラ色じゃねぇかっ!

俺がそう思って天を仰いだら、それらが落ちてきた。

「そんなところで何をやってるんだ、ガリソン」

「そんなところで何をやってるの、ガリソン」

俺の背中の上でジョフレとエリーズが見ればわかることを言う。

「お前等に押しつぶされてるんだよ、いいからそこをどけ」

俺に怒られたジョフレとエリーズは立ち上がることなく坂の感想を言った。

「それにしても凄い滑り台だったね――そういえばこんなことまたあるような気がするんだが、エリーズはどうだ?」

「私も、これと似たようなことがこれからあるような気がするよ、ジョフレ。きっと既視感ってやつだね」

「おいおい、エリーズ。まだ起きていないのなら既視感じゃないだろ。これは予知夢だ」

「予知夢? じゃあこれは夢なの、ジョフレ」

「そうか、これは夢だったのか! どうりで落ちてきたのに痛くないわけだ!」

「お前等が痛くないのは俺がクッションになったからだっ! いい加減にどいて女神様にでも祈っていやがれっ!」

ようやく自分たちの前に女神像があることに気付いたジョフレとエリーズは女神像に祈りをささげた。

すると、ジョフレの前には宝石のような小石が、エリーズの前には槍が落ちてきた。

「おいおい、お前らもついてるな。スキル書と魔槍かよ」

スキル書は念じればスキルを覚えられる小石のことだ。

どんなスキルを覚えられるかは、鑑定をしないとわからない。しかし最低価格でも金貨で取引される代物だ。

魔槍はその名の通り魔法の力が込められた槍だ。

まぁ、俺のスキルには敵わないがどちらも当たりの部類だな。

「やったな、エリーズ。さっそく使ってみろよ」

「いいよ、ジョフレのなんだからジョフレが使いなよ」

「お前等、そういうのは後にしろ。それより、はやく帰ろうぜ」

と俺は後ろの扉を押して――気付いた。

扉が開かないことに。

「閉じ込められた?」

そういえばボス部屋の奥の扉はボスを倒さないと開かないんだった。

となれば、誰かがこの迷宮をクリアするまで出られないってことか。

しかし、最近は迷宮を攻略する人も減っている。浅い階層の魔物退治は定期的に行っているが、ここまで来る冒険者が現れるのに何週間もかかる可能性もある。

「……どうにかして出られないかな」

鍵穴のようなものはあるのだが、当然鍵は持っていないしピッキング技能もない。あったとしてもこの扉は特別なものなので開けられないだろう。

せっかくお宝とレアスキルが手に入ったっていうのに、こんなところで餓死するなんて御免だ……ん?

レアスキルか――一体、どんなものが錬成できるんだ?

と思って確かめてみる。

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レベル1:迷宮鍵 必要素材:針金

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迷宮鍵? おいおい、これは夢か? 予知夢か?

鍵を作れるなんて――運がいい。

って駄目だ……考えてみれば針金なんてどこにも――ん?

そう言えば、と俺は思い出したようにそれを取り出した。

エリーズから貰った武器――縫い針。

これも金属でできているんだから、立派な針金といえば針金じゃないか?

ガリソンは早速スキルを発動させた。

縫い針が形状を変え、鍵の形になった。

「よし、成功だっ! これなら――」

ゴブリンキングと目があった。

畜生、そうだよな、ボス部屋だもんな。

ボスがいるよな。

「ジョフレ、その槍を貸せっ! 俺がやってやるっ!」

「わかった! 援護するぜっ!」

「私も援護するよっ!」

ジョフレが俺に槍を渡し、ふたりはそれぞれ石を手に持つ。

ふたりも投石スキルは持っているからな、石を投げて援護くらいは容易いだろうとガリソンは判断した。

「よし、行くぞっ!」

ガリソンはそう言って、前に一歩踏み出した――その直後だった。

「がっ!」

ガリソンの後頭部をなにかが強打した。

「「あ、ガリソンごめん」」

ジョフレとエリーズが投げた石だった。

不意を打たれて、前のめりに倒れるガリソン。

そのガリソンを見て、ゴブリンキングは優しい目でガリソンの肩を叩き、出て行くように出口を指さした。

「よかったな、ガリソン。ゴブリンキングが優しい人で」

「よかったね、ガリソン。ゴブリンキングが優しい人で」

「……ゴブリンキングに同情されて見逃して貰えたのって、きっと俺が世界で初めてなんだろうな」

ガリソンはそう言って、目頭を押さえた。

その後も地上に戻るまでにいろいろとあり、地上に戻ってからもゴブリンソードを持って帰ってこれなかったことで、依頼失敗の報告をしてカチューシャに呆れられることになった。