軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

妹ルート、その2

「……どうしたの? おにい」

「いや……ちょっと……な」

さて、なんて言えばいいんだ?

正直に言うべきなんだろうけど、ミリが俺の無職卒業を心から喜んでくれたばかりなのに。

いや、無職といってもシステム上のものだし、実際今はそれなりに金を稼いでいる。

行商人としてお金を……稼いでいるのはキャロだった。

魔物を狩って金を……名義はハルのものだ。

ベラスラの町で大儲け……ってそれも大半はハルだし、その上全部税金として納めてしまった。

なんてこった、マリーナですら大道芸人として金を稼いでいるというのに、俺のここでの職業は何て言えばいいのかわからない。

って、この心の葛藤何回目だよ。

「おにい……もしかして本当に無職なの?」

「え゛!? なんでそれを――」

「いやねぇ」

とミリは視線を逸らし、頭に手を当てて言った。これはミリが悪さをしたことを白状する時の仕草だ。

「教会の神官さんを」

「神官さんに何をしたっ!?」

「ちょっと操って情報を手に入れたの。と言ってもおにいが教会に来ていないって情報しか得られなかったから、もしかしたらまだ無職なのかなって」

ミリが「ちょっと操って」と、「ちょっと町まで買い物に」みたいに気楽に言った。そこまであっけらかんと言われたら怒る気にもならない。いや、しっかり怒るんだけどね。

「他人を勝手に操るなバカ」

とミリの頭にチョップを喰らわせる。家庭内暴力だ。DVだ。

だが、ミリはどこか嬉しそうに舌を出して、

「ごめんなさい」

と言った。本当に謝っているようには思えないんだが、でもミリが謝る以上、俺も謝らないといけない。

「あぁ、ミリの言う通り、俺はまだ無職だ」

「そうなんだ……(コショマーレから聞いたときはまさかと思ったけど本当だったんだ)」

「ん? ミリ、何か言ったか?」

「えっと、なんで無職なの? 無料で転職できたんでしょ?」

「あぁ……それは俺のステータスを見てもらった方が早いな。あんまり建物の前で長話も何だし、入ろうぜ」

と俺はミリを冒険者ギルドの中へと誘った。

冒険者ギルドはどこも一緒なのか、ポートコベの冒険者ギルドも酒場兼冒険者ギルドのようで、大きな漁が近いからか昼間から飲んでいる漁師(職業を勝手に調べた)が大勢いた。

