軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロバとともに去るバカ

見覚えのある赤い髪の男と青い髪の女。

見覚えがあるというか、少し前に別れたばかりだ。まだ半月も経っていない。

自称剣士の見習い剣士、ジョフレ。バカ。

自称魔物使いの鞭使い、エリーズ。バカ。

天然の会話がすでに夫婦漫才の域に達しているこのふたりが、どういうわけか魔王の小道と呼ばれる転移陣を使って現れた。

なんで、どうしてふたりがここにいるんだ?

そう思ったのはふたりも同じようだ。

「あれ、猫の村にジョーにそっくりな奴がいるぞ。どうしてだ?」

「あれ、猫の村にジョーにそっくりな人がいるね。どうしてだろうね?」

あぁ、そういえば、同じような台詞を微妙にニュアンスを変えて喋ってたケット・シーの門番がいたなぁ、と全く関係ないことを思い出した。

俺が黙っていると、ふたりはさらに話を続ける。

「猫の村にいるってことは、このジョーも猫なのか? どうしよ、エリーズ。俺、猫の言葉なんてわからないぞ!」

「え? このジョーって猫なんだ。でも猫髭ないよ? それと私も猫の言葉なんてわからないよ」

「猫髭がない? 本当だ、気が付かなかった。それは新種だ! やったな、エリーズ! 俺たち大発見をしたぞ! 歴史に名を残すぞ!」

「おめでとう、ジョフレ! やったね!」

「何を言ってるんだ、エリーズ。お前も一緒に名前を残すんだぞ?」

「ううん、私はいいの。だって、私の名前はジョフレの中にだけ残してほしいから」

「……エリーズ、それを言うなら俺だって、俺の名前はエリーズだけのものだ」

「……ジョフレ」

「……エリーズ」

「――(イラっ)スラッシュ!」

抱き合おうとしたふたりの間に、俺は思わずスラッシュによる衝撃波を打ち込んでいた。

「……っ! この感覚、まさか本物のジョーか! 何してるんだよ、こんなところで!」

「ここ、猫の村だよ? ジョーは猫だったの?」

「猫なのに髭が無いぞ! 新種か?」

「すごいね、大発見だね、ジョフレ!」

「ループネタはやめろ! 俺は猫じゃないし、ケット・シーでもない。てか、お前等がいるってことは――」

と俺は後ろの転移陣を見る。

すると、転移陣が光って現れたのは――大食いロバのケンタウロスと、フェルイトの三人のガキたちだった。

「あ、ジョーの兄貴たちじゃないっすか! お久しぶりっす」と手を振るフリオ。

「……ジョーさんたちがここにいるのか。戦いに出るとなると、王の座が……」と呟くスッチーノ。

「……カップリング再び……フフフ」と笑うミルキー。

一緒に、見知らぬケット・シーがいた。

そして、ジョフレとエリーズがケンタウロスの手綱を握った時だった。

急にケンタウロスが暴走、部屋を出て駆け抜けていった。

ジョフレとエリーズは見事にその暴走に巻き込まれ、ともに部屋を出て行った。

「待ってください! あ、兄貴たち、失礼するっす」

フリオたちも後を追う。

そして、それを見ていた、転移陣を使って現れたもう一匹のケット・シーが、ケンタウロスの暴走について少し考え、

「そういえば、食事の匂いがするニャ。きっとその匂いに釣られたんだニャ」

と結論を出した。うん、その結論に穴は全く見当たらない。

ところで、このケット・シーは誰だろうか?

と思ったら、すぐにステラからその名を聞くことができた。

「ミッケ、にゃにしに戻って来たニャ!」

ステラが、ジョフレと一緒に現れたケット・シーを睨み付けた。

「知り合いか?」

「弟ニャ」

「弟!? お前、ひとり娘って言ってなかったか?」

「娘は私ひとりニャ。でも、弟と兄がいるニャ」

「久しぶりに帰って来た弟に対して、随分にゃ言い方だニャ、姉ちゃんは。じゃあ、僕はジョフレたちを追いかけるニャ」

「困った弟だニャ……。では、イチノさんもう一カ所案内する場所があるからハルさんたちと合流するニャ」

「お、おう……もう一カ所って?」

「迷宮ニャ」

「迷宮? あれ? ダキャットにある迷宮は一カ所だけじゃなかったっけ?」

ケット・シーの隠れ里にも迷宮があるのか?

「それもいろいろあるのニャ……迷宮は大して強い敵はでにゃいし、初心者用の迷宮だから、準備もあまりいらにゃいニャ」

「……へぇ、じゃあ潜ってみるか」

久しぶりに経験値稼ぎでもさせてもらうか。

この一週間は、素振りとか木の実採取とか、採掘とかで経験値を稼がせてもらっていたが、効率の悪さはどうしても否めなかったからな。

ハルも少しだけ戦いの血がうずいている様子だった。

彼女も迷宮での戦いとか好きなほうだしな。

俺も迷宮に潜って、スキルとか覚えたいし。

ただ、迷宮をクリアしたところで、女神様から貰えるスキルが性活魔法……もとい生活魔法しか貰えない気がするんだが。

いや、さすがにそれは気のせいだよな?

「ひとつだけ言っておくニャ。今から行く迷宮ではクリアボーナスは貰えにゃいニャ」

「……え?」

それはどういうことだ?

※※※

迷宮は、隠れ里から歩いて三十分くらいの場所にあった。

ちなみに、今一緒にいるのは俺とハル、ステラの三人だけだ。

キャロは商売の交渉があるため、そしてマリナは隠れ里のケット・シーたちに不埒な行為(ねこじゃらし500回)を行い俺の世界の中で反省中のため来られなかった。

「たしかに、魔物の匂いがしますね。迷宮なのは本当のようです」

「俺の索敵スキルにはまだひっかかっていないが……ハルが言うのならそうなんだろうな。ステラ、ここの迷宮の魔物は弱いんだったよな?」

「弱いニャ。灰色のにゃにゃ星……にゃんと六星もよくここで修業をしてるそうだニャ」

なるほど……なら、今回も生活系職業のレベル上げに専念させてもらいますか。

六ケ所目の迷宮探索が、これよりはじまる。