軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

成長チートの寄り道

残り四十八時間で、魔王ファミリス・ラリテイが封印した魔物が解き放たれる。

その理由は、結界の一部が破られたからだとシーナは言った。

「シーナ……もしかして、さっき俺にあの宝玉を見せたから封印が解けたのか?」

「いいえ、つい先日、西大陸の礎が解かれました。それが原因です。マスターがこの島に訪れたのは偶然です」

そう言ってもらって、少し安心するが、でも……

「そんなに凄い魔物なのか?」

「ファミリス・ラリテイ様が封印することしかできなかった魔物です。仮に魔王様を倒したという勇者とそのパーティが戦っても勝てないでしょう」

「そんな魔物が……それだと今の俺じゃ勝てないな……でも放っておくこともできない」

俺が悩んで呟く。

そんな狂暴な魔物が復活したら、どうなるか?

この島が蹂躙されるだけで済めばいい。近くを商船が通れば当然襲われるし、俺たちが船を漕いでいる間に襲われたりしたら命が危ない。

「……その魔物がこの島を襲うのは確かなのか?」

「先程も言いましたが、この島もその魔物を封印している礎が――先ほどの宝玉があります。その封印の礎を破壊するために襲ってくるでしょう。できることなら、そうなる前に、この宝玉をマスターには持って行ってもらいたいです。シーナ三号がこれまで守ってきたものを、これからはマスターが守ってください」

シーナはそう言うと、再度隠されていた宝玉を取り出す。

「……悪い、シーナ。俺はこれを持って行けない。シーナ、それはお前が持て。俺たちと一緒に逃げよう」

「申し訳ありませんが、それはできません。私の異動許可を出すことができるのは、グランドマスターである魔王ファミリス・ラリテイ様だけです」

「そんなこと言ったって、お前。すでに魔王はこの世にはいないだろうが」

「ええ、だから、シーナ三号はこの島から出ることはできないのです」

そして、シーナは言った。

「安心してください、マスター。私はこうして話すこともできますが、感情はありません。全ては役目を果たすために作られた人形です。使い捨ての消耗品とまでは自分でも思いませんけれども、それでも、シーナ三号は役目を果たすことが本望です」

「……魔物の封印が解かれるまではあと四十八時間あるんだよな」

「はい、四十八時間……正確には四十七時間と五十分程度でしょうが、封印が解かれてこの島に来るまでに三十分はかかります」

「そうか、それだけあったら、船を作れるな。キャロ、悪いが、ピオニアに言って、船の作製を急がせてくれ。そうだな、四十時間以内に作れるようにしてくれ」

そう言って、俺はマイワールドへの扉を開く。

俺が一緒に行かないことで、キャロは何かを察したようだ。

シーナを見て、

「三号さん、イチノ様を――あなたのマスターを信じてください。幸せになる権利は誰にでもあるそうですよ。きっと三号さんも、もっともっと幸せになっていいはずですから。キャロはそのことをイチノ様から教わりました」

そんな、俺が恥ずかしくなるような台詞を言った。

耳まで真っ赤になる。

「キャロ――急いでくれ。時間がない」

「はい、かしこまりました」

キャロは頷くと、マイワールドへと入っていく。

そして、俺はシーナに尋ねた。

「シーナ、猿と会話はできるのか?」

「はい、皆さんには果物を提供する代わりに魔物退治の協力をお願いしています」

「そうか。今から船が完成するまでの間、俺はここでレベル上げをしたいんだが、魔物を俺のほうに誘導してもらってもいいか? 罠の作動もその間は無しだ」

「かしこまりました。それでは、迷宮内の放送にて、魔物が湧いた場所を伝えますので、船が完成するまでの間、レベルアップに勤しんでください」

そう言うと、シーナは壁に手を当てた。

壁が突如として扉に変わり、開いた。

ったく、キャロの奴、恥ずかしいセリフを言いやがって。

おかげで、俺が言おうとした台詞まで恥ずかしくなりそうで、何も言えなくなったじゃないか。

……そうだよな、幸せになる権利は誰にでもある。

魔王ファミリス・ラリテイが封印するのがやっと? 勇者のパーティでも敵わない?

だとしたら、魔王よりも、勇者よりも強くなればいいだけの話じゃないか。

何、制限時間は四十八時間ある。普通の人の四百倍の成長速度がある俺にとっては、それはもはや二年分の修行以上だ。

しかも、五種類の職業を一気に育てることができるのだから、実質十年分以上の修行。さらに魔物の誘導により経験値を稼ぐ速度は向上し、さらに、その五種類のステータスを合算できるのだから、それはきっと勇者にも劣らない実力になるはずだ。

「悪い、ハル、マリナ。できれば早くふたりと合流したいが、少し待ってくれ」

俺の成長チートと無職チート、ふたつを合わせれば不可能なんてないってことを証明してみせたら、すぐにでもふたりのところに戻るから!