ミリはツカツカとその男たちを無視して、受付のカウンターに歩いていくと、冒険者である証明書をカウンターの上に置いた。

「パーティー申請して。この人を私のパーティに一時移籍よ」

「して下さい、お願いします」

「……して下さい、お願いします」

俺がミリに敬語を言うように足らない言葉を告げると、彼女は一拍置いて復唱した。

受付の男はそんな俺たちのやりとりに苦笑しながら、

「かしこまりました。手数料五センスになりますがよろしいですか?」

と言ったので、俺はカウンターに銅貨を五枚、アイテムバッグから取り出して置いた。

「ありがとうございます。移籍時間はどのくらいにしましょうか?」

「一日でいい?」

「あぁ、それで十分だろ。一日でお願いします」

と俺は肯定して、受付の男に頼んだ。

「ミリも明日はハルのパーティに入れよ」

「え……それってハルワがリーダーになるってことでしょ。一応、私の前世あの子の主人だったんだけど」

「あぁ、それは確かに気まずいな」

言うなれば、転職先にいた上司が前の職場の元部下だった時くらいのいたたまれなさがあるだろう。

「おにいがリーダーをすればいいじゃん」

「いや、ミリ。さっき言っただろ?」

と俺はその後の言葉を濁す。

俺は無職だから冒険者ギルドに登録できないし、冒険者じゃないから冒険者ギルドでパーティ申請もできないんだって。

冒険者ギルド以外でパーティ申請する方法知らないし。

「それについては後で説明するわ。それと、個室の利用を――30分お願いします」

とミリはそう言って、銅貨10枚を置いた。

そうか、確かに俺の無職の秘密とかミリの魔王の話とかするのなら個室は必要だった。失念していたな。

「はい、こちらが個室の鍵になります。使用上の注意に関する説明は必要ですか?」

「必要ないです」「こちら、一時移籍の用紙になります」

と男が紙を差し出したので、俺とミリは用紙に記入した。

「おにい、もう文字覚えたんだ」

と小さな声で尋ねた。

「あぁ、余裕だったよ」

と俺は言ったが、本当はスキルによる恩恵だった。

そして、俺たちは用紙を出して、一時移籍が終わった。

それにしても、どうやってミリは冒険者ギルドに登録したのだろうか?

こいつも魔王なのに……と俺が思っていると、

「ん? どうしたの、おにい」

俺の視線に気付いたミリが笑って尋ねた。

「いや、後で聞くよ」

そう言って、俺たちは個室に向かった。

個室は椅子とテーブルがあるだけで、一人用カラオケボックス並に狭く、壁もそれほど分厚くない。

これだと声が外に漏れてしまいそうだ。

「あまり大きな声で喋らなければ大丈夫だよ」

「でも、一応保険はかけておくか」

と俺は言うと、

「 沈黙の部屋(サイレントルーム) 」

と生活魔法Ⅱで取得した 沈黙の部屋(サイレントルーム) を使い部屋全体を包み込んだ。

これで音が外に漏れる心配はない。

「おぉ、おにいそんな魔法も使えるんだ。成長したねぇ」

「俺の成長を喜ぶな。お前は俺の母親か!?」

「うんうん、惚れ直したよ」

「冗談ばかり言うな」

お前が家族思いなのはよくわかっているが、惚れた腫れたの関係性ではないだろうに。

「で、ミリのステータス、見ていいのか?」

「うん、いいよ。私もおにいのステータス見るね」

許可を貰ったので、俺はステータスオープンの魔法を唱えた。

「ステータスオープン、ミリっ!」

しかし、返事がない。

どうして?

「いや、おにい。一応、ミリはこっちの世界じゃミリュウだからね」

「あ、そうか……そうだよな」

と俺は苦笑し、魔法を唱え直すことにした。

「ステータスオープン、ミリュウ」

魔法を唱えると、ミリのステータスが現れた。

……………………………………………………

名前:ミリュウ

種族:ヒューム

職業:闇魔術師:Lv60★

HP:120/120

MP:440/440

物攻:100

物防:100

魔攻:550

魔防:495

速度:130

幸運:10

装備:セーラー服 運動靴

スキル:【空間魔法Ⅲ】【闇魔法Ⅷ】【MPUP(微)】【魔攻UP(微)】【魔防UP(微)】

取得済み称号:迷宮踏破者Ⅳ

転職可能職業:平民Lv1 薬師Lv1

……………………………………………………

……ん?

なんだ、これ。

「ミリ、お前のステータスが普通に見える。いや、かなり強いんだけど」

「え? あぁ……ごめんごめん。もう一回見て」

「? わかった」

よくわからないが、ミリの言う通りにしてみる。

「ステータスオープン、ミリュウ」

と唱えた。ミリも俺に合わせるように、

「ステータスオープン、イチノジョウ」

と唱える。

……………………………………………………

名前:ミリュウ

種族:ヒューム

職業:魔王:Lv39

HP:505/505

MP:330/330

物攻:504

物防:505

魔攻:2004

魔防:1550

速度:251

幸運:30

装備:セーラー服 運動靴

スキル:【空間魔法Ⅲ】【闇魔法Ⅹ】【調合Ⅳ】【MP吸収】【MP節約】【ステータス偽造】【魔王の権威】【悪魔召喚】【魔獣特攻】【月の力】

取得済み称号:迷宮踏破者Ⅳ

転職可能職業:平民Lv1 薬師Lv1

天恵:薬学

……………………………………………………

ん、今度はしっかりステータスを確認できた。

どうしてだ? と思ったら、直ぐにわかった。

【ステータス偽造】

これにより、ステータスを偽造していたのだ。

でも、先ほどの戦闘で職業鑑定を使った時に魔王という職業とそのレベルを看破できたところを見ると、職業鑑定スキルだけはごまかせないようだ。まぁ、無職スキルはいつでも規格外だからな。

