軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハルたちの武道会②

ハルワタート達が事情を説明すると、ノルンとカノンは、ふたり顔を見合わせて頷いた。ハルワタートに協力することに決まった。

そして、その足でケット・シーの隠れ里へと向かうことになる。

「カノンさん、久しぶりニャ」

「久しぶりだね、ステラさん。またマタタビ酒買いますか?」

「暫くは必要ないニャ。最高のマタタビ酒ができたのニャ」

ステラとカノンは顔見知りだったため、世間話をしている。

ノルンもカノンも、時間があったというのが一番単純な理由。ノルンは一之丞のことが心配だったという理由で、そしてカノンはマリナのことを心配してのことだった。それに、何より、ノルンは一之丞を見つけ出し、ミリと引き合わせてあげたいと思った。

「お兄さんを早く見つけて………………………………あれ?」

ノルンはそう呟くと、口をパクパクさせて、目を白黒とさせた。そして、何が起こったのか自分でもわからないように首をかしげる。

声にならない声というか、本当に声が出ていないというか。

「私もノルンも、今、ちょっと新しい主人の元で働いていてね、その主人の契約でね、私たちはその主人に関することが一切言えないようになってるの」

「そうなんですか。でも、それなら勝手についてきてもよかったのですか?」

「まぁ。主人から、暫くの間は自由に動いていいって言われてるしね」

カノンはそう言って、楽しそうに笑った。

決して楽しい状態ではないはずなのだけれども、本当に楽しそうに笑っている。

「でもマリナに会うのはやめたほうがいいかな。せっかく私から自立しつつあるのに」

「大丈夫だと思いますよ。マリナもしっかりと成長していますから」

「そう? ならいいんだけど。今から行くのってケット・シーの村よね?」

「はい。しっかりとしていますよ」

ハルワタートの無表情に押されてカノンはそれ以上何も言えなかったが、でも、あの可愛い物好き、特に猫好きのマリナがケット・シーを前に平静を保っていられるとは思っていなかった。そして、その予想は概ね正しかった。

「では、急ぎましょう」

そう言って、ハルワタートはステラを背負って走り出す。もちろん、ノルンたちのペースを考え、全速力ではない。彼女は自分の力が、一之丞によって引き出されたものだとわかっているから。むしろ心配していたのは、カノンのほうだった。自警団として日々迷宮の中に潜っていたノルンと違い、鍛冶師のカノンの実力を心配していた。

少しだけ体の軸がぶれ始めたノルンと違い、カノンにはまだまだ余裕があるように見える。

(体力ならノルンさんより上かもしれませんね……鍛冶は体力を使う仕事だからでしょうか)

この調子だと、カノンさんのほうはもう少しペースを上げてもついてきてくれるだろう――そう思ったハルワタートは、ノルンに対し、自分の背に乗るように言う(ステラはさらにノルンの上に乗った)と、力を込めて走り出した。

もちろん、ノルンとステラを背負っているし、全力というわけでもないけれど、この速度についてこられるとは――と、今度はスタミナではなく瞬発力の面でハルワタートはカノンに期待した。槌を振るうのが鍛冶師の仕事なら、腕力もあるだろう。

「ハルワタートさん、私を試しているのならもう少し速度を上げても平気だよ。これでも体力には自信あるから」

「あぁ……この背中に乗ってるとフェンリルの背中を思い出す……ハルさん、少しゆっくりお願いね」

「フェンリルって、あの伝説の魔獣ですか? その背中に乗ったんですか?」

ハルの声は少し大きなものではあるものの落ち着いているように聞こえる。ただし、その内心は驚いていた。

伝説の魔獣フェンリルについては、ハルワタートはそれを封印した本人から聞いたことがあった。

本人――魔王ファミリス・ラリテイ。彼女はハルワタートに語った。

彼女はフェンリルのことを、腕一本で倒せると表現した。それは、彼女にとっては誉め言葉の部類であることを知っていた。普段なら、指先ひとつ、もっと言えば指一本触れずに倒せると表現するからだ。

ここまでの話を鑑みたら、フェンリルの封印を解き、従魔として操っている人が、今のカノンとノルンの主人だということは予想できた。

「……うん、ここに来るまでにいろいろあってね」

ノルンはぼかすようにそう言った。ぼかさざるを得なかった。

彼女は、自分の主人について言うことができないからだ。

結局、ハルワタートは全速力の七割くらいの速度で、ケット・シーの村へと戻った。

往きは全力、帰りは七割の速度で走ったため、ハルワタートの足はかなり熱が篭っていて、触れたら痛みが走ってしまうほど、いや、触れなくても痛みが継続している状態だったけれど。

それでもなんとか間に合った。

「カノン? カノーンっ!!」

マリナが走ってきてカノンに抱き着いた。

「ちょっと、落ち着いてマリナ。成長したんじゃなかったの? これだと前のままだよ」

「ずるいよ、勝手にいなくなるなんて。お礼もまだ言えてなかったのに。だから言うね。ありがとうありがとうありが……」

そこでマリナははっとなり――抱き着いていたカノンを突き飛ばした。

「……そんなことより、大変……なんです!」

「私との再会がそんなことって……確かにちょっとだけ強くなったわね、マリナ」

どこか寂しそうに言った。

そんなカノンを無視して、マリナは何が大変なのか告げた。

「ジョフレさんとエリーズさんが誰かに襲われて……その、大怪我を負ってしまったんです……」