軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

求職スキル

求職スキルを手に入れ、過去のトラウマがフラッシュバックする。

ハローワークに行った初日。何をしたらいいのかわからずに右往左往していて、番号札を取ったものの中々呼ばれずに結果、アルバイトの時間になったので逃げるように退散したあの日。

ハローワークの職員の人からブラック企業の見極め方を教えてもらった結果、次から次へブラック企業が求人情報に溢れていることを知り、就職鬱になりかけたあの日。

そして、何より、就職百連敗という記録を樹立したあの日。

「………………」

俺はその場にうつ伏せに倒れてしまった。

「あぁぁぁぁ、おにいが真っ白に燃え尽きてるっ!」

~暫くお待ちください~

「おにい、もう大丈夫?」

心配そうに俺を見詰めるミリに尋ねられた。

「ああ、ちょっと嫌なことを思い出しただけだ……ありがとうな。どのくらい気絶していた?」

「三日程だよ」

「そうか、三日で済んだか……どうりで腹が減ったと思ったよ」

「嘘だからっ! 二十分、呆然としていただけだから! 」

二十分か……それでも二十分気を失っていたのか。

むしろ、僅かニ十分で自我を取り戻すことができたことを考えたら僥倖と言ってもいいだろう。

「おにい、いったい、何があったの?」

「あぁ、スキルを覚えたんだ。無職レベル100のスキルだよ。あぁ、無職はレベル100が限界みたいだ」

「へぇ。そのスキルって何?」

「なぁ、ミリ。限界突破薬って飲めばどのくらいレベルアップできるんだ?」

「一本飲んだら初期上限の二倍までだから、無職レベル200まで上げられるようになると思うよ……おにい、それでスキルって」

「そうだ、キリリ草を手に入れないといけないよな」

「……うん、そうだね」

ミリが優しい目をして頷いた。その目が暗に言ってくれている。

話したくないのなら無理に話さなくていいよと。

なんとできた妹だろうか。

ダメだよな。このままではよくないよな。

「実はな、『求職』というスキルなんだ」

「……おにい、無理しなくていいよ。きっとそれはおにいの就職ストレスによる幻覚だから」

「違うよっ! 幻覚じゃなくて、本当に求職なんだ」

「本当に? 本当にそんなふざけた名前のスキルなの?」

ミリは半信半疑のようだが、俺のステータスを見てみろと言う。

スキル整理でまだ隔離していないから、ステータスを見たらウソでないとわかるはずだ。

「うん、わかった。『ステータスオープン、イチノジョウ』」

ミリはそう唱え、俺のステータスを確認した。

ミリは俺のステータスを見て、まるで時間が停まったかのように一切動かなくなった。瞬きすらしていない。

そして、十秒後。ミリはまるで天使のような笑みで俺に言った。

「あぁ、おにい。創生剣っていうのは魔力を使った剣を生み出す力で、霊体も切り裂けるの。魔力を変質しているだけで発散しているわけじゃないからMPは消費しないから、力を隠す時以外は鋼鉄の剣じゃなくて創生剣を使った方がいいね」

「誤魔化すなっ! 俺のスキル見ただろっ!」

「見たよっ! 誤魔化したいよ! 魔王千年以上やっていて、こんなふざけたスキル見たことないよっ!」

ミリが大きな声をあげた。

「どんな効果かも一切わからないよ」

「あぁ、スキルの効果なら多分わかるぞ。俺にはスキル説明っていうスキルもあるからな」

「説明しようっ! って奴?」

「んなヤッ〇ーマンみたいなもんじゃなくて、普通に鑑定スキルの一種だよ」

と言って、俺は求職スキルを調べた。

……………………………………………………

求職:その他スキル【無職レベル100】

スキルを使用すると、五つの職業が表示され、その中からひとつを選んで別職業レベル1になることができる。

スキル使用後二十四時間経過で無職に戻る。無職に戻った後、

二十四時間求職スキルを使用できない。

無職に戻った時のレベルはスキル使用前のレベルになる。

レベルアップして修得したスキルはそのまま使用できるが、既に修得しているスキルは修得できない。

……………………………………………………

その説明を一言一句漏らさずにミリに教えた。

「ねぇ、おにい、これって……」

「あぁ……これは……」

俺は天井を見上げた。

岩肌の天井は僅かに湿っていて、触ればきっと冷たいことだろう。

無職はレベルをあげても成長しない職業だと言われている。そのため、二十四時間という制限があっても他の職業になることができるのは便利なスキルだ。俺の成長チートスキルがあれば、二十四時間本気で頑張れば様々なスキルも手に入れることができる。

ただし、スキルを利用中は無職を育てることができないので、やはり使いどころに悩む。

だが、俺とミリが言いたいのはそういうことではない。

これは――このスキルは――

「日雇い労働じゃないかっ!」

無職を極めた結果、斡旋されたのが日雇い労働ってどういうことだよっ!

