軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハルたちの武道会⑤

マリーナとにゃんと六星のひとり、ニャイが向かい合う。

ニャイが持っていたのは剣ではなく、鉤爪だった。

「それでは、王位決定武術大会、一回戦、第一試合――」

「王位決定武術大会、一回戦、第一試合、それでは――」

今回の試合の審判をする二匹の声が揃わない三毛ケット・シーが、最後は声を揃えて宣言した。

「「開始ニャッ!」」

その宣言と同時に、ニャイが前傾姿勢になる。

と同時に、マリーナが魔法の弦を引き、風の矢を放つ――と同時にさらに弦を引き、矢を放つを計三回行う。

ニャイはその矢を跳んでは躱し、跳んでは躱し、距離を詰めてきた。

マリーナはニャイと距離を取りながら、後ろに走りつつ矢を放つ。が――それでもニャイは軽く躱していく。

「……狭い闘技場だと弓矢での攻撃は利点が失われる……マリーナに勝ち目はないわね」

カノンが冷静に言った。

後ろ向きに走るマリーナと、二本足で攻撃を躱しながらではあるが前向きに走るニャイとの速度の差は歴然。しかもマリーナはこれ以上真後ろに逃げたら観客席に突っ込んでしまう。舞台がないとはいえ、観客席にまで行ってしまえば場外負けになる。

追い詰められた――と思ったカノン達と、追い詰めたと思ったにゃんと六星。だが、

「大丈夫ですよ」

そう言ったのは、ハルワタートだった。その目はまるで不安な色を浮かべていない。

カノンは知らないがハルワタートは知っている。

マリーナは、カノンと別れてから、物凄い速度で成長していることを。

マリーナは後ろに走りながら矢を放ち、これ以上後ろに行けないと確認すると、そこから一気に前に出た。そしてさらに矢を放つ。

「何発撃っても無駄ニャっ!」

ニャイがそう言って、先に撃った矢を躱そうとするが、その時、後から撃った矢が、たった今ニャイが躱した矢に命中。と同時に風の矢は互いに干渉を起こし、風の爆弾となって弾けた。

「ニャっ!」

躱したとはいえ、すぐ横にいたニャイはその爆風の煽りをもろに受ける。鉤爪を地面に突き刺してなんとか吹き飛ばされるのを避けようとしたが、それはマリーナに対して十分な隙を与えてしまった。

さらに風の矢がニャイの近くに向かって放たれる。そして、爆風にさらに吞み込まれ、方向を変えて風の矢がニャイの鉤爪に命中――鉄の鉤爪に罅が入る。風がおさまり、鉤爪を抜こうとすると、罅の部分がぽっきりと割れた。

「その爪じゃ、もう戦えぬだろう。降参したらどうだ?」

マリーナは汗を拭い、挑発するように言った。

ニャイは無言で鉤爪を外す。

そして、ニャイは四本足になり、そのまま前傾姿勢で前に突っ込んできた。

そのニャイに、マリーナは矢を放たない。

その速度は先程までの比ではない。矢を放っても躱されるのは明白だし、先程のような奇策はもう通じない。

そして――ニャイがマリーナの後ろにまわり、マリーナの背中に飛び乗ると、本来持つ研ぎ澄まされた爪をマリーナの首元に突き付けた。

その爪の感触を喉に感じ、マリーナは目蓋を閉じ、

「……参った。我の負けだ」

息を漏らして、そう言った。

その言葉が降参とみなされ、

「勝者、ニャイニャっ!」

「ニャイの勝ちニャっ!」

主審により、第一試合の終了と、マリーナの負けが宣言された。

ニャイは爪を下ろし、

「……どうしてニャ?」

「どうして……か。残念なことに我の魔力はそう高くない。これ以上矢を放つのは困難だ」

「そうじゃにゃいニャ。鉤爪を狙った攻撃、あそこで僕を狙ったら、確実に僕が負けていたニャ」

「そのことか……うむ。生憎と風の矢は威力を抑えることはできぬのでな。現在は敵とはいえ、あなたが傷つけば悲しむ娘がいる」

と言って、マリーナは自分の胸に手を当てた。マリナのことを言っているのだと、ハルワタートたちは理解した。

「それに、我の後には確実に勝てる三人が控えている。魔力切れで倒れることを思えばここが引き際だ」

マリーナはそう言うと、風の弓をくるくると回してハルワタートたちの元に戻った。

彼女の背を見て、ニャイは深々と頭を下げた。

「……驚いたわ。あの子の弓の腕は知っていたつもりだったんだけど、戦闘中に同じように――ううん、同じ以上にできるなんて」

「マリーナの攻撃法はその矢の技術と奇策が主です。戦いが長引けば明日の戦いに不利になると悟り、戦略的撤退をしたのでしょう……私たちを信じて」

「確かに、あの子のあんな戦いを見せられたら、負けるわけにはいかないか」

カノンは苦笑して言った。

「すまぬ、皆の者。負けてしまったようだ」

「マリーナさん、お疲れ様ニャ。いい試合だったニャ。次は私が頑張るニャ」

ステラは剣を抜く。

「次鋒よ、前に出るニャ!」

「前に出るニャ、次鋒!」

その目には闘志が満ち溢れていた。

にゃんと六星の次鋒はユニャという名前の灰色の猫。

武器は片手斧だった。

最初に会った時は全員短剣を持っていたけれども、あれはにゃんと六星の制式装備であり、得意な武器は全員違うらしい。

「……ステラ様――私はステラ様に勝ったことがありませんので、胸を借りるつもりで全力で戦わせていただきます」

「こちらこそニャ。ユニャの成長、見させてもらうニャ」

そして、第二試合がはじまった。

斧と剣。ユニャはケット・シー一番の力持ちらしく、その一撃は強力。だが、

「当たらにゃければ意味がないニャ」

ハルワタートには敵わないものの、ステラの剣速はケット・シー族の中でも随一の速度を誇る。

ステラは的確にユニャに剣を当てている。

そして、十五分後、ユニャが負けを認めた。