ていうか、なんだこれ。強すぎるだろ。

「ミリ、お前のステータス……ミリ?」

ミリは何故か顔が真っ青になり、

「おにいっ なんなの、このステータス!? ぶっ壊れ性能でしょっ!?」

と言われ、俺は自分のステータスを確認した。

……………………………………………………

名前:イチノジョウ

種族:ヒューム

職業:無職Lv99 火魔術師Lv60★ 水魔術師Lv60★ 風魔術師Lv60★ 土魔術師Lv60★

HP:444/444(10+90+90+90+90)(×1.2)

MP:403/2416(8+300+300+300+300)(×2.0)

物攻:394(9+80+80+80+80)(×1.2)

物防:403(7+90+90+90+90)(×1.1)

魔攻:3608(4+450+450+450+450)(×2.0)

魔防:3206(3+400+400+400+400)(×2.0)

速度:356(4+80+80+80+80)(×1.1)

幸運:55(10+10+10+10+10)(×1.1)

装備:綿の服 皮の靴 鉄の軽鎧 アクラピオスの杖

スキル:【剣装備Ⅱ】【スラッシュⅡ】【回転切りⅡ】【剣術強化(中)】【二刀流】

取得済み称号:レアハンター スキルマニア 職業マニア 迷宮踏破者Ⅳ 剣の道 見習い魔術師の極み 狩人の極み 見習い法術師の極み 拳闘士の極み 槌使いの極み 見習い鍛冶師の極み 火魔術師の極み 水魔術師の極み 風魔術師の極み 土魔術師の極み 四大魔術師

無職Lv99 平民Lv75 農家Lv3 狩人Lv60★ 木こりLv14 見習い剣士Lv40★ 見習い魔術師Lv40★ 行商人Lv6 見習い槍士Lv8 剣士Lv60★ 弓士Lv1 見習い錬金術師Lv37 魔術師Lv67 斧使いLv1 槌使いLv40★ 拳闘士Lv60★ 遊び人Lv13 魔記者Lv7 見習い法術師Lv40★ 解体士Lv1 見習い鍛冶師Lv40★ 錬金術師Lv33 法術師Lv48 音楽家Lv1 歌手Lv12 ダンサーLv12 芸術家Lv10 魔法剣士Lv12 火魔術師Lv60★ 水魔術師Lv60★ 風魔術師LvLv60★ 土魔術師LvLv60★ 侍Lv6 剣聖Lv1 剣闘士Lv1 槌士Lv1 鍛冶師Lv10 ボクサーLv1 光魔術師Lv1 闇魔術師Lv1

天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20

……………………………………………………

今更ながら自分のステータスを確認し、ミリの言いたいことを確認した。

「お前の言いたいことはわかる。スキルが剣のスキルだってことだよな。全部スキル整理で隠してるんだ」

「そんなんじゃないよ。なんでおにいこんなに強いのっ!? なんで無職なのにこんなに職業いっぱい極めてるの!?」

「お前、自分のステータス見てみろ。それが答えだ。」

と俺は言った。

ミリはいろいろ言いたげだったが、自分のステータスを確認する。

すると、また驚いた。

「え? 職業が二個ある……なんで?」

俺には確認できないが、ミリの職業欄には、恐らく魔王の横に平民の職業が追記されているだろう。

「俺のスキルによるものだ。俺のスキルにより、仲間は職業が二個設定できる。そして、俺は職業を五個設定できるんだ」

俺は無職スキルについて説明し、自分のサブ職業が、火魔術師、水魔術師、風魔術師、土魔術師であることを告げた。

ミリは逡巡し、

「おにい、無職なのに四つも副業はじめたんだ」

と、ある意味お約束の皮肉を言ったのだった。