日雇い労働中に身に付けたスキル(ノウハウ)を就職に役立てろってことなのかっ!?

「ねぇ、おにい。とりあえず一回使ってみたら?」

「そうだな……」

まぁ、五つの中から一つ選べる形式だというのなら、キャロの誘惑士のようなリスクのある職業以外を選べばリスクは軽減できるか。

「よし、使ってみるかっ! スキル「求職」発動っ!」

…………………………

・転職する職業を選んでください

(選択しない場合、五分後自動で選択されます)

タンク:Lv1

ヒモ:Lv1

アマゾネス:Lv1

見習い料理人:Lv1

詐欺師:Lv1

…………………………

なんだこりゃっ!

「おにい、どうしたの?」

「普通の職業もあるんだけど、それ以上にラインナップがひどすぎるんだよ。ミリ、こっちの世界でヒモって職業知ってるか?」

「あ……うん。年上の女性から可愛がられるパッシブスキルを持っていて、パーティリーダーが手に入れた経験値の半分が手に入るスキルだったと思うよ。普通に転職できる職業じゃなくて、女神の天恵でなれる職業だったと思う」

「とんだ屑職業じゃねぇか……アマゾネスって、女性戦士だよな?」

「うん、女性の戦士だよ……男性は絶対に転職できないんだけど」

転職したらどうなるんだ?

転職した途端に女体化とかしそうで怖い。

あと、詐欺師って普通に犯罪者じゃねぇか。

いや、盗賊や山賊、海賊っていう職業があるくらいだし、そういう職業もあるのだろう。

「まともな職業はタンクと見習い料理人か」

「あ、うん。タンクは普通に珍しい職業だよ。レアモンスターのタンクタートルの体当たりを十回受けると転職できるんだけど、遭遇率がかなり低いから伝説の職業とも言われているの。覚えられる職業は主に体を頑丈にしたり、仲間のダメージを肩代わりするスキルを覚えられたかな」

「あ、それはいい職業だな。よし、設定しておくか」

とタンクに設定した。

五分選択しなかったら自動で選ばれるらしいからな。詐欺師になってしまったら町に戻ることもできない。

【第一職業をタンクに設定しました】

よし、これで一安心だな。

でも、犯罪職に転職できるのなら、犯罪職でしか手に入らないスキルも手に入るってことか。

これはある意味便利なことなのかもしれない。

さて、スキル確認も終わったことだし、とっととキリリ草を摘んで帰るか。

そう思って奥の女神像の間に行った。

「あれ?」

そこにある女神像を見て、俺は首を傾げた。

そこにあった女神像は――今はいない女神の像があると聞かされていた。

だが、実際にそこにあった女神像を俺は見たことがある。

ベラスラの町の教会で見た、頬が痩せこけた女神。

「ミリ、これって――」

「う……うん。女神ミネルヴァよ」

ミリがはっきりと言った。

「だよな。てっきり、メティアス様の女神像があると思っていたんだが」

「メティアス?」

「あぁ……ケット・シーの村の近くのダンジョンで見た女神様の名前だよ。違ったか? そういえば、魔王が関わっているってステラが言ってたけど」

「私が関わってる?」

ミリは固まったまま動かなくなる。

そして、顔面が蒼白となると、まるで巨大地震を予知してしまった子供のように震え出した。

「あれ? ちょっと待って――本当に思い出せないわ。メティアス――その名前には聞き覚えがあるはずなのに、大切な名前のはずなのに――」

「ミリ、落ち着けっ!」

俺は思わずミリを抱きしめた。

「無理をするなっ! 大丈夫だ――って何が大丈夫かはわからないが、俺がついてるから大丈夫だ」

全然慰めになっていないような気もするが、ミリは俺に抱きしめられてようやく落ち着いたようだ。

ミリは俺の服を掴み、

「ありがとう、おにい」

そう言って目を閉じた。

「あぁ、気にするな」

俺は求職のトラウマで二十分くらい正気を失っていたが、ミリはわずか三十秒で落ち着きを取り戻した。

「もう大丈夫そうだな。メティアス様のことは帰ってからゆっくり考えよう」

「うん、そうだね」

「あ、そうだ。ミネルヴァ様の女神像なら、祈ったら迷宮踏破ボーナス貰えるんじゃないか?」

俺がそう呟いたとき、女神像から声が聞こえてきた。

『……死にたい。もう生きているのが面倒くさい……どうやったら女神って死ねるのかしら……ふふふふふ』

なんだ、この聞いているだけで鬱になりそうな声は。

「……あぁ、これ、ミネルヴァね」

ミリが疲れた声で言った。

そうか、残念女神様か。